獅子抱く天使

   3 天使の兄弟は守護天使? −6−

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部屋に残ったのは、蓑原、上村、菅生、佐々木、

和哉、尚道、勝だ。



皆の足音が消えると、和哉が言った。

「今日の事件の詳細は掴めておりますか?」

菅生は首を振って言った。



「馨の話で、河野組に上海マフィアが接触しているのが

 わかった。しかし、詳細までは・・・。」

「それでも、良く調べましたね。

 それで、僕らの持っている情報を差し上げるので

 お願い聞いて戴けますか?」尚道が口を開いた。


「それは・・・情報の中身にもよりますが・・・。」菅生が言うのを上村が制して言った。


「お願いとは・・・?」

「馨も含めて私達は翡翠という情報屋をやっております。

 確かに裏の世界に接してはいますが、ここにいる者以外は

 どっぷり浸かっているわけではありません。

 特に馨はとても優しい子です。

 だからこそ、馨には汚い世界を見せたくはない。」

上村達は息を飲んだ。



翡翠と言う情報屋は裏社会では有名である。

裏社会には、MIDNIGHT SUN 『真夜中の太陽』、

国家や組織の依頼で組織をつぶしたり、

麻薬密売を根絶やしにしたりする組織がある。


その組織の専属情報部隊の名前が翡翠で

その優秀さはとても有名なのである。

「とは言っても私達は翡翠であり太陽ではない。」

と和哉がそう続けた。




「わかった。馨のことは、私も黒くは染めたくは無い。

 約束しよう。」上村が言った。



「それでは、説明しましょう。

 菅生さんのおっしゃったとおり、今回の事件は

 河野組が企てていました。

 香港マフィアに龍翔会が喧嘩を売って

 混乱させようとしていたようです。」尚道がすかさず言った。


「証拠は・・・。」


「なに、証拠なんていくらでも後から作れるじゃないか。

 それで。上村さん。」

そう口を開いたの馨の弟の勝だ。


「上海マフィアの方は俺が潰す。

 河野組を頼んでいいか?」

「君は・・・何を・・・潰すって・・・。」

佐々木が驚いて言うと、蓑原が口を開いた。



「勝は、その力を持っている。」

「ええ。香港マフィアなら、馨を狙うはずがない。

 なぜなら、馨は香港マフィアに護られている存在だから。

 俺の中国名は、劉 勝。

 香港マフィア劉一家の跡継ぎだからだ。」

勝が静かに言った。



「劉一家・・・・。」菅生が思わず呟いた。

劉一家と言うのは、香港マフィアでも一番強い組織だと言われている。

全てが秘密主義でトップの顔すら明らかにされていないが

冷酷で他のどこも太刀打ちできないとされている。




「わかった。河野組は任せてくれ。」

上村がそう言うと、和哉が大きなトランクを2つ持って来た。

「これは、私の気持ちです。」

そう言いながら和哉はそのトランクを開けた。




そこには、ピストルやライフル、マシンガンが入っていた。

「今後は武器が必要な時はご贔屓に。」

和哉はそう言いながらにっこり微笑んだ。



「そして、俺はその後の情報操作を担当するね。

 シナリオは、上海マフィアが河野組と相打ちってことで。

 ああ、死体処理もまかせてねぇ。

 ついでに診断書も作っておくから。

 まあ、馨もメンバーだから情報が欲しいときはご贔屓に。」

軽い調子で尚道が言った。




「会長は馨さんのそばにいてやって下さい。

 河野組は俺と兵隊でやらせていただきます。

 俺も久しぶりに暴れたい気分です。

 とことん、やってよろしいですよね。」

菅生がにこやかに微笑んで言った。



その目は、肉食獣のような獰猛な目だ。

菅生の言う兵隊とは菅生が選抜した

南光会の選りすぐりの猛者達だ。



「そういうことで、よろしいですね。蓑原組長?」

勝の目も菅生のそれと似ている。

馨が護りたいと言っていたこの少年はすでに

闇の世界に当たり前のように身を投じているのだ。




「ああ。わかった。」蓑原も首を振った。




皆が戻ってくると、そこにいた者は

闇の匂いを何事もなかったように消した。

蓑原が寿司を皆にご馳走してくれて場はとても和やかだった。



「馨、今日は上村さんのとこに泊まりなさい。

 大変な1日だったからな。」

和哉がそう言うと馨はコクリと頷いた。

兄弟皆が馨とハグをする。



上村達が席を立つと、馨は、兄弟の方を振り返って言った。

「カズ兄、マサ兄、ナオ兄、そして、ショウ。

 大好きだよ。」

4人は、にっこり微笑んで言った。

「「「「カオ、大好きだよ。」」」」

馨はにっこり微笑んで小さく手を振って

上村と共に歩きはじめた。




きっとこの子は気づいているんだ。

上村はそう思いながら、馨の小さな肩をぎゅっと抱き寄せた。



 
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