獅子抱く天使

   3 天使の兄弟は守護天使? −4−

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「何だか・・すごくパワフルなお母様ですね。」

ぽつりと佐々木が言った。


「うん。母さんは、僕ら家族の誇りなんだ。

 まあ、海外にいて積極的に僕らの面倒を見れない父さんもいるんだけど、

 長期の休みなんかは僕らの方でそっちに行ってるから

 その時交流を深めているんだ。

 さすがに僕らがそれなりに大きくなったから今は、

 兄弟だけで住んでいるんだけどね。」


「えっ?そうなのか?」

「うん。でも父さん達も同じマンションに住んでいるから

 特にさみしいこともないんだけどね。

 それに、実際どの父さんも僕達を区別することなく

 育ててくれたからね。本当に皆に感謝しているんだ。

 だから、とりあえず兄弟に大樹さんとつきあっているって報告したんだよ。

 皆、良かったねって言ってくれたんだ。」

馨はにこにこ微笑みながら言った。



「まあ、父親達もそうなら、世間一般で反対されるというようなことはないのかも

 しれないなあ。」菅生が言うと、馨は頷きながら続けた。

「まあ、大樹さんが師匠の弟だという点もポイント高かったみたいだけど、

 ほら、僕ら兄弟は、師匠に日本武術習っていたから。」

「まあ。認めてもらえなかったら奪うだけだが・・・。」

上村がそう言うと慧は嬉しそうに微笑みながら「ありがとう。」と言った。





数日後、いつものように学校帰り護衛の林と金沢が迎えに来た。

その日、馨はその日発売の本を買いたかったので、

車を書店にまわしてもらった。

「金沢さん、もう少し本みたいけれどいい?」

馨は一緒についてきた金沢を見あげながら言った。

「ええ。それじゃあ、その本持ちますね。」

馨はお礼を言って金沢に本を渡すと自分が見たい本を物色し始めた。


パラパラ本を捲っていると背後の2人組の男が中国語で話をするのが聞こえた。

馨はちらっとそっちを見たが気にした感じもなくまた本に視線を移した。

数冊決めると金沢とレジに行き精算をする。


馨が外にでるといきなり猛スピードの車が馨の乗っていた車に突っ込んできた。

同時に金沢ががばっと馨を抱きしめ、林が2人の前に立ちふさがる。

すると、本屋から先ほどの2人組みの男が走り出てきて

銃口を向けながら言った。

「これは警告だ。お前のボスを潰すために香港から来た。」

そう言うと、車と林の方に数発銃を撃ち車に乗りこんで走り去った。



人が倒れる音がして、「うっ・・・。」と金沢が呻いた。

「金沢さん?」慧が金沢を見あげると、

「馨さん怪我はないですか?」と金沢は言った。

見ると、腕を弾がかすったみたいで血が出ている。


馨は、自分のネクタイを抜くと金沢の腕を縛り

「救急車を。」と叫んだ。

馨は金沢の腕から抜け出ると倒れている林の傍に跪き、携帯を取り出して

どこかに電話をする。

「絶対助ける。」馨はそう言うと、胸に耳を当て心臓が動いているのを確認すると

ワイシャツを脱がせ、撃たれた左腹のところに当て布をしてワイシャツをきつく

縛りつけた。



少しして2台のバイクと車が馨のそばに止まった。

車のドアが開いて、「馨。」と菅生が飛び出して来て、バイクからは

外人のような顔をした双子が降りてきた。



「マサ兄。ナオ兄。林さんと運転手さん助けて。」

馨が必死な形相で言うと双子はにっこりと微笑んで言った。

「大丈夫だ。俺達が来たんだ。心臓が動いているなら絶対助ける。

 だから、馨はその人と安全な場所に行くんだ。」

「夜にでも他の兄弟と迎えに行くからさ。馨を頼みますね。菅生さん。」

そう言いながら馨を菅生の方に押し出し、林の傍に行って様子を見だした。

もう1人の方は、車からぐったりした運転手をひっぱり出している。

菅生は驚いたように双子を見たが、自分のやるべきことをしようと気持ちを切り替えた。

南光会の幹部や組員も数人、事件を聞きつけて、

現場に来たのでここの処理はその者達がするだろう。

菅生は馨を抱きかかえるように車に乗り込むと、車は静かに動き出した。



 
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