獅子抱く天使

   2 天使の傍らに見つけた処 −2−

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「うわぁ・・おいしそう。まだまだホカホカだあ。」

馨は上村のマンションに着くと

お茶をいそいそと入れ、

買ってきたお弁当を開けた。


「僕のハンバーグあげるから、大樹さんのから揚げちょうだい。」

馨は無邪気にそう言って上村の弁当箱にハンバーグを置いた。

「馨・・食べたいんだったら本当に好きなの食べると良い。」

上村がそう言うと馨は首を振って言った。


「違うんだよ。大樹さんと美味しいねえってわけあって食べるのが良いんだよ。

 1人で食べるご飯は寂しいもん。」

「いつも、馨は1人なのか?」

「ううん。僕は家族一緒だよ。父さん方にはあまり会えないんだけどね。

 でも、誰よりも大樹さんと食べるご飯が美味しい。

 こういうお弁当でもね。」


馨は父が大きな会社を経営するお坊ちゃまである。

一方、上村も毎日食べるものは高級なものばかりである。


「ああ。食事が旨いと思えるのは馨のおかげだな。」

上村はそう言うとソファーに座り馨を膝の上に呼んだ。

「大樹さん・・・。」

馨は甘えて抱きついてくる。


上村は黙って馨を抱き寄せた。

この温もりを離したくない。心の底から上村はそう願った。





「佐々木幹部。菅生幹部。こちら、会長からです。」

そう言われて手渡されたのは街にあるお弁当屋さんの弁当箱だ。


「どうしましたか?これは?」

佐々木は驚いたように聞くと会長についていた組員が

今日の会長と馨の様子を説明して退室した。


「まだ、温かいですよ。食べましょう。」

菅生がそう言うと佐々木は何とも言えない顔をして言った。

「あなたが敬語使っているのは違和感ありますね。」

「そうかあ?佐々木ちゃんは昔から敬語だったものな。」

「佐々木ちゃんはやめてください。」

佐々木はそう言いながらお茶を煎れて菅生に差し出した。


2人は仲良くむかい合って割り箸を割って弁当の蓋を開けた。

「しかし・・・馨はすごい奴だな。」

「そうですね。会長がマンションに連れていくというのはすごいですね。」

「佐々木ちゃん、違うよ。俺が言いたいのは・・。」

菅生はそう言いながら紅鮭に醤油をかけた。


「どういう事ですか?」

「これだよ。この弁当。」

「まさか、馨さんは会長の為にこのお弁当をねだったということですか?」

「佐々木ちゃん、今頃気づいたなんて遅すぎ。

 たぶん、馨は会長と2人きりになりたかったんじゃないかな?

 ほら、これだと人帰しやすいじゃないか?

 だから馨は会長にとって大切なんだろうな。」


「守らなくてはいけませんね。」

佐々木の言葉に菅生も頷いて言った。


「ああ。しかし馨は奥が深いからなあ。

 本当にあの報告書だけかよ。」

「ええ。そうですが・・・。何で・・・・?」

「いや・・あいつは普通の高校生に思えないからな。

 俺の勘があいつは只者でないと言っている。」

佐々木はそういい切る菅生をあきれたように見つめた。





・・・もしもし・・・


・・・ああ、馨だね・・・


・・・晃父さん、今夜上村さんのところに泊まって良い?・・・


・・・どうして、と聞いていいかな?・・・


・・・今日ね。上村さんのご両親の命日だったんだって

   僕、側にいてあげたい。何だか雰囲気がそっくりなんだ・・・


・・・雰囲気?・・・


・・・ああ、母さんに・・・悲しいときの母さんに

   僕は何もできないかもしれないけれど・・・いてあげたいんだ・・・


・・・馨、わかった。こっちは心配しなくていい

   でも、兄さん達にはお付き合いしていること言った方が良い。

   お前が辛くなる・・・


・・・わかった。近いうちに言う・・・


・・・それと・・馨・・・僕からアドバイス。

   いっぱい抱きしめていっぱいキスして。

   代わりにいっぱい君が泣いてあげるんだ。・・・



上村はシャワーを浴びていた。

シャワーを浴びてから服を着替え馨を送って行こうと思っていた。


突然バスルームの扉が開き裸の馨が立っていた。

「馨・・・?」上村が驚いたように言うと馨は上村に抱きついてきた。

「晃父さんに許可取った。だから今日は一緒にいる。」

上村は、熱いシャワーの下で馨に熱いキスをする。


「あ・・・ぁん・・ひろ・・・きさん。」

「可愛いな・・・。」

上村は縋り付いてくる馨を抱きあげるように腰を支え

何度もキスをした。



 
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