ルーレンの夜明け

       第83話 精霊の寵児

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マーロウ教授は呆然としている新入生達に微笑みかけて言った。

「今の私が本当の私だよ。いつもは、ちょっと変装しているんだ。」

ちょっとどころの変装ではないと新入生は心の中で

呟いたが、それを口にだすような事はしなかった。


「先ほど言ったとおり

 日の出寮の生徒が使う魔術は

 精霊の力を借りる魔術だ。

 つまり自分に力を貸してくれる精霊とどれだけ

 仲が良いかと言う事が魔術の強さに比例する。

 だから、まず自分の精霊と面識を持ち仲良くすることが大切なんだ。

 君達の目の前にいる精霊は私の守護精霊達だ。

 守護精霊には、元々の守護精霊と後で契約する精霊がいる。

 まあ、君達は魔術を習いたてだから契約の精霊がでてくることはないだろう。

 それでは、新入生以外は精霊達の呼び寄せの呪文を唱えなさい。」



マーロウ教授がそう言うと、ガイや他の生徒が立ちあがって

ブツブツと小声で呪文を唱えはじめた。

すると色とりどりの光が溢れ精霊達が姿を現した。


しかし、マーロウ教授の精霊のように大人の精霊ではなく、

子供の姿や鳥の姿の精霊が多い。


「見たとおり、精霊には色々な種類がある。

 形状は人型が強いが、鳥の形の精霊は探査能力が優れているんだ。

 子供や動物の形の精霊たちは心を通じさせ、お互いに成長していくと

 私の精霊と同じように人型で大きくなることができるんだ。」


マーロウ教授はそう説明をして

理緒達、新入生に呪文の唱え方を教えた。

「私が教える魔術には固定した呪文はない。

 それぞれが、自分の内なる精霊と言葉をかわすのだ。

 ゆったりと目を閉じて内なる守護精霊に語りかけるのだ。

 君と直接話たい。私の目の前に出てきてくれないか?

 その呪文を教えてくれと。

 そうすると頭に呪文の言葉が浮かぶはずだ。

 その呪文を唱えるのだ。」


理緒が目を閉じると笑いを含んだ緋聖の声がした。

・・・リオ様、私を呼ぶだけなら私の名を呟いてください。

 しかし、次の呪文を唱えるとおもしろいことがおきるでしょう。・・・


 
その声の後に頭に呪文が浮かんだ。

「ラ・・リシェネ・・・ルアーレ・・・」

理緒がそう唱えると理緒の眼の前に緋聖と人型の精霊が跪き

鳥型や獣型の精霊達と色とりどりの珠が理緒の周りを

囲んだ。



緋聖の姿を見た他の人型の精霊達は同じように理緒の方を

向いて跪いた。

生徒達とマーロウ教授も驚いた顔で理緒を見つめた。

「リオ様、我々はあなたの友。

 我々はあなたのそばにいつも寄りそいます。」

緋聖はそう言いながら理緒の手に口づけをすると、

他の精霊達は美しい歌を歌い、踊り始めた。




「君は精霊の寵児なんだね。」マーロウ教授は感慨深そうな顔をして言った。

「精霊の寵児?」理緒は聞いたことのない言葉を思わず繰り返した。

他の生徒も不思議そうな顔をする。



教授は大きく頷いて

「精霊の寵児は精霊に無条件に愛される存在のことを言う。

 以前の化身様がおられた時代には精霊の寵児がいたそうだ。

 今、また化身様がいらっしゃったので寵児も現れたのだろう。」

その時、精霊達が・・・教室に悪意を持った者が来る。・・・

と伝えたので、マーロウ教授は慌てて術を解き、

一瞬で元の冴えない感じに戻った。



生徒が慌てて自分の席に座ったその時

扉がバーンと開いて、3人の男が入ってきた。

「夕日寮の王子・・・。」小さな声で誰かが呟いた。

真ん中に尊大そうに立っている男が口を開いた。



「相変わらず日の出寮は誰が誰だかわからないな。

 今朝、我が寮生を保健室に運んだ者を探しているのだが・・・。」

皆が咄嗟に理緒の顔を見たので、男は理緒の方を

見てニタリと笑い、近づいて来た。



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