ルーレンの夜明け

       第82話 マーロウ教授

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「ガイ、火傷しているのは俺じゃないよ。」

理緒は、ポケットから救急セットを取りだし、

ガイの火傷に練った薬草をつけ、緋聖にガイの服を

乾かすように頼んだ。


その後、倒れている5人の方へ行き、火傷や他の怪我の

治療をはじめた。特に鳥から落ちたであろう赤い髪の毛の男と

緑の毛の男は苦しそうにしている。


「これは重傷だな。ガイ、運ぶの手伝って。」

理緒はそう言うと、軽々と赤い毛の男を背負った。


ガイは、赤い毛の男より軽そうな緑の毛の男を背負ったが

慣れない重さにフラフラする。


それでも、自分よりも体格が華奢な理緒を見て

かろうじて足を踏ん張った。


その後、2人は攻撃に会うこともなく

魔術学校の石造りの門の前に出た。



石造りの門の前には濃紺の髪をした先生らしき姿と

生徒が数名立っていた。

「シュナイナー教授か・・・。」ガイはその姿を見ると

厭そうに顔をしかめた。


門の近くに行くと、シュナイナー教授は

「あなた方はずいぶん、遅いですね。

 悠長なことで・・・。」と嘲笑を浮かべた。

 
周りの生徒もニタニタ厭な笑いを浮かべる。

「ガイ、医務室はどこ?」理緒がのんびりした口調で言うと

シュナイナー教授は米神に青筋をたてて怒鳴った。



「なんなんだ。君は!遅れて来たくせに

 謝罪もしないのか?」

すると理緒はあきれたように言った。

「人を背負って来た者に対して言う言葉が遅刻ですか?

 この者は怪我をして熱もあるから放置できないから背負ってきたのに。
 
 まずは、状況聞くということくらいできないのですか?」
 


「どうせ、日の出寮の生徒だろう?遅れた上にその口実を

 自分の寮の生徒にするとは・・・。」
 
相変わらず嫌味な口調で教授は続けた。後ろの生徒達も

罵りの言葉を吐く。



「その先入観はどうかと思いますね。

 この方達は、正真正銘夕日寮の生徒ですよ。
 
 なにせ、攻撃を受けた相手ですからね。」
 
「何!!」

「とにかく、こうしている間も熱が体力を奪っています。

 応急処置はしましたが、医務室に運んで治療しなくては
 
 いけません。また、その事故の場所には後、3人の方が
 
 倒れております。軽傷ですが気絶しておりますので
 
 救助に向かって戴けないでしょうか?」

「ついて来なさい。」シュナイナー教授は生徒に指示を飛ばすと

医務室に案内した。



医務室に行くと「また日の出寮の生徒ですか?そこの長椅子にでも寝かせて」

と職員が言うと「夕日寮の生徒だ。」噛みつくようにシュタイナー教授が言った。


「夕日寮の生徒様ですか?向こうの寝台にどうぞ。」職員は驚いた声で言い、

理緒とガイが寝台に載せるといそいそと治療をはじめた。



シュタイナー教授は医務室を出ると

「今日の遅刻は不問とする。」そう言い捨て踵を返した。

「教室へ行こう。」

疲れたようにガイがそう言った。




教室に行くと「シュナイナー教授から聞いている席に座りなさい。

無事で良かった」

と気の弱そうな教授は弱々しい笑顔で言った。



その教室には理緒の他にヘルメットにマスク姿の生徒が数名いた。

夕日寮の生徒はこの教室にはいないようだ。

「あれ・・・?」

「魔術の基本編は、日の出寮と夕日寮では違うんです。

 日の出寮の生徒の魔術は妖精の力を借りる魔術、
 
 夕日寮の生徒の魔術は妖精を従える魔術です。
 
 そして、私は唯一の日の出寮出身の魔術教授のマーロウです。」
 
そう言ってマーロウ教授は2人に席に座るように言った。



マーロウ教授は2人が席につくと両手を広げ教室中に結界を張り巡らせた。

それと同時に教室は緑の草原に変わり

マーロウ教授の横には美しい青い髪の女の精霊と

筋骨たくましい金髪の大きな男の精霊が現れた。

マーロウ教授は、先ほどの弱々しさが嘘のように

自信あふれた姿で前に出てきて言った。

猫背気味の背中をシャキッと伸ばし、

寝ぐせだらけだった薄い茶色の髪もなぜか整っている。

唯一不自然な瓶底眼鏡を取ると、そこには

美しい美貌が現れた。


「ようこそ。私の魔術教室へ。

 君達を歓迎する。」

理緒達新入生はその変わり身のすごさに只呆然とするだけだった。




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