ルーレンの夜明け

       第8話 うそだろ?

本文へジャンプ



ゼストは、ゆっくりと首を振って理緒に微笑んでくれた。


『リオを化け物だと言う者はこの世界にはいない。

 それは、自分を否定することになるからな。』

『ねえ。ゼスト。私は誰?』



『リオは世界樹なんだ。』

『世界樹ってあの樹?』

『ああ。あの樹はリオだ。そして世界樹はこの世界を支える全て。』

『世界?この島じゃなくて?』

『この島じゃなくてルーレンというこの世界を支えている。

 リオはこの世界に無くてはならない存在なのだよ。』



『私、あの樹?』

『リオ、あの樹のそばに行くとほっとしないか?』

『ああ、する。』

『あの樹はリオなんだ。

 だから、カナウおばあさんもあの樹に取り込まれ

 新しい魂になるのだ。』

『新しい魂。』


『ああ、我々の魂は世界樹の実だと言われている。

 そして、ルーレンの人が願うのは直接魂が世界樹に取り込まれ

 浄化され新しい魂に生まれ変わることなのだ。

 世界樹に直接取り込まれた魂は安らかに浄化されると言われている。』


『世界樹に取り込まれない魂は?』

『彷徨い、大地に溶け込む。

 それには何十年とかかり彷徨った魂の一部はは空を闇で覆う。』



『ゼスト、リオ・リオ・エルバランヌ・オリゾン。の意味は?』

『もともとリオと言うのは永遠にさようなら私は生まれ変わるという意味なのじゃ。

 エルバランヌは、世界樹様の御許にてと言う意味だ。

 これだけだと世界樹の御許にて私は生まれ変わるという意味になるが

 オリゾンは違う。オリゾンと言うのは私の全てを捧げるという意味。

 そうなると私の全てを世界樹に捧げるという意味で

 二度と生まれ変わることはないと言われている。

 しかし世界樹自身にその名は刻まれ永遠の魂の安寧は約束される

 神官には最高の死に方だと聞いたことがある。』


『世界樹。名。』

理緒ははっとしたように立ちあがると少し服をめくって

腰をあらわにした。


『おお、それじゃ。エルダリ・シアン ファシモ・アルダリ

 リアン・ソリュー アルニア・ブラントス ユリア・ソニン。

 この5人はリオの中で生きているということじゃ。』



『エルダリ・シアン ファシモ・アルダリ リアン・ソリュー

 アルニア・ブラントス ユリア・ソニン』

理緒がそう呟くと理緒の胸が急に金色に光り

その光りが5人の人型に見えた。



皆白くて長い服を着て理緒に向って微笑んでいる。

その中には父の手紙にあった水色の髪の男もいた。

男達の1人が

『我らの残された力をあなたに。』

と言いながら消えていった。



『待って!』

理緒はそう言いながら手を伸ばしたが空を掴むだけだった。



『理緒?大丈夫か?』

ゼストが驚いたように理緒の肩に手をやった。

どうやらゼストには何も見えなかったようだ。

『ゼスト。何だか体があたたかくなったんだ。

 でも、大丈夫。』

『理緒・・言葉・・。』

ゼストは、驚いたように言った。



『ああ、何だか話せるようになったみたいだ。

 ゼスト、もし俺がこの世界の支えなら、

 美しい世界がいいな。

 昼は大きな太陽があって、夜には月と星が

 旅人に道を教える。


 どこまでも青い空にそして恵みの宝庫である海があって

 緑の山にはたくさんの動物が生息するんだ。

 そして、森には世界樹のような木がたくさんあって

 綺麗な水が湧いていてそこから川が流れてたくさんの恵みを

 大地に運ぶんだ。』


『それは素晴らしい世界だな。』

ゼストはそう言って微笑んだ。





次の朝、アリが驚いた様子で、理緒を起こしに来た。

『リオ、太陽が・・太陽が・・・。』



理緒は部屋の窓から外を見て思わず

『うそだろ?』と呟いた。

一夜にして島はなぜか広くなり、木が茂り、真っ青な空には

赤々と大きな太陽が昇っていた。






 BACK  NEXT 

 Copyright(c) 2007-2010 Jua Kagami all rights reserved.