ルーレンの夜明け

       第79話 理緒の寝室

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「これ?寝室?」

理緒は緋聖に案内されて隣の部屋に入って驚いたように言った。

その寝室は真中にどーんと大きな寝台が置かれている。


驚いたのはその大きさで縦も大きいが横もとても大きい。

優に何人もが眠れると思った途端、理緒はその寝台の目的が

わかり真っ赤になった。


「ここは、世界樹の繭のようなものです。」

「へっ?繭って・・あの空間のことを知ってるの?」

「ええ。あの空間は精霊が作っているから知っております。

 ああ、中を見るというわけではありませんので。」

「そう・・・。」

淡々と緋聖は言うのだが理緒は気恥ずかしい。


「あなたの力が強くなるということは精霊達の力も強くなること。

 だから、精霊達の願いはあなたと騎士がそばにあることなのです。」
 
「ねえ。緋聖。なんで騎士がそばにあることが力が強くなることに繋がるの?」


「それは・・・。」

「確かにデュアスと一緒にいると不思議な気分になるんだ。」

「不思議と言うと?」

「デュアスは自分の一部みたいな感覚がする。

 もちろん、そういう行為をするからそう感じるのかもしれないけれど
 
 でも、何だか違うんだ。本当にデュアスが俺の一部のような気がする。
 
 だから、何だか今は1人でいる方が不思議な気分なんだ。」

「そう感じることは正しいことだと思います。

 そして、その答えは全ての騎士が揃った時にわかるでしょう。」

 
「この部屋には騎士が揃ったことがあったのだろうか・・?」

理緒は小さく呟くと大きな寝台にそっと横になった。

部屋は窓が無い代わりに天井に夜空が見える。

「美しいな。」理緒はそう言って目を閉じた。



不思議な事に何だかとても眠くなり、理緒はスースー寝息をたてた。

「ゆっくりおやすみください。」緋聖はそう言いながら優しく理緒の頭を撫でた。




夕方、部屋に戻った理緒はフランに

次の日の試験に出るであろう、本を数冊貸してもらい、

勉強に打ち込んだ。


フランが夕食のときや祈りの時間、そして寝るときも声を

掛けたが、理緒はそれにも気づかずに借りた本を

メモを取りながら読んでいた。


そのおかげで、次の日の試験ではそこそこの成績を取ることができた。



そして、神学校の初等科の授業と昼に調理学校の試食とそのレポートに

明け暮れているうちに、最初の2週間があっというまに過ぎた。

2週間目の初めには当初予定されていた通り、試験があり

それに合格した理緒は、次の日から各種学校の授業に出てよいと

ギルスに告げられた。



理緒は、まずは必要そうな魔術を習うことにした。

それをフランに告げるとフランは心配そうに口を開いた。

「魔術学校は、夕日寮の生徒が多いと聞いております。

 十分にお気をつけくださいね。」

理緒自身も「わかった。」と答えたが、その意味の本質が良くわかっていなかった。


ローレンシャの新入生は、午前中が神学校の授業、午後が各種学校の授業を受けるのが

一般的である。

フランが心配したように、神学校のクラスメイトで魔術学校に

行く生徒は2人しかいないと各種学校の初めての授業がある朝、

ギルスが言った。


魔術学校は、神学校の屋上のまだ上にあるそうでそこに行くまで

魔術学校の上級生が神学校の教室まで迎えに来てくれるらしい。

神学校の授業が終わって、教室に残った生徒は、背の高いそばかすだらけの男と

金髪を後ろに括った綺麗系の女の人の2人だった。

「これから、よろしく。」理緒は2人ににっこりと微笑みながら話しかけた。

その時、ガタっと戸が開きヘルメット姿にマスクをした男が2人教室に入ってきた。
 


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