ルーレンの夜明け

       第73話 フランの母

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「何ですか〜〜〜?リオ。

 そこに座りなさい。いやその前にちゃんと服を着なさい。」
 
次の日の朝はフランの悲鳴のような説教から始まった。


「だいたい昨日まで寝台に伏せていた病人のくせに

 朝から鍛えてどうするんですか?

 ほら、髪が汗で濡れていますよ。
 
 乾いた布で拭きなさい。」
 
フランは不器用な感じで理緒の頭を拭きはじめながら

説教を続けた。


その後、フランの目をかいくぐって祈りの時間に

化身の部屋に行って5つ目の鐘を鳴らして戻り

また説教をくらった理緒だった。



一緒に朝食を取った後、理緒はフランに連れられて

街へと出かけることになった。

寮の門、神殿の門、学校の門を抜けると

そこは城下町のような街でレンガ造りの商店が

軒を連ねている。


レンガ敷きの道は細いのでたくさんの商人が

客引きをしている。


その中を慣れた調子のフランはキョロキョロ

もの珍しそうに周りをみる理緒の手を引いた。

「リオン、あんまりよそ見するんじゃないですよ。」

「う・・・ん?」

フランは本屋・雑貨屋などを周り一緒に理緒の

必要なものを見繕ってくれた。


さすがに幼少からこの街で育ったというだけあって

訪ねる店は質素ながらも良質なものを扱っている

店ばかりだ。


ちょうど買い物が終わり、寮に戻ろうとしていた時に

女の人の呼びとめる声が聞こえた。

「フラン?」

フランは足を止めて女の人に向かって

礼をすると、理緒の手をつかんでそのまま寮の方へ

行こうとした。

「フラン、待って!」

女の人はフランの肩を掴んで呼び止めた。

「何ですか?」

「フラン、昔の家の場所に食堂を始めたの。

 だからお休みの時来て。」
 

フランは冷たい口調で言った。

「私はもうあの家を出ました。

 私の身は化身様のもの。
 
 それでは失礼します。」

フランはそう言うと理緒の手をひいて

寮に戻った。



部屋に戻るとフランは

「急いで帰ることになってすみません。」

と言って机に向かうと本を取り出して

読み始めた。


理緒は荷物を片づけ、フランに声をかけてから

部屋を出て、さっき通った道を戻り

街に出た。


街を歩きながら食堂を見つけると

そっと中を伺う。

表通りだけでなく、裏の路地にも入り

日も高くなった頃、理緒はようやく1件の店に入った。

振り向いて理緒を迎えたのはさっきフランを呼び止めた

女の人だった。


「あなたは、フランと一緒にいた?」

女の人は驚いたように理緒を見つめながら言った。

「ええ。フランと同室のリオンと申します。」

理緒はそう言って自己紹介すると、女の人は

理緒に椅子をすすめて、眼の前に座って言った。

「私はフランの母です。あの子は、どんな生活を送っておりますか?」

「元気ですよ。いつも私の手助けをしてくれます。」

「本当に、なんで神官になったのかしら?

 自分を犠牲にして・・・。」
 
その言葉に理緒は眼の前が真っ暗になる思いがした。




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