ルーレンの夜明け

       第69話 大礼拝の準備

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「何で、こうなる・・・・?」

理緒は鏡を見ながらそう呟いた。

説明会が終わり、廊下に出た理緒は

妙ににこやかなギルスに連れられ最高神官の部屋に

行くと着替えるように言われ、隣の部屋に行くと

数人の神官がおりきらきらした白銀の衣装に無理やり

着替えさせられた。



それが終わると、女性の神官が入って来て

「髪の色を戻して下さい。」と言われ戻すと、

魔術で黒い髪の毛を長くされ、2人がかりで

髪をいじられる。



それが終わると白銀の飾りをたくさん

髪につけられ、頭が重くなった。

それが終わると、顔に何かを塗られ、

唇に紅がさされる。



女性の神官達は、「お綺麗ですわ。」と褒めながら、

今度は首飾りやブレスレットの装飾品をつけていく。

最後に普通じゃありえない真っ白な靴を履くと

はじめて鏡の前に連れて行かれたのだ。



鏡には妙にキラキラ光っている自分の姿があった。

理緒は、その姿を見ただけでどっと疲れた気分になり

思わず鏡の近くの壁に手をついた。




「理緒、綺麗だ。」

扉を開けて入って来たデュアスが言う。

「デュアス、その言葉は女の人に言う言葉だよ。」

理緒が頬を膨らませて言うと

「本当の事を言ったまでだ。」とデュアスは真顔で答えると、

理緒はもう何も言うまいと肩をすくめた。


着替えると言うデュアスを残して最高神官の部屋に戻ると

最高神官と数人の神官が待っていた。

「おお、化身様、とてもよくお似合いです。」

最高神官は立ちあがりながら言った。

「似合うと言われてもあまり嬉しくはないですが・・・。」

理緒は顔を曇らせて言った。

「それは以前の化身様の衣装なのですぞ。」


「これが・・・?」

理緒は自分の衣装を触りながら言った。

「そうです。どうやらあなたと似ていたようですな。

 この衣装は、あなたが力を出すと反射するようにできているのです。」

「反射?」

「ええ。反射することによって参拝する者はあなたの姿を

 見ることができません。声も届きません。」

「声も・・・?」

「ええ。それだけあなたの力が強いのです。」

「騎士が1人なのに?」

「それでもです。」

その時、扉が開き騎士の服を着たデュアスが入ってきた。



その服も薄いラベンダー色でキラキラ光っている。

同様によく見ると神官達の服もキラキラ光っている。

「何だか、皆のキラキラに助長されているような気がする。」

理緒がポツリと言うとそこにいた神官達がどっと笑った。


皆の笑いがおさまると、ギルスが立ち上がり、

理緒の後ろに控える。

よく見るとギルスの神官服の襟は金糸で刺繍がされ

他の神官と違うデザインだ。


不思議そうに見る理緒にギルスは

「ああ、俺は神殿に仕えている神官ではなく

 世界樹の化身である理緒に仕えている神官だからな。」
 
と言って微笑んだ。


左後ろにデュアス。右後ろにギルスが立つとそれだけで何だか

元気が沸いてくるような気がする。

すると、理緒の前で最高神官を初めとする神官達が

礼を取りながら言った。

「改めまして。世界樹の化身様。ローレンシャの地に

 ご光臨ありがとうございます。
 
 どうか、ここを憩いの場所になさってください。
 
 この国の偉大なる精霊達と神官を代表し
 
 ご挨拶申しあげます。」

理緒はそれに礼をすることで返した。



その後、そこにいる神官の紹介があり、

昼食は小部屋でデュアスとギルスと共に取ることになった。

小部屋には既に理緒の好きな肉中心のメニューが

並んでいた。


デュアスとギルスは食事をはじめて、しばらくして

不思議そうに理緒を見た。

いつもは簡単に減る理緒の前の皿の料理がほとんど減っていない。

さすがの理緒でも緊張しているのかと心配してギルスが聞いた。

「リオ、食欲無いのか?」


理緒はフォークを持ったままフルフル震えながら言った。

「だって、頭重くて下向けないんだ。」

小部屋にギルスとデュアスの笑い声が響き、

デュアスが理緒のそばに来てナイフで器用に肉を切り分けると

フォークを理緒の口元に持って来た。


理緒は口を開けて肉を頬張ってポツリと呟いた。

「これはこれで何だか恥ずかしい気がする。」






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