ルーレンの夜明け

       第68話 説明会

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その後、ギルスを先頭に数人の神官が入って来て

明日からの授業の説明を始めた。

今回は新入生が少ないのでクラスわけはせずに

今ここに集まっている人で一クラスになるそうだ。

そして、今日は午後からこの学園の者全てが参加する

大礼拝があり、その後各寮で歓迎会があるそうだ。



「大礼拝って何をするのですか?」

理緒の隣に座っている女の子が小さく手をあげて聞いた。


「これから礼拝の手順を教える。しっかり覚えるように。」

神官の1人がそう言って、礼拝の仕方の説明を始めた。

その後、礼拝時の礼をグループ毎に分かれてやることになった。


理緒のグループは女の子(と言っても高校生くらいだが・・・)

と男合わせて4人のグループだ。


高校生3人の中に小学生1人というような構図が否めないが・・・。

指導の神官は優しそうな女の神官だった。

「皆さん、それではまず自己紹介しましょう。

 私はエリノアと申します。

 短い時間ですがよろしくお願いしますね。

 そうね。じゃあ、端の君から自己紹介してくれるかな?

 名前と今まで礼拝にでたことがあるかどうかでいいわ。」

その神官はおっとりした口調で言った。


端にいた背のひょろっとした男が口を開いた。

「僕は、アリノスです。

 礼拝は、家族で神殿に行って受けたことがあります。」


その隣の快活そうな茶色の目の女が口を開いた。

「私はセリアです。

 礼拝は同じく神殿で受けたことがあります。」

理緒の隣の碧の目の女が口を開いた。


「私はアニスです。

 神殿の礼拝はありませんが、神官がいらっしゃっての礼拝は経験があります。」


その後、皆の視線が理緒に集まったので

「私はリオンです。礼拝の経験はありません。」

と言った。


実際礼拝の作法なんて全然知らないからだ。

礼拝を受けたことが無いとは珍しいらしく、

他の3人は驚いたように理緒を見た。



するとエリノアは明るい口調で話し始めた。

「礼拝を受けたことないという生徒はこの寮では

 確かに少ないかもしれないけれどいないわけではないわ。

 それでは、座礼の仕方を勉強しましょう。」

座礼とは座ってする礼だ。


ただ、頭を下げる礼だけではなくて

右手を左肩に当ててする礼などがあり

姿勢も決められている。

特に礼の角度は他の3人はかなり苦労していた。


一方理緒は、軍隊で礼の仕方を鍛えられていたので

案外すんなりとエリノアから解放された。


一通り終わるとエリノアは最後に言った。

「これで、基本の座礼は全てです。

 しかし、あくまでもこれは形式です。

 なぜ、自分がここで礼をしなければならないのか。

 それを知ると貴方達はもっと化身様に近づくことができるでしょう。」



理緒達が椅子に座ると他のグループがまだなのか

少し待つことになった。

前にはギルスが立って全体を真剣な眼差しで見ている。

「ギルス大神官ってかっこいいわよね。」

理緒の隣に座っているアニスが言った。

「そうなの?」

普段のひげもじゃなギルスを知っている分

そう言われてもどう返してよいか微妙だ。


「だって、あの若さで大神官ですもの。」

「大神官ってそんなにすごいの?」

「大神官ってルーレンの中でも

 百人もいないのよ。

 大神官は神学校を優秀に卒業するとともに

 専門学校の中級を2個以上修了しなければならないし

 卒業後も神官としての功徳を積まないとなれない

 らしいわ。」


「へーーっ。功徳ねぇ・・・。」

理緒はそう言いながらもう一度ギルスの方を見ると

ギルスは理緒と目を合わせてニカッと笑った。



皆が席につくと最後にギルスが前に出て口を開いた。

「おめでとう。今日の礼拝は歴史に残る大礼拝になる。

 今朝の鐘が教えてくれたようにローレンシャに滞在している

 化身様が参加する礼拝だからだ。」


・・・言っちゃっていいのかよ!・・・

理緒の頭の中は真っ白になった。




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