ルーレンの夜明け

       第67話 5つ目の鐘

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「よろしいですか?祈りの時間は神聖な時間です。

 そんな時間にフラフラ外に行くなんていけませんよ。」

「フラン、お母さんみたい。」

「私はお母さんではないです。

 それに今日は不思議なことが起こったのです。

 これこそ、皆の祈りの結晶がもたらされた奇跡と言えましょう。」

「どうしたの?」

理緒が聞くとフランは顔を紅潮させて言った。



「ローレンシャの大鐘は全部で5つあります。

 北の鐘、南の鐘、東の鐘、西の鐘

 そして、中央にある世界樹の鐘。

 東西南北の鐘は精霊の鐘と言われ

 神官の祈りが高まると鐘付き精霊が鳴らすと言われています。

 そして、世界樹の鐘は祝福の鐘と言われ

 それは、世界樹の化身様が我々を祝福して鳴らすそうです。

 そして今朝、不思議な事に5つの鐘が鳴りました。

 これは奇跡です。

 ローレンシャに化身様がいらっしゃるということなのです。」

「それは・・・本当に?」



「ええ。何しろ5つ目の鐘は化身様がいなくては

 鳴らせないのですから。

 私もローレンシャで生まれたのですが、初めて聞きました。」

興奮して頬を染めて化身の絵を見ているフランを見て、

理緒は、思わず天を仰ぎながら、「やっちまった。」と思った。

後でギルスに相談しに行こうと思いながら理緒はフランに

案内されて、寮の食堂に行った。




食堂は明るくて解放感があった。

フランはカウンターに行き、

「朝食のメニューは全員同じなのでここで量を言って下さい。

 私は、小をお願いします。」


そう言うと、中にいた神官が

「坊主はどうする?量は極小・小・中・大・特大があるのだが・・・。」

聞いた。

理緒はにっこり笑いながら「特大でお願いします。」と言うと



神官の男が「坊主。特大は武術学校の生徒さんくらいしか食べないぞ。」

と言うと、理緒は「大丈夫です。」と明るく答えると

山盛りのトレーが出てきた。



「本当に食べれるのですか?」フランが心配そうに聞くと

理緒は嬉しそうにトレーを持って席についた。


別のテーブルではデュアスがやはり特大の

朝食を食べていた。

・・・デュアス、鐘はまずかったかな?・・・

理緒が思念を送るとデュアスは理緒を見つめて微笑みながら言った。


・・・ギルスは頭を抱えておりましたが最高神官が何とかしてくれるみたいですよ

   今日は午後から大礼拝があるので、朝、新入生の説明会が終わったら

   ギルスと一緒にいらしてください・・・


という思念が帰って来たのでわかったと答えた。

「しかし、すごい食欲ですね。」

魔法のようにたくさんの食材が理緒の胃袋に消えていくのを見て

フランが驚いたように言う。


「うん、。食べれる時にしっかり食べないと

 食べれない時に悔しい想いするもの。」

理緒は、世界樹の元で肉食を断たっていた時を思い出して遠い目をした。



朝食が終わるとフランは神学校に行き、

理緒は新入生の為の説明会に参加することにした。

会場に行くと、もう既に人が何人もいた。



皆が自分より30センチは身長が高いのを見て、

「俺・・チビじゃ無かったはずなんだけど・・・。」

理緒はそう言いながら自分の体を見降ろした。

身長182センチの自分が小さいなんて・・・

何だか悲しくなってしまう理緒であった。



仕方が無いので理緒は一番前の隅の席に座った。

さすがに30センチの差は大きい。

「ここいいかな?」そう言って理緒の隣に座った

女の人ですら理緒よりも10センチは大きい。

「何だか悔しいな。」理緒は小さな声でそう呟いた。




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