ルーレンの夜明け

       第62話 試験 武術学校

本文へジャンプ




最高神官とのお茶を飲み干した理緒は、

待っていた神官に連れられて最後のコテージに入った。

コテージに入ると体格の良い男が待っていた。



「隣の部屋で着替えて外に来い。あっ。ペットはだめだぞ。」

そう男が言うと紫苑は自ら理緒の頭から飛んで行った。


理緒は、隣の部屋に行って軽く口笛を吹いた。

そこには動きやすい衣装や鎧、そして棚には様々な武具がのっていた。

「ふーーん。まさにRPG。」



理緒はそう呟くと薄手の目立たなく動きやすい服装に着替え、

靴や服の目立たないところにナイフを仕込んだ。


「後は何かの時の為にこれがあるし良いか。」

理緒は自分の荷物からブレスレットを出すとそれを腕につけた。

ちなみにそのブレスレットは特殊部隊の訓練の時支給されたものである。


「本当は、デュアスが持っているリュックに装備入っているんだけどな。」

理緒はそう呟いた。新入生の荷物検査は厳格ということでデュアスに預けたのだ。


理緒が外に出ると外には10人くらいの者が待っていた。

皆理緒より大きい。皆それぞれに剣や槍を持ち

防具をつけている。



「よし。只今から武術学校の専攻試験を始める。

 何、この敷地には色々な罠や仕掛けや人がいる。

 それを潜り抜けこの小さな山の上にある小屋から

 バッチを取って、ここに来るのが試験だ。

 刻限は1刻。さあ、行け。」


そこにいた者はすぐに走り出し、理緒もその後をつけて軽く走った。

新入生を見送った男はあくびをして、

「まあ。以前1刻で戻った者はデュアス・ディ・ヴァランしかいないからなあ。」

と言ってそばにあった椅子に座って目を閉じた。




理緒は、森の入口でしばらく足を止めてから、

道ではなく、森の中を疾風のような早さで走り始めた。

「特殊訓練に比べれば、のどかだなあ。」

理緒はそう呟きながら、小高い丘を越え、

ブレスレッドに仕込んだワイヤーを対岸の木に絡ませて

谷を渡り木を飛び移り沼を越え、20分くらいで小高い山の上の小屋についた。



小屋の前には5人の男が立っている。

理緒が出た場所は、小屋の後ろの森なのでガラスを静かにはずして小屋の中に入った。

それから、小屋の中に入り、バッチの置かれたテーブルの前の男を背後から

気絶させ、バッチを取り、再び窓から出てガラスを元に戻すと

森に戻った。



行きに通り道に印をつけた分、帰りは楽だった。

森の入口の近くまで来た理緒は、気絶した生徒を米俵のように

抱えた男達の前に出てしまった。



「おやおや、まだ、ちっこいのがいたらしい。」

大きな男は、抱えた生徒を道に投げ捨てるように置くと

剣を出そうとした。その前に理緒は男の手を取り

柔道の一本背負いで自分の何倍もある男を転がした。



男が地面に倒れるのと同時に得意の俊足で森の入口を目指す。

その時、理緒は気配を感じて大きく木の枝の上に飛びあがる。

今までいたところを数本の矢が飛んでいった。

「おっと、危ないなあ。」

理緒はそう言いながら、木を猿のように飛び移り、森の入口を目指した。



しかし、森の入口に差し掛かろうとする理緒の足元に

剣が投げられて威厳のある声がした。

「新入生、剣を取れ。」

後ろを振り返ると明るいブルーのマントに身を包んだ男が剣を構えている。

「剣を取って、戦え。」

大柄ながらも鍛えている体つきの男は、殺気を飛ばしながら言う。



このまま剣を取らないと、まずいな。

理緒はそう思いながら、剣をゆっくりと取って構えた。

「その構えは・・・。面白い。」

男はそう言うと、いきなり理緒に切りつけてきた。



理緒は身軽に剣を避けると高く高く飛んだ。

自分より大きな剣を持って高く飛ぶ姿は遠目では

剣が飛び上がっているように見える。

「ぐっ。」男は、腰を落として理緒の渾身の振りを押さえ

打ち返した。



・・・こいつ強い・・・でもデュアスほどでは・・・・

伊達にデュアスと毎日鍛錬しているわけでない。

理緒は、次の瞬間相手の懐に思いっきり突っ込み、

相手の首筋に剣を当てた。



その速さは本当に速く、理緒が放つ殺気の冷たさに男は身動きできない。

「参った・・・。」男の手から剣が落ちる。

理緒は殺気を消し、にっこり微笑むと



森の入口を抜け、寝ている男の腹にバッチを投げつけた。

「う・・・ん・・坊主。バッチを持ってきたのか?」

驚く男の声と一緒に武術学校の試験が終わった。





 BACK  NEXT 

 Copyright(c) 2007-2010 Jua Kagami all rights reserved.