ルーレンの夜明け

       第60話 試験 商業学校・調理学校

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神官に連れられて、別のコテージに来た理緒は

部屋の中に普通に椅子と机があり、面接試験の雰囲気に

ほっとした。


目の前に5人の男が座っており、理緒を見て

真ん中の椅子に座るように言った。

理緒が座ると1人の男が口を開いた。

「ここは、ローレンシャ商業学校の試験会場です。

 まずは、計算能力の試験を受けてください。」



理緒の前に机が出され、試験用紙が置かれた。

理緒は、その問題をざっと見て、答えを書き始めた。

内容は簡単な四則計算なので、すいすい解ける。

理緒は、指でソロバンを弾くしぐさをしながら

ほとんど暗算で計算を解いていった。


その後、面接をした結果、理緒の専攻は

貿易・会計になった。




その後、また神官に連れて行かれたのは、

別のコテージでそこは、外にいる時から美味しそうな香りがしていた。


中に入ると、食堂のようになっていて

数人の学生が料理を食べていた。

「おい。坊主。何食べたいんだ?」

精悍な感じの白衣の男が理緒に尋ねる。

「肉〜〜〜!」

理緒はいつものように答えると、男が

「肉を出してやるからこっちに来て自分で作れ。」

と言った。



理緒は言われた通り着替え、紫苑を椅子の背に止まらせて

丁寧に手を洗ってから厨房に入った。



まな板の上に鶏肉が置かれている。

「他に欲しい物があるなら持ってくるぜ。」

理緒は、胸肉を取ってもらい、野菜と薬草を数種類頼んだ。



男は、野菜を出すと、薬草は医療学校から貰ってくると厨房を出て行った。

その間、理緒は胸肉に軽く塩をして、味見をしながら野菜を食べ、

トマトのような味の黄色の野菜とニンニクの味の野菜でソースを作ることにした。



男が薬草を貰ってくると、薬草の堅いところを胸肉の上に掛けて

柔らかいところを綺麗に洗って半分は荒くみじん切りをして

トマトのような野菜とニンニク味の野菜と一緒に煮込んでソースを作る。


ちょうど良くなったくらいに肉を弱火でソテーする。

皮がパリパリになって黄金色になったらまな板で一口サイズに切って

その上に熱々の黄色いソースをのせ、その上に薬草のみじんぎりを

パラパラ掛け、薬草のサラダに別に作ったドレッシングを掛けた。


皿の横に他の野菜を軽く煮込んだスープを添える

男が、「すごい斬新な料理だな。ちょっと待て。」

そう言うと、厨房にいた他の者を呼ぶ。


すると、手の空いていた何人かが集まり、物珍しそうに理緒の料理を見て

味見をし、驚いたように理緒を見る。

理緒にしてみると、島とかで皆に振舞っていた料理なので

別にねらって作ったわけでない。


デュアスもギルスも普通に食べていたので、

変わった料理だとは思っていなかった。



「俺の肉・・・・。」

見る見る間に無くなっていく自分の料理に理緒は小さく呟いて

お腹を押さえると「グルグルグル・・・。」とお腹がなった。


「すまない。坊主。美味しい肉焼いてやるからな。」

先程の男が、違うところから高級そうな肉を出して

ソテーをしてくれ、付け合わせと一緒に出してくれたので

理緒はそれを食堂に持って行って美味しそうに食べ始めた。



食べ終わると、さっきの男が来て理緒に言った。

「リオンと言ったか・・・専攻を決めなければいけないが

 さっきの斬新な料理で決めれないから、ポレンタを作ってくれ。」

「ポレンタ?」理緒は首を傾げて言う。



理緒が何を食べたいと聞かれて「肉。」と答えるにはわけがあった。

実は理緒はルーレンの料理の名を全然知らない。


化身としての務めだとテーブルマナーは完璧なのだが

料理の名前は全然わからないのだ。

「ポレンタを知らないのか?じゃあネッソでもよいぞ。」

「ネッソ?」


そんな会話が何個か続いた後、男は困ったような顔をした。

これでは専攻が決めれないからだ。


その時厨房から初老の男が出て来た。

困ったようにさっきの男が説明をする。

初老の男は話を聞いて専攻は後で決めようと言ってくれた。

「入学したら、昼ごはんは私の部屋で各専攻の実習の料理を

 食べなさい。それから決めよう。」



男が優しくそう言ってくれたので、理緒は明るく頷き、コテージを後にした。


「校長、良かったのですか?」さきほどの男が聞くと初老の男は頷いて言った。

「彼は、全ての専門学校の試験を受けるらしい。

 面白いじゃないか。しかし、あのソースは恐れ入ったな。

 我々もおちおちしとれん。」

校長はそう言って笑うと厨房に戻った。





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