ルーレンの夜明け

       第59話 試験 医療学校

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門を出ると、神官が迎えた。


周りを見渡すと、その先には数個のコテージのような建物が見える。

「リオンですね。今日のスケジュールを教えます。

 今日の朝は、医療学校・商業学校・調理学校の試験があります。

 その後昼からは、工房学校の方へ行き試験をします。

 それが終わり次第、魔術学校、最後に武術学校の試験があります。

 今日の試験で、リオンの専攻が決まりますので、気を抜かずに頑張って下さい。」

神官はそう言うと、理緒を連れて一番右側のコテージに連れていって言った。




「どうぞ、中でお待ちください。」

理緒が入ると、そこには2台の寝台がありその上には

人が眠っていた。



2人とも苦しそうにうめいている。

理緒は寝台の横に行くと、2人の様子を見た。

1人は、腹を押さえて丸まっており、もう1人は肩に傷を負い血がダラダラ流れている。

「こんな患者置いて・・・。」


理緒はそう言いながら奥の水差しから洗面器に水を入れ丁寧に手を洗いながら

棚にある薬品棚の中にある薬草を見て、薬草を数種類取りだすと

ブレンドしてガーゼに包み薬湯を作った。



その後、其々の寝台のそばに行くと脈を測り、診察を初めた。

「まずは、血を止めないと・・・。」理緒は、傷を負った男に優しく声を掛けながら

止血をして落ち着かせると、もう1人の診察を始めた。

「これは、腸炎だな。」理緒はそう言って、出来た薬湯を飲ませ安静にさせると

もう1人の男の全身を診察し、骨が折れていると思われる箇所を発見し

添え木をして器用に包帯を巻いた。


その男にも薬湯を飲ませ、寝かせると薬草をブレンドして煎じ始めた。

煎じた方が、効能が高くなる薬草もあるからだ。

そうしている内に寝台の方からカサっと音がして驚いた事に

寝台の上に眠っていた2人の男が消えた。



それと同時に扉が開いて男達が5人入って来た。

全員が白い縁取りのマントを着けている。

「あの〜〜〜。」理緒が困惑したように言うと

真ん中に立っていた純白のマントを着た男が口を開いた。

「案ずることはない。

 今まで、そこにいた患者は医療魔法師の私が作った人型で

 生身の人ではない。

 それに消えたということは、君の診療で彼らが治ったというもの。

 見事な判断だ。

 君を歓迎しよう。」


男はそう言うと、手を理緒に差し出したので、理緒はがっちりと握手をして言った。

「あの・・・私の専攻は・・。」

男は微笑みながら言った。

「まあ、専攻については、学校の私の部屋を訪ねておいで。

 私は医療魔法師・リリアス・スランだ。」

「よろしくお願いします。」

理緒は、にっこりと微笑んで礼をした。



「君は、まだ他の学校の試験もあるのだろう?

 もう次に行っていいぞ。」

リリアスがそう言ったので理緒は会釈してコテージを後にした。


理緒が外に出たと同時に男の1人が困惑したように口を開いた。

「本当に専攻どうするのですか?

 まさか、治癒させることができるなんて・・・。」

もう1人の男が理緒が調合した薬草を見て言った。

「こう言う調合の仕方があるとは・・・。

 正直、私が今まで見たことのない調合の仕方です。

 薬湯の調合もこの取り合わせは考えたことも無いです。

 しかし、理論上は確かに効能があります。」

「骨折を木で固定させるなんて斬新です。」

もう1人の男も困惑したように言った。



「そうだな。本当は、薬湯を作ろうとした者は薬草師の専攻、

 血を流した男を治療したのなら外科医療師の専攻、

 腹痛の男を治療すると民間医療師の専攻と決まっているのだが・・・

 それに本人は無意識かもしれないが魔力も出していた。

 私もこの結果は想定外だな。」

 とにかく、他の学生の試験を終えてから検討しよう。」

リリアスはそう言いながら呪文を唱えてパンと手を叩くと寝台に2人の病人が

現れ、男達はいそいそと用意を始めた。




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