ルーレンの夜明け

       第58話 審査の夜

本文へジャンプ



理緒は、部屋の外で待っていたセリに案内され、

小さな部屋で食事を取り、そこの寝室で眠ることになった。

理緒が眠ると、理緒の眠っている部屋に精霊が入り

理緒に甘えるように纏わりついている。

「デュアス・・・どうしているかな?」

島では、当たり前のように隣で眠っていたデュアスが

傍にいないことに少し不安を覚えながら目を閉じた。




「いやあ・・ローレンシャは堅苦しくていけないなあ。」

酒場の席に座りながらギルスが言った。

「リオは、疲れているはずだが、大丈夫だろうか?」

デュアスは心配そうに口を開いた。


「そう。それで、俺は最高神官に呼ばれて色々と事情を聞かれたんだ。」

「リオは、普通に学生として過ごすことができるのか?」

「まあ、当面は大丈夫だろう?基本的に神官の絶対は化身だからな。

 だから、あの狸じじいの最高神官も理緒の意をすぐに組んだんだ。

 俺に教師としてリオを守れってお達しだ。でも、別の意味で注目は浴びるだろう。」


「別の意味?」

「ああ。当たり前と言っちゃ当たり前だが、理緒は全ての専門に適性があるらしい。

 ローレンシャ初だそうだ。あの狸じじい、やる気になったら専門を数個消すことが

 できたはずなのに・・・。」

「全て・・ですか?それなら、明日の試験も・・・。」

「ああ、全ての試験になるからな明日いっぱいかかるだろう?

 各専門学校の教官には話がいっているはずだ。

 たぶん、明日の試験はリオ中心に予定が組まれるだろう。」



「無駄に器用ですものね・・・。」

「ああ。無駄にな・・・。それでも、今しばらくリオの自由にしてやりたい。」

「ええ。今はまだ、世界樹信仰に友好的な国ばかりですが

 そのうちあちらにも行くことになりましょう。」

「俺たちもおちおちしていれないな。」

「ええ。精進しないと・・・。この国でもっと強くならないと・・・。」

「乾杯しようぜ。リオの前途に。」

「ええ。明るいルーレンの未来に。」

2人は、ビールジョッキのようなグラスをカチンと合わせた。




翌朝、理緒はまだ夜明け前から起きて筋トレをはじめていた。

「ちょっと紫苑、もう少し大きくなって俺の腹の上乗ってくれ。」

紫苑は小さく羽ばたくと、小鳥から白鳥くらいの大きさになって

理緒の腹の上に乗る。

「それでも、前に比べて体力落ちているからなあ。」

理緒はそう言うと筋トレを続行した。

夜明け過ぎまでやると、全身汗だくになって起しにきたセリを驚かせた。

その後の朝食でも理緒は体の割にたくさん食べるので

セリはとても驚いたようだ。ちなみに理緒が食事をしている最中、紫苑も

狩りをして食事をする。



朝食後のお茶を飲んでいると、セリが今日の説明を始めた。

「ローレンシャの専門学校は全部で7つあります。

 魔術学校・医療学校・医療魔術学校・

 調理学校・武術学校・工房学校・商業学校です。

 その他に必須項目として神学校があります。

 昨日で神学校の生徒として認められました。

 今日はそれぞれの専門学校の試験があります。

 それぞれの専門学校でもその中に専攻というものがあるので

 その専攻を決めるのが大きな目的になります。

 尚、医療魔術学校は、魔術学校と医療学校を修了した者が通うので

 そちらの試験はありません。」

「じゃあ、6個試験があると言うこと?」

「そうですね。それでは、試験会場へ誘導します。

 尚、試験科目によっては他の生徒と一緒になるので

 ご了承ください。」

「わかりました。」

セリは、理緒を誘導して、建物の高層階の門の前へ来ていた。



「ここで、はじまりの門は終わりです。」

「セリとお別れだね。」

理緒がそう言うと、セリはその場で神官の最敬礼を取って言った。

「化身様、ご一緒できて生涯の宝となりました。

 これからの、幸運をお祈り申しあげます。」

「ありがとう。セリもね。」

理緒はにこっと微笑んで、手から金色の光を出して

セリの体を包んだ。


「身に余る光栄でございます。」

セリは自分の体を包んでいる光に感動しながら言うと体を起して

そっと門を開いた。

ギギーっと門が開くと、理緒はもう1度にっこり微笑み門の向こうへと消えた。




 BACK  NEXT 

 Copyright(c) 2007-2010 Jua Kagami all rights reserved.