ルーレンの夜明け

       第57話 審査

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「リオン様・・・。」

セリは、心配そうに座って眠りはじめた理緒を見た。

本来なら、この椅子に座っただけで椅子が光り

第一審査の結果が現れる。


椅子が白色に光ると通過で、

緑色に光ると送還しなければならない。



しかし、理緒自身が金色に光っているので

白い光がわからない。そして、椅子から様々な光があふれ出て

理緒の体に纏わりついている。



セリは困ってしまって、その部屋に続いている第二審査の部屋の扉をノックした。

「どうしたのかね?」

その扉を向こうから開けたのは白い長い髭をした最高神官だ。



「最高神官様。今回の最後の新入生の第一審査が終了しないのですが・・・?」

「第一審査が・・・。」

最高神官は、部屋が金色に光っているのを見て驚いたように

椅子の方へ歩いた。



「まさか・・・生きているうちに化身様と会えるとは・・・。」

「最高神官様・・なぜ・・このような現象が・・・?」

最高神官は、そこで目を閉じた。



・・・・おかえりなさい・・・

・・・・私たち・・・がんばったでしょ・・・・・

・・・甘えさせて・・・・



「精霊が彼に甘えているのだ。さすがに神力が強いな

 わしも精霊の声は初めて聞いた。」

最高神官はそう言うと、嬉しそうに微笑んだ。



「夢ではないのですよね。」

「ああ。化身様に間違いない。しかし、以前の化身様とは別人じゃ。」

「別人ですか・・?」

「ああ。ローレンシャでは神官を遣わし、以前の化身様の世界樹が枯れたのを

 確かに確認した。そしてこの方はリタニアに現れた化身様だろう。

 どんな方かと思っていたが、こんなに小柄な方だとは・・・。」

しばらくすると、理緒の周りから少しずつ光が消えていく。

最後に座っていた部分が白色に光り、光は消えた。




初めに理緒の頭の上で眠っていた紫苑が目を覚まし、

優しく嘴で理緒の頭を突いた。

「う・・・ん」

理緒が目を覚ますと、目の前にセリと長い白い髭を生やした神官が

平伏して神官の最敬礼の形を取っていた。



「あの・・・・?」

理緒の戸惑った声に穏やかに声を掛けてくれたのは

髭の神官だ。

「こうして、化身様にお目にかかることができるのは光栄に存じます。

 化身様がローレンシャの地を踏んでくださったことを深く感謝致します。

 この地で、学びたいとのこと、隣の部屋で私とお話しませんか?」

「あの・・・私は自分の立場を確かに認識していますが

 許されるのであれば、学生として扱って戴きたいのですが・・・。」

理緒がそう言うと白い髭を揺らしながら神官が笑って言った。

「わかりました。リオン。それでは、隣の部屋へ。」

理緒は頷いて一緒に隣の部屋に行った。



隣の部屋は大きな部屋で、真ん中に大きな机があり、

手前には学生用の椅子があり、

向こうにその髭の神官が座った。

髭の神官は、椅子に座り目を閉じると

「やはり・・困ったのう・・・。」

と呟いた。



理緒が不思議そうな顔をすると神官は言った。


「リオン、私はローレンシャの最高神官であるアスレと申します。

 これから、化身様としての行事もありますのでお見知りおきを。」

「私の名は、自分はリオと認識しております。」

「リオ・・・それは変わった名ですな。」

「ええ。」理緒は、ルーレンに来てからの話をアスレに話した。

何だか、アスレには聞いてほしいと思ったからだ。



「そうですか・・・。お寂しい想いをしたのですな。」

アスレは、理緒の話を聞いて言った。

「それでも、今は皆がそばにいて支えてくれるので・・・。」

理緒がそう言いかけると、アスレはにっこり微笑んで言った。



「わしは、自分の仲間の神官を家族だと思っております。

 その家族が遠くに行くとやはりこんな老いぼれでも寂しく感じます。

 だから、自慢のお父様とお母様と会えないということは

 寂しいじゃろうと思いますのだ。」

理緒は、寂しく微笑んでコクリと頷いた。


「それに、わしのような最高神官ですら完璧を求められる。

 それに比べて、化身様はどうだろうと考えた時、

 あなたにかかる負担は大きい。

 例え、今の姿を隠していてもあなたは

 やはり世界樹の化身。我々にとっての神なのです。」


「神・・・。」

「この第二の審査で私は、生徒にその人の適する専門を伝える。

 ローレンシャの7つの専門学校の道標を示すのがわしの使命。

 今まで、どんなに多い生徒でも4つがせいぜいでした。

 しかし、リオ様は違う。どの道にも進めます。

 なので、明日は史上初。全校の試験を受けて戴くということになります。」

「わかりました。」



「リオ様。いつでも頼ってくだされ。

 こんな老いぼれだが、愚痴くらいは聞けますぞ。」

「ありがとうございます。あの、いろいろと教えてください。」

理緒はそう言って頭を下げた。




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