ルーレンの夜明け

       第56話 はじまりの門

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「リオンですか?」

薄水色の神官服を着た神官が理緒に向かって屈んで言った。

「はい。」理緒はそう言って椅子から立ちあがった。



「これからはじまりの門に案内致します。私ははじまりの門の神官セリです。

 まずははじまりの門の説明をします。

 リオンのようにローレンシャの学校で学ぼうと思う者は全てはじまりの門での

 審査を受けることになります。私は、リオンがこの門を出るまでお世話致します。」

「よろしくお願いします。セリさん。」

「それでは。こちらへどうぞ。」セリはそう言いながら、大きな建物の方へ歩いて行った。

大きな石作りの門の前に来るとセリは立ち止まって言った。



目の前には大きな扉が2つあった。

「右が神官の扉で左が一般生の扉です。

 リオンは、一般生でよいですね。」

理緒が頷くとセリは左の扉を開けて理緒を中に入れた。

そこは、待合室のような部屋で、ベンチが何個も置かれていた。

「これから、はじまりの門の説明を致します。

 ローレンシャでははじまりの門で、その生徒を受け入れるか決めます。

 もし、受け入れることができない場合は、国に強制送還されます。

 このはじまりの門では、その生徒が学ぶことのできる資質、そして

 ローレンシャでの寮生活、そして最低限の世界樹信仰を受け入れることが

 できるかを審査致します。

  まず、第一審査はその生徒の性格や魔力を分析致します。

 その次の第二審査は、最高神官が面接をし、どの専門が適しているか見定めます。

 第二審査を通過すると、ここで一泊し、明日はじまりの門を出た所で

 各学校の専攻を決めるテストがあります。」

「各学校?」

「ああ、ローレンシャの学校のシステムを説明致しますね。

 ローレンシャは世界樹信仰の総本山なので

 まずは、基本的な学習は神学校の方で行います。

 特に新入生は神学校の初等科は必ず修了しなければなりません。

 その他にローレンシャには7つの専門学校があります。

 多くの学生は初等科を勉強しながら専門学校にも通っております。」

 「わかりました。」

「それでは、まずは第一審査です。

 ところで、生徒の中にはいろいろと秘密を持っている者がおります。

 秘密の無い者は審査を複数でやることになりますが、

 リオンはいかがですか?

 それから、このはじまりの門の神官はこの門から離れることがないので

 生徒の秘密は守られます。

 唯一最高神官だけは秘密を知ることになりますが、それを漏らすことはありません。」

理緒は頷いて言った。

「私には、秘密があります。」

「わかりました。それでは、第一審査の為の部屋に入って下さい。

 その部屋に入ると、あなたの秘密は無効となります。」

理緒は頷くとセリの開けた扉から部屋に入る。

そこは薄暗い部屋で入った途端に理緒の髪は元の茶色から黒色に変わり、

理緒の体をまぶしいばかりの金色の光が覆う。

セリは、そのあまりにもまぶしい光に目を細めた。

「世界樹の化身様・・・。」

セリはそう言って神官の礼を取った。

「すごい秘密でしょ?」理緒はいたずらっぽく微笑むとセリは

「冷静ではいられませんね。」と言って惚れ惚れするように理緒を見つめた。

その後、その部屋の奥の小部屋の椅子に座るように言われた。

その椅子に座ると心地よい眠りに誘われる。

・・・・おかえりなさい・・・・

・・・待っておりましたよ・・・・

様々な精霊の歓迎の声を聞きながら理緒はしばしの休息を取った。






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