ルーレンの夜明け

       第54話 救い

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少し休んだ後、理緒達は食事を取り、甲板の上にいた。

雨も風も強い。

「よし、俺達が先に行くからしっかりついてこい!」

船員がそう言ってマストにあがっていく、

その後を理緒とデュアスとギルスは軽々とあがっていった。


マストの上にあがり、前方を見ると海の色がはっきりと違って見えた。

黒いもやの中に一筋の青い色が見えその周りを結界であろう透明な壁が

支えている。


理緒の視線に気づいたデュアスは理緒に呼びかけた。

・・・リオ、闇を消滅させるなんて考えてはだめだ・・・

理緒は心配そうなデュアスに微笑みながら頷いて見せた。



当初の予定通り、理緒達はマストから帆を降ろし、甲板に戻った。

甲板に戻ると、船長が船室の扉を開けて大きな声で叫んだ。

「早く船室に入れ!ここから闇の手が降るぞ。」



「走りなさい!」船員がそう言ったので理緒達は急いで

船室の方へ走り出した。

すると、急に船が傾き、ユタとユタの部下が船尾の方に流される。



「ユターーー!」理緒は、「待て!戻れ!」と言う船長の声を無視して

ユタとユタの部下が流された方へ駆けだした。



すかさず、デュアスとギルスが追う。

船尾の方で、ユタは片手で部下の腕を持ち、片手で船の縁に捕まり

あがろうとしていた。

「ユタ。捕まれ!」

理緒の声と共にロープが2人の目の前に落とされた。


ユタがロープに捕まると追いついたデュアスとギルスと共に

2人を引きあげた。

その時、メリメリメリという音がして闇が細い手のようになると

2人の足を冷たい手で掴んだ。

「離せ、ぼうず。まだ間に合う。」

ユタがそう叫ぶと、理緒が吠えた。



「ユタを見捨てるわけないだろう?

 デュアス。剣を。

 ギルス。引きあげて結界だ。

 紫苑、来い!」

理緒がそう叫ぶと、船室から理緒の愛鳥の紫苑が飛び出てきて

小鳥から大型のマイラに姿を変えまっすぐにユタの足の闇を食いちぎった。



ギルスはユタを引きあげると、そのまま船に結界をかける。

理緒とデュアスの周りを金色の光が包み、

デュアスは、腰に下げた刀から普段は使わない日本刀を抜き、

襲いかかってくる闇に向かって大きく刀を振りかぶって切る。



「う・・・そだろ・・・。」

ユタは甲板で尻もちをつきながら言った。

デュアスが刀を振るごとに闇は消え、何個も美しい玉が浮かび上がる。



それと同様に美しいコバルトブルーとエメラルドグリーンをした紫苑が

闇を切り裂き食べるとその口から同様の玉が生まれる。

その玉は空中に浮かんでじっと闇を睨んでいる理緒の中に消えていった。



海の揺れが少し収まり、船の幅と同じくらいだった青い海は大きな河くらいの太さに

変わり、あれだけ荒れていた海も凪いできた。

空も海と同じ位青い空が開け、太陽が顔を出している。



「リオ、これ以上はだめだ。」

ギルスは、船全体にかけていた結界の中に理緒とデュアスを入れると

デュアスは首を振りながら、理緒を抱きしめた。

「デュアス、あれは闇じゃない。悲しい魂なんだ・・・

 もう少し・・・俺に力があれば・・・。」

理緒はボロボロ泣きながらデュアスにすがりついた。



デュアスは理緒をぎゅっと抱きしめながら優しく背中を叩いた。



「おいおい。それよりも、すっかり変装取れてるぞ。」

軽い口調でギルスが言ったので、理緒とデュアスは我に返って

甲板を眺めた。



そこには、神官の最大の礼を取るユタとその部下、

船長や船員の姿があった。



理緒は、驚いたように自分の姿を見て、髪が黒く戻っていることに気づいた。

「ギルス・・・まずかったかな?」

理緒は髪の色を茶色に戻しながら言うとギルスは苦笑して言った。

「まあ、全員に見られたわけじゃないから良いだろ。」



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