ルーレンの夜明け

       第51話 乗船手続き

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数日後、デュアスとギルスに連れられて

理緒は、港に来ていた。


デュアスとギルスは、乗船手続きをして

理緒のそばに来て心配そうに理緒を見た。

この海の街は王都から離れているので、変装して

髪と目の色を変えている理緒はそう目立つわけでもなく

快適に生活ができた。


デュアスとギルスもさっきまでは変装していたが

桟橋で着替えをして変装をといたので、人々の目を引き付ける。


デュアスはいつもの衣装の上に藍色のマントを着ており、

そのマントの襟元には何個ものブローチが留められていた。

ギルスは真っ白な神官服で髭も剃ってハンサムな顔を覗かせていた。


待合室は人であふれて、デュアスと同じようなマントを羽織った者や

ギルスと同じ神官服を纏った者であふれ返っていたが

2人の姿を見て、驚いたように目を見開く者ばかりだった。


それもそのはず、藍色のマントは武術学校の上級学校のもので

この上級学校はとても狭き門なのである。一方、ギルスの純白の神官服は

大神官をあらわしており、大神官は最高神官を支える実力の持ち主なのである。



「ここで、しばらくの別れだ。理緒。」デュアスは理緒に向かって言った。

「どうして?」

「ローレンシャに渡る新入生は、皆集められて武術神官監視の元

 ローレンシャに渡る。

 そして、そこで試験を受け、ローレンシャに受け入れられてから

 生徒となるんだ。」

「リオ、神官の船室も別だから、向こうで会おう。

 はじまりの門を抜けたところで待っているからな。」

ギルスがそう言った。



「はじまりの門?」

「行けばわかる。」ギルスが言うと、理緒は立ちあがって言った。



「じゃあ、俺はあっちの新入生集合場所のところに行けばいいんだね。」



「ちょっと待ってくれ。リオ。」デュアスはそう言って理緒の手を取って言った。

「我が主、旅の安寧と幸運を祈ります。貴方に何かある時はすぐに馳せ参じます。」

そう言いながら理緒の手に忠誠のキスをする。


「デュアスも旅の安寧と幸運を。」理緒はそう言いながら微笑んだ。

おどおどしていないのは、デュアスとギルスにそうするように言われていたからだ。



続いて、ギルスも理緒の肩に手をやって言った。

「旅の安寧と幸運をリオ。世界樹の恩恵が貴方と共にあらんことを。」

そう言いながら、理緒の周りに薄い結界を掛けた。


この結界は掛けた人を魔法攻撃や小さな闇から守るのと同時に

神官がその人を認めて加護を与えているという意味合いがあり、

特に大神官であるギルスの結界は薄い銀色のオーラなので

これにより武術神官の対応も変わるのだ。

「ギルス、ありがとう。ギルスも旅の安寧と幸運を。」

理緒はそう言って肩に小鳥の姿で停まっている紫苑と一緒に

新入生集合場所の方へ歩いて行った。



デュアスとギルスは心配そうに理緒の後ろ姿を見送り、

桟橋を渡って神官用と在学生用の船室へと入って行った。

理緒が近寄って行くと、そこには10代から20代くらいの人が

あふれ返っていた。


ルーレンでは、身長が皆高くて、理緒の身長では10歳くらいにしか見えないらしい。

しかも、10代後半の者は多いが10代前半というものはいない。


なので、理緒が近寄って行くと、

あわてて武術神官と呼ばれる神官が近寄ってきて言った。

「坊や。家族と別れをすませたのですか。」

理緒は、坊やという言葉にむっとしたが、コクリと頷いた。

「そうですか。他の者は体が大きいからここにいると疲れるでしょう。

 大神官の加護を貰っているようですし、先に船室に入りましょう。

 名前は、リオンで良いのですね?」

「はい。よろしくお願いします。」理緒はその神官に手を引かれて

大きめな船室に来た。部屋の半分には2段ベッドが何個も並んでおり



窓際には、椅子や机がある。

「そこで待っているのですよ。」

神官はそう言って船室を出て行った。

理緒はその椅子の1つに腰かけるとぼんやり船室から見える海をみつめた。






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