ルーレンの夜明け

       第50話 換金

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デュアスは、理緒が落ち着くと、

目の前の宝石を見て「これは・・・。」

と目を見開いた。

そこには、大粒の宝石がまるでおもちゃの山のように

無造作に積まれていたから。

事情を聞いたデュアスは、理緒の肩を抱いて言った。

「理緒の親はやっぱり理緒のことを心配していたのだな。」

「いままで、俺の親は斎藤義哉と美香子だと思っていた。

 でも、案じてくれてたんだなと思うと素直にうれしい。

 でも、血が繋がっている彼の名も彼がつけてくれた自分の名

 すら知らない。」

「リオ、ルーレンでは名前は至宝。大切な者の名は隠すのが普通だ。

 実際俺の真名を知っているのはあなたと父王だけだ。」

「デュ・バランダス・エ・ランダス。己の意志を貫き皆に幸せを運ぶ者。」

理緒がうわごとのように呟いた。これは、デュアスに教えてもらったデュアスの真名だ。

「真名を知るのは、大切な者だけ。

 私はこの名をリオに捧げる。」

「ありがとう。デュアス。すごく嬉しいよ。」

理緒はぎゅっとデュアスに抱きつきながら言った。







「あれは、凄かったぞ。」

リタニア王国の港町の宿の木の椅子に座りながらギルスが言った。

あの後、デュアスの革袋に半分くらい宝石を入れた後、ギルスの元に戻った。

そして、紫苑は3人を乗せてリタニア王国の西岸の港町に降りたった。

皆で宿を見つけた後はギルスが例の革袋を持って宝石商に行って

宝石の一部を換金してきた。

「まだ、こんなに残っている。」

理緒は渡された革袋を見て言った。

「いや、本当は全て鑑定してもらおうと思ったが、最初の1個の鑑定で

 これは小出しにした方がよいかなと思ったんだ。

 それでだ。理緒、これが換金した金だ。」

そう言いながらギルスは大きめの革袋と小さな紙片とビー玉のようなガラス玉がついている

紐を理緒に渡した。

「これは・・・。」

「当分、必要だと思える金はこちらの革袋に入れた。

 残りの金は神殿金庫に入れて来た。」

「神殿金庫?」

「ああ、理緒は知らないのか。

 神殿金庫は、金を預かってくれる場所だ。

 神殿のある場所なら必ず神殿金庫があるから

 ローレンシャでも引き出し可能なんだ。」

「すごい・・銀行なんてあるんだ。

 それで、この玉は?」

「ああ。その玉は、金庫を作った神官の魔力が入っている。

 その魔力で金額や正しい持ち主か判断できるんだ。」

「え・・と言うことはギルスがおろしてくれなきゃだめでしょ?」

「いやいや、リオの魔力を俺も持っているからそれで作ったから大丈夫だ。」

「なんと・・適当な・・・。」

理緒はにっこりと笑うギルスにあきれたように言いながら、

一緒になる紙を見て言った。

「10,000,000ピアってちょっと待て。確か、果実水が30ピアだから

 すごい金額じゃないか!!」

「ああ、その他にその革袋に1,000,000ピア入っている。

 取りあえず、1年分の学費が400,000ピアかかる

 後は、本代だなんだと考えると、このくらい持っていたほうが良い。」

「ちょっと待ってよ。俺だけ?デュアスとギルスの分は?」

「俺は神官だから金はかからない。」とギルスが言うとデュアスも

「俺は、祖父が多額の寄付をしたので学費はかからない。

 それに優秀生は寮費が無料だから。」と言った。

「何?その無料って?」

「ローレンシャで表彰されると永年寮費が無料になるんだ。

 その代わり、表彰された部門の教鞭を取らなくてはならない。」

「デュアスは何を教えるの?」

「俺は剣しかないだろ?」デュアスはそう言って微笑んだ。

「俺もがんばるぞ!」理緒は拳を握りしめて力強く言った。





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