ルーレンの夜明け

       第49話 鳥達の島

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しばらくたつと、ギルスがぼそっと呟いた。

「リオ、こっちはローレンシャの方ではないぞ。

 むしろリタニア王国の東の方角だ。」

「そうだな。ローレンシャに行くには西だ。」

デュアスもそう言う。



その時、理緒の頭の中にマイラの紫苑の声が響いた。

・・・リオ・・・アノシマニオリル・・・ツカマッテ・・・


理緒は慌てて前方の小さな島を指さして言った。

「あの島に降りるって。つかまらなきゃいけないみたい。」

そう言うとしっかり紫苑の首に手を回した。


デュアスは理緒をしっかりと抱きしめギルスは急いで

紐で自分の腰とデュアスと理緒の腰を結わえた。


紫苑は島の上を旋回すると次に一直線に島に向かって

全速力で降りはじめた。


途中気流が変わっているらしく紫苑の背中はすごく揺れた。

しかし、紫苑は一直線に海岸を目指す。

突然理緒の周りに色々な種類の鳥が現れた。

不思議と同じ種類の鳥はいない。


紫苑はその鳥達に導かれるようにスピードを落とし

島の中央にある小高い山を目ざした。

その小高い山の高いところに1羽の大きなマイラがとまっていた。


紫苑はそのマイラの傍に行くと静かに着陸して羽根を閉じた。



・・・ようこそ。この島にいらっしゃいました。

   大きくなられましたね・・・

急に理緒の頭の中に優しいマイラの声が響いた。


・・・俺は以前、あなたと会っているの?・・・

・・・ええ。小さいあなたはとても愛らしかったですよ。・・・

そう言うとそのマイラはゆっくりと羽根を広げて

・・・ついて来なさい・・・。

と言って飛び立った。



「デュアス。ギルス。ここで待っていて。」

理緒はそう言うと紫苑の背に乗りそのマイラの後を追った。

マイラは、ほぼ垂直に飛ぶとそのまま火口のような穴に急降下した。

紫苑はぴったりとその後をついていく。



しばらく下降して、横穴の一つに入ると薄暗いトンネルを抜けた。

するとそこは薄明るく光っていた。

「ここは・・・。」

理緒は紫苑の背から立ちあがって周りを見た。



そこには美しい石が山積みになっていたからだ。

・・ここの石は全てあなたの物です・・・愛しき方の子・・・

「何で?」

・・・ここの宝石は、元々私のお仕えした化身様のものです。

   化身様はわが子の為にこの宝石を残されました。

   来るべき時にあなたがこのルーレンを訪れた時

   お金に困らないように・・・


「こんなにたくさん?・・・」

・・・えぇ。そして、鳥達にこの島を守るように言われました。・・・

・・・あなたにこの石を渡すのが私の最後の仕事・・・

・・・えっ・・・どういうこと・・・?


・・・私にはもう肉体は無いのです。愛しき子。

   そして、愛しき子を守るマイラよ。

   あなたが私の地位を引き継ぐのです。・・・

紫苑はその言葉にゆっくりと頭を下げた。



それと同時にマイラの姿が光りだす。



・・・待ってよ!せめて俺の名前を教えて!前の化身のことも!!・・・

・・・し・・・あ・・・わ・・・せ・・・に・・・


その言葉と共にマイラの姿は小さな光の粒になって消えた。







「リオが泣いている。」

理緒が消えた方角を見ながらデュアスは立ちあがって言った。

「泣いている?」

「ああ。何だかとてもせつなそうに。ちょっと行ってくる。」

「あっ待てよ!!」ギルスがそういう間も無く、デュアスは

目を閉じると紫色の光とともに消えた。



「神官という道を選ばなかったら俺もああなれたのかなあ。

 まあ、過ぎたことは仕方のないこと。

 俺はせいぜい待たせてもらうよ。」

ギルスはそう呟くと、岩場にどんと座った。




「リオ・・・。」

石の前で泣いていた理緒は急に後ろから抱きしめられた。

「デュアス・・見るなよ・・泣くなんて恥ずかしい。」

「リオ・・お前は俺で、俺はお前。恥ずかしくなんてない」

デュアスはそう言いながら理緒をぎゅっと抱きしめた。

理緒は腕の中でそっと力を抜いて、デュアスの服をぎゅっと握った。




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