ルーレンの夜明け

       第47話 清めの結界

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「デュアス、リオ、食事だ。」

ギルスがワゴンを押して入ってくる。

「ギルス、悪いね。面倒かけて。」

理緒が苦笑しながら言った。



「いや、最初の日に比べてだいぶ体が慣れてきたんじゃないか?」

「うん。短時間でも外に出れるようになったからね。

 俺としては肉を食べたい気分。」

理緒はそう言いながらテーブルについて食事を始めた。


テーブルの上には果物や野菜が並べられている。

デュアスも同様のメニューだ。

世界樹から戻った理緒とデュアスは部屋で休もうとしたが、

部屋に入ると息苦しくなり胸を押さえ始めた。



ギルスは理緒とデュアスから出る金色のオーラのような光が

影響しているのではと考え、すぐに理緒の部屋にデュアスの寝台を入れ、

清めの結界を張った。



するとその中では理緒もデュアスも普通に生活ができた。

しかし体が肉や魚を受けつけず、こうして野菜や果物を食べるしかない。


ギルスが言うには金色の光が消えると普通の生活ができるらしいが

それまでは、部屋を出ることもできない。

「もう少し、待たなきゃな。リオ。」

ギルスは理緒の周りを覆っている金色のオーラを見て言った。



初めは理緒の姿も見えないくらい眩しかったオーラが今は薄っすらとしたものに

変わっている。

「俺も肉を食いたい。皆そうだから、一緒に頑張ろうな。」

ギルスはそう言って理緒を励ました。



この部屋に掛けた清めの結界は大変強力なもので、

それは結界を掛けるギルス、そして結界の張っている建物にも影響する。

なので、ギルスはもちろんのこと、この建物に入る他の者も肉や魚を食べることができない。

そして、理緒とデュアスのいるこの部屋はギルスしか長居することができない。

それは、ギルス自身が力を持った大神官であるからで、他の者がこの部屋に入ると

部屋の空気が神聖すぎて息苦しくなるからである。



「そうだよな。俺が弱音吐いてるとだめだよな。」

そう言いながら、皿を平らげた理緒はテーブルに

アリとマーシェが摘んで来た薬草を広げる。

さすがに自分が作った森だけに世界樹の森には薬草が多い。



そして、この力があるうちに薬草の手入れをするときっと良いことがあるような気がする。

その間、デュアスは武器の手入れをしたりギルスに薦められて、騎士の日記をつけている。

ギルスは理緒に頼まれて理緒が父から持たせられた武器を

参考にオリジナルの武器の開発をしている。

それが終わると、少しだけ外に出る。



外に出て、世界樹の下に来ると、動物達やこの島に残った精霊がやってきて

3人にすり寄って来て、持ってきたパンのかけらをねだったり、熟した果実を置いていく。


精霊たちは、美しい歌を歌う。

理緒が息苦しくなってくると、再び部屋に戻って昼食を取った後、ギルスにいろいろなことを習う。

ギルスは口調は乱暴だが、大神官だけあり博識なのだ。

その後、ゼスト・マーシェ・アリとお茶を飲み、部屋の家具を動かして

デュアスと鍛錬に汗を流す。



その後、夕食を取り、早めに就寝。理緒は生活のスタイルを変えることはない。

そして、理緒の傍には影のようにデュアスが寄り添う。

理緒とデュアスの繋がりは以前に比べてとても深くなって、

理緒がデュアスに遠慮をすることは無くなった。

さすがに人前でベタベタはしないが、この2人今でも、同じベッドに眠っている。


それが理緒にとってもデュアスに取っても当たり前のことで、

周りの者も、それを受け入れるようになった。



そして、世界樹から戻って来て1年の歳月が流れ

リタニア王国でたくさんの赤ちゃんが産声をあげ始めた頃、

理緒は、以前のように生活ができるようになった。



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