ルーレンの夜明け

       第45話 目覚め

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デュアスは食事を取ると再び繭の中に戻った。

世界樹の花が咲いた今、理緒にも何か変化があると思ったからだ。

すると、泉の横に横たわっている理緒の頬に

かすかに赤みがさしている。


「リオ・・・リオ・・・。」

デュアスが優しく声を掛けると理緒がゆっくりと目を覚ました。


「う・・・ん・・デュアス・・・疲れた。休ませて・・・。」

理緒はそう言うと寝返りを打ってそのまますーすー寝息をたてはじめた。

デュアスは理緒の横に横になると、すっぽりと理緒を抱きかかえ

自分も目を閉じた。





「良く寝たかも〜〜〜。」理緒はそう小さく呟きながら目を覚ました。

「リオ・・・?」心配そうなデュアスの姿が目に映る。

「デュアス・・久しぶりって感じだな。」



理緒はそう言いながらデュアスの頬を撫でた。

「良かった。無事だとわかっていても良かった。」

デュアスはそう言いながら理緒をぎゅっと抱きしめると、

確かめるように自分と同じ紫色の理緒の瞳を見つめた。


「俺、まだ瞳紫色でしょう?」

「ああ。まだ、外には出れないのか?」

「そうだね。この空間は世界樹と繋がっている。

 どうやら、ここから、世界樹に俺の力を注がなければならないようだ。

 はははっ。自分が霞を食べて生きれるとは思っていなかったよ。」

「おなかはすかないのか?」


「うん。不思議とおなかはすかないんだけど、

 でも力が沸いてこないんだよね。」



「じゃあ、力を出すには・・。」

理緒は、珍しく頬を赤らめてデュアスを見あげた。


「つまり・・・今までと何も変わらないということで・・・。」



デュアスはにっこりと微笑んで理緒のサラサラした髪を撫でると

額と額を摺り寄せて優しい声で言った。

「リオ、遠慮することはない。どうせなら楽しもう。

 今まで反応はあっても、こうリオを抱いているという感じがしなかった。

 俺の愛を全てリオにあげる。」

そう言うと、理緒の頬にたくさんのキスを降らしてゆっくりと押し倒した。

いつもより感情豊かな理緒はデュアスの首にしっかりと腕を巻きつけた。





「それで・・張り切ってそんなに疲れ果てたということか?」

ギルスは、疲れきった顔で食事をして薬湯を飲んでいるデュアスに言った。

「ああ。あの繭の中の理緒はいつも以上に感情豊かで可愛いんだ。」

「ある意味。見たいような、見たくないようなだな。」



ギルスはそう言いながら、薬湯のお代わりを淹れて差し出した。

「俺は、実のところ、誰か他の騎士が現れるのを怖れていた。

 しかし、今は早く現れて欲しいと切実に思う。」

デュアスはそう呟くと寝椅子に横になり目を閉じた。




ギルスは、戸棚から毛布を取り出すとデュアスに掛け、

「デュアス、リオを抱くということはリオの気や力が騎士の体をめぐると

 いうことだ。その証拠にオーラが金色になっている。

 これが、神掛かるということなのだな。まあ。頑張れよ。」

と言うと、部屋を出て薬草を摘みに外に出た。





その頃、泉の傍で目を覚ました理緒は自分の痩せた体を見て

ショックを受けていた。

「嘘だろ!!腹筋が無い。」



実は、ここの所トレーニングをしていなかったので

割れていた腹筋も姿を隠し、指たて伏せをしても

以前のように調子がでない。

「うわぁ。これじゃ、ますます子ども扱いされるぞぉ。

 やばい!おしっ。こうしちゃいられない。」

理緒はそう言いながらいつもやっていたストレッチを始めた。



そして俄然やる気になった理緒がこの繭の中の空間を広げ、

鍛錬にまで付き合うことになったデュアスがついに繭の外で倒れ、

ギルスに手紙で怒られることになるのだった。




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