ルーレンの夜明け

       第40話 祝福されし国

本文へジャンプ



その数週間後、王城の前の広場には

数多くの人が集っていた。

久しぶりに王が人前に姿を現すのと

化身がリタニア王国出身の騎士を伴って現れるのを

見たくて国中より本当にたくさんの人が来た。


特に、数日前から数度に渡り、化身がリタニア国中の闇を

退けたので地方からも多くの者が王都に集り、

広場は元より、それに続く路地も一目姿を見ようと思う人で溢れた。


また、数日前に権力をかざしていた貴族の多くが何らかの処分を受け、

貴族の中には幽閉と言われるこの国で一番の極刑を受けたものがいた。

それと同時に新しい議会制度と法制度も導入されたことも

人々の関心を集めた。



王城の鐘楼の鐘が鳴り止むとバルコニーに王が理緒を伴って現れた。

その後ろには瓜二つの容姿の皇太子リュアスとデュアスが現れる。

皆はその容姿に驚き声を失った。

この国で銀髪にアメジスト色の目は王族しかいない。

王は、静かに魔術が掛けられた石の前に進みでた。

どうやらこの石は魔術で広場の人々に声を届けることができるように

作られているらしい。



「国民の皆様。今日はこの国にとって特別な日になりました。

 そして、私は皆様の前で懺悔をしなければなりません。


 私はかつて正妃を迎えました。私は彼女を尊敬し、そして

 皇太子リュアスを授かりました。


 それと同時期に私はある女性と出会い、その者に恋を致し

 妾妃になるように請いました。彼女はそれを受諾し、

 その夜に結ばれました。


 しかし、彼女は貴族の陰謀に巻き込まれ子供を産み

 死んで行きました。その子は様々な困難を経て、

 化身様にめぐりあい騎士に選ばれました。


 ここにもう1人の私の息子を紹介致します。

 デュアス・ディ・ヴァランいや今は

 デュアス・リィ・リタニア、

 化身様を支え、化身様とともに我が国の行く末を見守る

 力強い守護騎士です。」


そう言うと、王はデュアスに自分のそばに来るように合図した。

民はしばらく静かに聞いていたがデュアスが前に出ると

大きな拍手をしはじめ、広場が拍手と歓声で包まれた。



その後、王は化身である理緒を称え理緒が前に進み出ると

歓声と拍手もより一層大きくなった。


理緒も嬉しそうに皆に手を振った。

それと同時に理緒とデュアスの体が金色に光り

その光がそこにいた人々に注ぎ、そして薄い光となり

リタニアの大地を覆い始めた。



「ああ。化身様の祝福だ。」

皆は口々にそう言ってより一層歓声が大きくなった。

これで、この国は闇に侵されることは無い。

人々の心に明るい光が灯った瞬間だった。

王が手をあげて歓声を制すると言った。

「化身様の祝福を戴いてこの国の未来は明るい

 ものとなりました。皆で一緒に作って行きましょう。

 明るい未来。そして皆が愛することができる国に。」

王がそう言うと、皆が歓声をあげながら拍手をした。

「リタニア王国ばんざーい!!」という声も聞こえる。

「この国は大丈夫だね。きっと。」

理緒はそう言ってデュアスに微笑みかけると

デュアスも嬉しそうに頷いた。


2人が視ている未来の映像には明るく手を振る人々がいた。




その夜神殿に帰り、久しぶりにデュアスとギルスと共に

夕食を食べた。

「やっぱり、デュアスがそばにいるとほっとするんだよね。」

理緒が久しぶりのご馳走を頬張りながら言うと

デュアスは嬉しそうに微笑んで言った。


「そう言ってもらえると、嬉しい。

 皇太子殿も頑張っておられたようだが・・・。」


「うん。あの闇の町の一件以来人が変わったように

 積極的になったんだよ。勉強も良くするし、

 王都に出て庶民とも気軽に話をするようになったものね。」

理緒が言うとギルスも頷いて言った。

「ああ。良く頑張ったと思うぞ。

 ただでさえも、リオのスケジュールについていくのは

 大変だからな。」


「何で、俺?」


「おいおい。朝も早くからぎっちり予定がつまって

 休憩の時間すら鍛錬やら勉強やら王都視察に

 時間を割いているやつがそういうか?」

「俺は、ゆっくりしているより多少忙しいほうが性に

 あっている。」

理緒は頬を膨らませて言った。


「まあ。体調には気をつけろよ。」

デュアスが心配そうに言うと理緒はにっこりと微笑んで言った。

「大丈夫。体力には自信があるから。」

その夜は、ひさしぶりに遅くまで和やかな時間を過ごしたのだった。




 BACK  NEXT 

 Copyright(c) 2007-2010 Jua Kagami all rights reserved.