ルーレンの夜明け

       第37話 始 動

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「リオ?」

「デュアス?」

2人は驚いたように顔を見あわせた。

理緒はゆっくりとベッドに座りなおした。

「今、デュアスに会いたいと思っていたんだ。

 それがもしかして?」

「リオ、俺も会いたかった。」

デュアスはそう言うと跪いて理緒の手の甲に騎士のキスをした。



すると不思議と安心した気持ちになるのだった。

「じゃあ、元に戻るように念じれば・・・。」

理緒はそう言って元の部屋に戻るように念じるとデュアスが消えた。



すぐにまた近くに来るように念じるとデュアスが現れた。

「リオ、せめて呼び寄せるとき一言あったほうが嬉しいが・・・。」

現れたデュアスがそう言うと理緒がにっこり微笑みながら言った。

「デュアスも念じるとこちらに来れるんじゃないかな?

 後、今言ったように離れていても会話できるかもしれない。

 とりあえず、元の部屋に戻るように念じてみて。」


理緒がそう言うとデュアスは頷いて元の部屋に戻るように念じると同時に姿を消した。

理緒は、頭の中でデュアスに呼びかけた。

・・・デュアス・・・デュアス・・・

・・・リオ、こちらの部屋に戻った・・・

・・・じゃあ、またこっちに来て・・・


理緒が言うのと同時にデュアスが理緒の前に現れた。

「すごいな。これでいつも会話できる。」

理緒は嬉しそうにデュアスを見あげるとデュアスも微笑んで頷いた。

2人は夜更けまでこれからの話をした。




城に戻ったデュアスは少しだけ休むと隣にある衣装室でわりと質素で

動きやすい服に着替えてから部屋を出た。

すぐに部屋のすぐ外に控えていた衛兵が後ろにつく。

「皇太子殿下。どちらへ?」

「城内の兵士の鍛錬場はどこだったかな?」

「こちらでございます。」

鍛錬場につくとそこには数人の兵士が朝の鍛錬をしていた。

「皇太子殿下?」兵士達は驚いたようにデュアスを見つめた。

「化身様に諭されて、以前のようではいけないと思ったのだ。

 朝の鍛錬に参加してよいか?」

デュアスがそう言うとそこにいた兵士達は嬉しそうに頷いた。

デュアスは、その日一日こうして優秀な者に教えを請い、

皇太子の為に超過密スケジュールを組んだのだった。


「へえ。さすがにこの街は大きいね。」

朝食の後、ギルスに変装の魔法をかけてもらった理緒は

同じく変装しているリュアスにそう話しかけた。

「ああ。この国で一番大きな都市だからな。」

リュアスはそう言いながら街で一番のバザールに理緒を案内した。

このバザールは、この街のありとあらゆる商売施設が集まり


食料品から日常雑貨、交通の手段である動物、そして少し離れた場所に

遊郭までそろっている。


・・・バザールと言ってもこうして健全な場所に立っているのは不思議な感じがするな・・・

「おっちゃん。大きいとこちょうだい!!」

そんな理緒の声でそちらを見ると出店で串焼きを売っている男に話しかけている。

・・・よくもまあ、元気なことで・・・

朝早く、ギルスに叩き起こされ、理緒と剣の鍛錬でボロボロにされ、

その後、理緒の居間に戻って理緒にこの国についていろいろな事を聞かれた。

その中にはリュアスが答えれない質問も多々含まれており

朝食の席でギルスがその質問にすらすら答え、リュアスに嫌味を言ったので

地味にショックを受けた。

本当は朝食後ゆっくりと寝台で休みたいところだったが

こうして、理緒に街へ引っ張り出されたのだった。


店の男は理緒が指差した大きな肉の串焼きに大きな刷毛でソースをつけて

理緒に渡した。

「坊主!今日は出血大サービスだ。なんと言ってもこの王都で

 青空が拝めるようになったからな。

 さすが化身様だぜ。」


リュアスが慌てて金を男に差し出すと男はリュアスにも大きな串焼きを渡した。

リュアスは恐る恐るその肉を齧った。

「うまい。」

肉汁が口の中に広がる。


「リュアス!もっと豪快に食えよ。」

理緒はそう言うとワイルドに串焼きにかぶりついて言った。

「うーーん。うまい!やっぱり男は肉だぜ。」

リュアスも理緒の真似をして大きな口を開けて肉にかぶりついた。


なるほど、城で出る高級な肉よりおいしく感じた。

2人はしばらく夢中で肉を頬張った。そして顔を見合わせると

お互いの顔がソースで汚れているのを見てぷっと吹き出した。

リュアスは久しぶりに声を出して笑った気がした。




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