ルーレンの夜明け

       第34話 正式な対面

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「綺麗です。」

薄い布を複雑に巻きつけたような衣装と

見事な銀細工の飾りをつけた理緒をみてマーシェが嬉しそうに言った。

「動きにくい・・。」

理緒は眉を下げて言った。


「いけません。これから国王陛下との対面なのです。

 これでも、装飾品を減らしたのですよ。」

いつも下手に出るマーシェがいつに無く強気だ。

「わかった。わかった。まだ、女装で無かっただけましだ。」

理緒はそう言いながら鏡に映っている自分を見つめた。



ノックの音と共にデュアスとギルスが入ってきた。

デュアスは、明るい青の式典用の軍服姿で腰に

日本刀と自分の愛用の剣を差している。

ギルスは水色の神官用の服を着ている。

その服も豪華に刺繍が入っていて美しい。

よくみるとマーシェも薄い水色の服を着ている。



「なんか、皆かっこいいね。」

理緒が言うと皆が照れたように微笑んだ。

主神殿の方へ歩いて行くと多くの神官が理緒に深々と頭を下げた。


主神殿のホールに行くと、デュアスがにっこりと微笑んで理緒を見た。

「何?その満面の笑みは?」理緒が動揺したようにデュアスをみあげると

「ここから、闇の干渉がありますので、失礼。」デュアスはそう言うと

理緒の体を軽々と持ち上げて言った。



「リオ、首にしっかりしがみついていてください。

 闇の気配が強いなら刀を使いますので。

 あなたにできることはこれしかありません。」

理緒の先手を打ってデュアスはきっぱりとそう言い、片手を腰の刀にそえた。

理緒は頷いてデュアスの首に腕を回して小声で言った。

「もし、刀を使うなら全力でしがみつくから両手を使っても大丈夫だ。」

デュアスはその言葉に小さくうなずいた。


神官が扉を開けると、黒い闇が向こうからせまって来た。

デュアスは片手で刀を抜き、その闇の方に向けると闇が2つに分け、道が出来た。


ギルスとデュアスは顔を見合わせて頷くとその道を駆け抜けた。

理緒はデュアスの首に必死にしがみつく。

王宮の門を潜り、橋を越え城の門をくぐり城の前の広場に入ると

ギルスが結界を張り、デュアスから理緒を抱き寄せると

デュアスは刀を大きく振りかぶった。


すると刀の先から眩しい光が溢れ闇を外に押し出した。

それと同時に衛兵が城の門を閉めた。

ギルスが理緒を下ろし、理緒の服を整え、デュアスが理緒の後ろに控えるのを待つと

衛兵が大きく扉を開いた。



そこには、国王のデアスとその後ろに皇太子が立って待っていた。

その後ろに大臣や側近達が立っていた。

デアスは王冠をかぶり正装をしていて理緒の姿を見るとゆっくりと膝をついて

礼をした。他の者も同様にする。

「化身様。再びこの世界に現れる日を一日千秋の想いでお待ちしておりました。

 どうか、ごゆっくりこの国でお過ごしください。」



「我は、ただの化身。一国の王ともいう方が膝を折る必要などありません。

 どうか頭をおあげください。また、この国への歓迎の気持ち確かに

 受け取りました。」理緒はギルスに教えられたとおり言った。



デアスは立ちあがり、理緒を案内しながら城の中に入り、

大きめで豪華な部屋に入った。


・・・なんだか、テレビで見た会談風景みたいだ。・・・

理緒が心の中で思ったように上座に2脚の豪華な椅子があり

デアスと理緒がそこに座ると、後ろに従っていた人々もそれぞれ椅子に座った。


ギルスとデュアスも理緒の少し後ろの椅子に控えた。

すると、デアスの側近が進み出て理緒にデアス以外の人の紹介をはじめた。



皇太子から大臣まで紹介すると大臣の中の1人の男が言った。

「恐れ多くとも、化身様の騎士の姿形はこの国では異形。

 そのような者を騎士にしてよろしいのでしょうか?」

「異形とは?」

「この国では、銀髪に紫色の目は王族が纏う色です。

 王族でない者でそれを纏う者は異形です。

 特に紫の目を持つ者はいるはずがありません。」



「それなら。」理緒が静かに下を向いて言った。

「私の目も異形か?」そう言いながら顔をあげると

理緒の目も紫になっていた。



その大臣は目を見開いて驚いた顔で理緒を見つめた。

そして、理緒は目の力を使った。

この目は未来も見えるが過去も見える。



理緒とデュアスの頭を早送りのようにこの男の人生が映し出された。

そして、その中でこの男は数人の仲間とデュアスの祖父を落としいれ、

デュアスの母やその他の善良な者を手に掛けた者だと理解し、

同時にその男の仲間がその後ろに何人も控えていることに落胆を覚えた。




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