ルーレンの夜明け

       第30話 紫の騎士

本文へジャンプ



映像がデュアスに会ったところで途切れると、今度は

美しい女の人が嬉しそうに小さな赤ちゃんを抱いている映像が映る。


女の人の後ろにいる男を見てデュアスは静かに言った。

「あの赤ん坊は、俺だ。あの男は俺の父だ。」



理緒はその男の悲しそうな顔が妙に印象に残った。

次に画面が変わると、女が嬉しそうに赤ちゃんを抱きながら

庭で花を見ていた。すると、女は外の方へ目を向けると

男数名が門から入って来て、いきなり女に向かって剣で切りつけた。


女はものすごい速さで屋敷に入って行き、鍵を掛けると

まっすぐと奥の部屋に向かった。

そこには、デュアスの父がいて女は父に赤ちゃんを手渡すと急に

血を吐いて倒れた。



「刀に毒が塗っていたのか・・・。」デュアスが震える声で言った。

デュアスの父は机から金が入っているらしい袋を取り出し奥の隠し扉から

外に出ると屋敷は火に包まれていた。


それから、デュアスの父は赤ん坊を抱いて隠れるように

国外への船に乗ったらしい。


そして、デュアスが5歳になると全寮制の学園に預けられた。

全寮制の学園のある国はローレンシャと言い、

この国は中立国を宣言しており国全体が学園都市だそうだ。

デュアスはここで初等科教育と

剣や戦法・魔法初級の専門分野を学んだ。


しかし、後1年で卒業と言う時、デュアスの父が病で倒れ死亡し、

その病床で懐かしそうにリタニア王国の話をしたので、

デュアスは父の遺骨の一部を持ってこの国に来た。


しかし、デュアスの眼と髪の色が王族と同じだったので

国境でいきなり拘束され、そのまま王宮に護送され

王宮で、皇太子の影になるか永久的にこの国を追放になるか

選ばされ、デュアスは影の道を選んだ。


そして、様々な教育を受け、数ヶ月後には皇太子に引き合わされ

影の仕事をしはじめた。


しかし、その数ヵ月後には皇太子の我侭のせいで

重要な会議や交渉の席にも出なくてはならなくなり、

かなり無理な仕事をしていたようだ。


そして、王の直々の頼みで山賊討伐に同行し、理緒に会った。

映像が終わると、理緒とデュアスが光りだす。



「なんなんだ・・?」理緒が戸惑ったように言うと

デュアスも困惑した表情を浮かべた。

そうしているうちに理緒の体とデュアスの体が重なり始め、

デュアスの体が理緒の体に溶けはじめた。



光が収まると理緒1人になる。

「デュアス?」理緒が言うとデュアスの声が頭に響いた。

・・・リオ・・・俺は一緒にいる。・・・


理緒は、自分の体に手をやり呟いた。

「何だか、体に力が溢れる。」

その時、別の声がした。


・・・力は武器になる。・・・

・・・紫の騎士・・・お前は主の何になりたいのですか・・・。

頭の中からデュアスの声が聞こえる。



・・・俺はリオの剣となり盾となりたい・・・

・・・2つは無理です。剣か盾なら?・・・

・・・剣になる。・・・

デュアスの声がまた響く。



・・・理緒、紫の騎士は剣です。剣を思い浮かべるのです・・・。

理緒は一生懸命に剣を思い浮かべた。

何故だかデュアスには日本刀が合うような気がした。

すると理緒の目の前に美しい日本刀が現れた。



・・・・紫の騎士を思いながらその刀に力を移すのです。・・・

理緒は集中して力を移動させるイメージを持った。

すると、目の前に再び、デュアスが現れた。

・・・紫の騎士・・・その刀を取り、理緒の手を握り

肉体に戻るようイメージするのです。・・・



デュアスはその刀を取り、理緒の手を握った。



「あの・・?俺の中にいる神官達ですよね?」

理緒がそう話しかけた。

・・・理緒、ようやく1人の騎士を決めたので声が届くようになったのです。・・・

・・・私達は見守っておりますよ。・・・

・・・力の使い方を学びなさい。・・・

・・・とにかく、体には十分に気をつけなさい。・・・

・・・穢れには気をつけるのですよ。力がつくといつでも会話を交わせるのですから・・・

そう5人の声が聞こえるのと同時に2人の体は金色に光った。





−少し前 神殿の理緒の寝室−

「だから、神官はしもべなのか?夕方に部屋に大量の水桶や火鉢が運ばれたり

 妙に部屋に予備のシーツが多い意味がよくわかった。」

ギルスは疲れたように言いながら、理緒の部屋との境の扉を開けると

寝台には理緒だけが艶かしい姿で横たわっていた。

ギルスの部屋は理緒の寝室の声が筒抜けなのである。

つまりは、そういう声もだ・・・。



火鉢から焼かれた石を水桶に落とすと

水はみるみる間にあたたかくなる。

その湯で布を絞り、理緒の体を丁寧に拭いていく。

その後、理緒を抱えて長椅子に移し寝台のシーツを変え、理緒を寝かせた。



次の瞬間理緒の隣に裸のデュアスが浮かび上がった。

手にはしっかりと刀を持っている。

「ひょっとして・・こいつの世話もか・・・?」

ギルスはどっと疲れたようにそう呟いた。




 BACK  NEXT 

 Copyright(c) 2007-2010 Jua Kagami all rights reserved.