ルーレンの夜明け

       第25話 騎士になる方法

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「マーシェ、すごい朝食だね。」

理緒はテーブルの上に並んだ果物を見ながら言った。

「これは全部、化身様に食べていただきたいと

 供物として神殿に捧げられた物なのですよ。」

マーシェはそう言いながら手際よく3人分の朝食を並べる。



「皆、何を望んでいるんだろう?」

理緒がポツリとそう漏らすとギルスが笑いながら言った。

「難しいことは考えないで、今は食え。」



理緒はその言葉に頷いて目の前の白いパンを頬張って

にっこりと微笑んだ。温かいパンはおいしくて

果物はとてもみずみずしい。


そんな理緒を見て安心したようにデュアスとギルスも食事を始めた。

朝食が終わるとギルスが理緒に言った。



「リオがルーレンのことを知りたいということはわかった。

 しかし、この神殿にいる限り化身としての仕事もある。

 だから、まずは化身を支える人の話をしようと思う。」


「化身を支える人?」

「ああ。一般に5人の騎士と神官とは言われているが実際はそれだけではない。

 だからまずはその話からしようと思う。」

「そもそも5人の騎士と神官って何?」

「私も伝承しか知らないのだが、騎士と言うのはそもそも世界樹と一蓮托生だと言われている。

 だから、騎士となった者は化身と心で繋がると言われている。

 そして騎士となる儀式は古い文献で伝えられている。

 儀式を終えた者は化身から武器を授かり、その武器で化身を守るらしい。」

「儀式?」


「ああ。まずは誓願の儀。これは聖水を口に含み化身に誓いの接吻をする。

 デュアスはこれは終わっているな。」



「せっぷん・・・って!え〜〜〜終わっているって何だよ。それ。」

理緒は机を叩いて立ちあがって言った。



「すまない。リオ。力が暴走した時、何とか助けたいと夢中だったのだ。」

デュアスが言うと理緒は首をプルプル振って言った。

「あの時なんだ?だからデュアスが迎えにきてくれたんだ。」


「ああ、騎士だけがどこにいてもすぐにに化身の傍に行くことができると言われている。」

「そう?でも、俺は自分の身は自分で守れるよ。デュアスに剣だって習っているし。」


「リオ、それは違う。この前力が暴走したのはなぜかわかるか?」

「わからない。それにあの闇は何なの?」


「もともと、世界樹は我らの魂が帰る場所なのだ。

 我らの魂は世界樹に取り込まれ、そこで浄化されると言われている。


 しかし、世界樹の化身が殺され、世界樹が枯れ朽ち果てた。

 そうなると魂の行き場がない。神殿の神官達は何とか現状を打破しようと、

 神殿の一角に建物を建て、魂を眠らせた。しかし、それは魂を眠らせるだけで

 根本的な解決策にはならなかった。そして、当然神殿に預かる魂というのは

 金がかかる。だから、溢れる魂がたくさん出たのだ。


 そして、それらの魂は癒えることなくルーレンを彷徨い、魂であることさえ

 忘れてしまい、他の魂と一緒になり闇を作った。」


「それで、何で俺が襲われることになる?」

「リオは世界樹の化身。たぶんあの闇は清い魂であるリオを羨ましく思って襲うのだろう。

 そして闇の心はリオを取り込もうとする。

 この前は、たまたま聖鳥マイラがいたから良かったのだが・・・。

 だから、デュアスと早く契約の儀を結びデュアスに武器を渡せ。」


「ちょっと待ってよ。どうすると武器が出てくるんだよ。」

「残念だが、世界樹の化身の書物はほとんどが残っていないんだ。

 俺も大神官の嗜みとして騎士と神官の世界樹との契約のしかたを知っているだけで

 世界樹がどうやって武器を作るのか知らない。」



「じゃあ、どうやってデュアスと契約するんだ?」

理緒が聞くとギルスは大真面目な顔をして言った。


「たぶん、すごく驚くと思う。さっきの接吻で驚いたからな。」

「いや、聞かないと先に進まないだろう?」

理緒が言うとギルスはにこやかに微笑んで言った。



「聞いて驚け。世界樹との契約は、世界樹の中に騎士の一部を取り込み

 一体になることと言われている。」

「何それ?」理緒は不思議そうに首を傾げた。

デュアスも理解不可能な顔をしている。


ギルスは口元だけニヤリと微笑みながら言った。

「要するに、デュアスに抱かれろということだ。」

理緒とデュアスは文字通り固まった。



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