ルーレンの夜明け

       第20話 王都入り

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「リオン様。本当にこのような神官の馬車で王都入りしてよろしいのですか?

 化身様でしたら、堂々とマイラに乗られて王都入りなさってもよろしかったのに。」

「マーシェ。俺はありのままのこの国を見ておきたいんだ。

 それにデュアスのことも、何だか気になるんだ。」


理緒は、窓にやんわりと掛けられた薄布を少しめくって冴えない風貌に変装して

マイラに乗ったデュアスを見て言った。


この馬車は、王都のはずれまで迎えに来た神殿の神官用の馬車で

そこまでは、マーシェは隊長に理緒はデュアスのマイラに乗せられて飛んできた。



あの後、山賊のアジトから軍のテントまで戻った頃には既に3日がたっていた。

表面上は普通を装っていた、隊長とマーシェだったが次の日に赤々とした

太陽を見て、理緒が何かをしたと悟って祈りながら帰りを待っていてくれた。


山賊の男達に守られるように現れた理緒に泣き腫らした赤い目で駆け寄ったマーシェは

理緒を連れて自分のテントに行くと休むように薬湯を飲ませて眠らせた。


理緒が起きた時には、デュアスは元の冴えない風貌に変装して、

全てを理緒が望んだように説明してくれたおかげで、軍隊は王都に戻ることになった。



初め、山賊の頭は、自分がやってきた全ての罪を償いに王都に向かうと話した。

頭がそう言うとその周りの男達も我も我もと言う。


この国は、盗みなどの犯罪は殺人の次に厳しい罰を与えられ、この山賊達の場合は

死罪になるかもしれないとデュアスとギルスに説明されていた理緒は、何とか生存の道を考えた。




理緒はデュアスとギルスと相談して、理緒とデュアスが森の中で山賊にさらわれたところを

元々付近で細々と生活していた男達に助けられ、山賊を一掃してくれた。と隊長に説明することにした。


ギルスは、理緒達が山賊のアジトを後にする時、王都に先に行ってしかるべき説明をして

待っていると言ってくれた。



デュアスの説明を聞いた隊長は、山賊の男達が偽で作った塚を確認して手をあわせ、

山賊のアジトに行って、頭に山賊の討伐とマイラの保護のお礼を言い、

王都の外の治安の為に協力してほしいと申し入れた。



山賊の頭はそれを快諾し、他の男達と一緒に軍籍につくために

部隊に同行している。




理緒は、それよりもマーシェが初めてデュアスの姿を見た時に

驚いた顔をしたのが気になっていた。


しかし、急に王都に戻ることになりマーシェも色々と忙しかったので

聞くチャンスを逃していたのだった。



「ねえ。マーシェ。なんで、デュアスを初めて見たとき驚いたの?」

マーシェは理緒の側に顔を寄せて小声で話し出した。



「リオン様、この世界で唯一の色は黒眼黒髪です。その次に稀とされているのは

 各王族が纏う色、この国では銀髪に紫の眼は王と王子だけの色なのです。

 それを纏っておられるので、私は驚いたのです。」

「マーシェは、王や王子と会ったことがあるの。」

「遠目でご尊顔を拝んだことはあります。本当に美しい銀髪でしたよ。

 あっ。しかし、リオン様には敵いませんよ。

 その黒髪は本当に美しゅうございます。」

マーシェの言葉を聞いた理緒は、そのまま何かを考え込んでいた。




王都に入ると、馬車は部隊と離れて別の方角へ曲がった。

デュアスは馬車の警護なので、横についてきている。

「そろそろ、神殿ですね。」



マーシェは何個もの塔を見ながらそう言った。

神殿と言われる建物は中世の修道院のような建物で何個もの尖塔が

そびえ立っていた。

「マーシェ。ところで、俺はどうしたら良いの?」

理緒が聞くとマーシェはあきらかに眼を見開いて固まった。



「あっ。そう言えば・・・神殿に何も知らせておりませんでした。

 とにかく、お連れしなければという思いだけで・・・

 しかし、この神殿はリオン様の神殿ですので大丈夫です。」



・・・どこから来るのか・・この自信は・・・

理緒はそこで溜息をついた。




神殿の前に馬車が止まると、マーシェは驚いたように目を見開いて言った。

「何ででしょう?大神官様が勢ぞろいしております。」

すると、外側から馬車の扉が開いて、1人の男が顔をのぞかせて言った。


「リオン。待っていたぜ。その頭の布を外して来いよ。」

そう言いながらその男はにやっと微笑んだ。



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