ルーレンの夜明け

       第19話 真っ赤な太陽

本文へジャンプ




・・・・私達の護り子・・・・様・・・



理緒は暗闇の中目を覚ました。

辺りは濃い霧のようなもので包まれている。







・・・・寒い・・・・



・・・暗い・・・



・・・・助けてくれ・・・



あらゆる悲しみの声が理緒の耳に聞こえる。






理緒はゆっくりと起きあがると体を起して立ちあがろうとした。



・・・動いてはなりません・・・

理緒の周りに5つの玉が浮かぶ。

・・・ここは結界を張っております・・・

・・・しかし、まだ我らの力も及ばずこの小さな空間だけ・・・・

・・・だから動いてはなりません・・・

・・・あなたを必要とする方が迎えに来ます・・・

・・・我らはいつもあなたとともに・・・

5つの玉から声が聞こえ、理緒が頷くと玉は静かに消えた。



横になっているのも嫌だと思った理緒はそこに体育座りをしていると

その耳からはまだ苦しみの声が聞こえた。



そのままの体勢でいると、時間がたつごとに少しだけ霧が晴れてきた。

今度は周りは先ほどいた砂漠ながら小さな畑には

野菜がなり、人々が微笑み合っている。

「なんだか楽しそうだな。」理緒は微笑みながら言った。


それから、いろいろな楽しそうな映像を理緒は見ていた。




すると、急に理緒の隣が紅く光り、

デュアスが現れて「リオン良かった。」と抱きしめられた。

「あっ。デュ・・デュアス?どうしてここに?

 それにその、銀髪!あっ。お・・・俺も元に戻っている。」



緊張感のない理緒にデュアスは一気に脱力したような顔をした。

「リオン?聞こえるかあ〜〜〜?」

その時、妙に軽い口調が聞こえた。



「ギルス?」理緒は不思議そうな顔をして言った。

「ああ、今リオンは、世界樹の意識の中にいる。

 本当の体は魔力が暴走している。

 今から俺の魔力で道を作るからデュアスに抱かれて戻って来い。」

「抱かれてって・・。」



「少しでも本体の体力を温存するためだ。

 本体に戻ったら深く深呼吸をして

 エネルギーを体の方に戻すように意識するんだ。

 この時、デュアスの声を聞け。」

「わかった。」理緒が言うと同時に理緒の体が浮いた。



・・・うわっ。この体勢恥ずかしすぎる・・・

・・・ていうか、俺たっぱあるのにこんなに軽々と

お姫様だっこされていいのか?・・・・

・・・ちっ。男として屈辱を感じる。・・・



頭の中でもんもんと考えているとデュアスが耳元でくすっと笑った。

「リオン。行くぞ。」

デュアスが動くと同時に2人を明るい光が包む。




それと同時に理緒はどうやら元の体に戻ったらしい。

やたらと体が熱くて重い。

目を開けて起きあがろうとするが体が言うことをきかない。



「リオン、ゆっくり息を吸って呼吸をするんだ。」

デュアスの声が聞こえた。

理緒はゆっくりと息を吸って、心を無にするように心がけた。

すると、次第に体の中の熱さがおさまっていくように感じた。

「そうだ。その調子だ。」

デュアスの声が耳元でするので、何だか安心できる。

少しずつ呼吸を整えていき、両手をデュアスと誰かが握ってくれているのに

気がついた。



理緒はそのままゆっくりと目を開けると、デュアスの心配そうな顔と

不敵な笑みをたたえた髭もじゃなギルスの顔が見えた。

理緒は、起きあがろうとしたが、体が重くて起きあがれない。

「大丈夫か?」ギルスがそう言って手から緑色の光を出すと

理緒の額にあてた。

すると、少しだけ力が戻ってくるような気がした。





「頭・・・外が、外が・・・。」

見張りをしていたであろう数人の男が大声をあげながら中庭に入ってきた。

それと同時に大きな鳥の鳴き声が聞こえ、理緒のそばに何羽もの

マイラが空から舞い降りてきた。

「何がおきたんだ?襲撃か?」頭が立ちあがって言った。


「砂漠が消えました。俺ら夢を見ているのか・・・。」

男が大声で言う。

男達は我先に外に走り出た。



「嘘だろう?」誰かが小さく呟いた。

そこは、青々とした草原が広がり、そしてその向こうには大きな

赤い太陽が見えた。

男達は呆然と太陽を見つめていた。




理緒はゆっくりと体を起こすと、テーブルを降りた。

「何があったんだ?」そう呟いて歩こうとするがふらふらしている。

「無理するな。」デュアスがそう言って理緒を抱きあげようとしたが

理緒は首を振って言った。


「デュアス、俺は自分の足で歩きたい。手を貸してくれるならよろけないように

 支えてくれるだけでいいんだ。」

理緒がそう言うと、ギルスも逆の方に回って言った。

「リオン、俺も支えてやる。」



3人が建物の外に出て、砂漠だったはずのところに草原が見えると

デュアスは驚きに目を見開き、ギルスも驚いた様子で小さな口笛を吹いた。

そして、理緒の姿を見た山賊達は我先にと膝をつき、深々と頭を垂れた。




 BACK  NEXT 

 Copyright(c) 2007-2010 Jua Kagami all rights reserved.