ルーレンの夜明け

       第17話 神官という武器屋

本文へジャンプ




こざっぱりとした部屋に案内された2人は

小さな椅子に腰を下ろした。

「作物も出来ない。森は砂漠化が進む。となると

 山賊になるという道しか無かったのか。」

デュアスが溜息をつきながら言った。


「山賊達は商人の命までは奪っていなかったの?」

理緒が聞くとデュアスが頷いて言った。

「そうだな。奴等の常套手段は商人の積み荷を夜中に奪う。

 山賊と商人が揉み合いになって怪我をしたと言う話は聞くが

 山賊に殺されたと言う話は聞いてない。

 だから王も討伐することに躊躇されていたのだ。」

「だから、あの軍隊・・か・・・。」

理緒はそう言いながら立ちあがった。

「ちょっと、その辺を散歩してくる。

 デュアスのキャラだとあまり出かける事もできないだろう。

 少し休んでいてくれ。」



「あっ・・・。リオン・・・。おいっ。待っ・・・・。」

デュアスが止める間もなく、理緒は扉を開けて外にでて、

小走りで部屋を離れた。

すると先ほど案内された通路を通って中庭に出た。



そこには数人の男達がお茶を飲みながら寛いでいて、

理緒を見て驚いたような顔をした。

理緒は知らないがルーレンで10歳くらいの子供は数えるほどしかいないのだ。



中庭の奥には大きな檻があり、その前では1人の男が座り込んで

武器を研いでいた。



理緒が近付くと男はひげもじゃの顔をあげてゆっくりと口を開いた。

「迷ってここにきた坊主か?探検でもしていたのか?」

理緒は頷いてその男の横に座って子供のような幼い口調で男に話しかけた。



「おじさん、ここで何してるの?」

「お・・・おじさんか・・・?」男はそう呟くと刃を磨きながら言った。

「マイラは聖なる鳥だからな。だから、無闇に殺されないようにここで

 武器を作りながら見張っているんだ。」

理緒は男の肩越しに大きな檻に閉じ込められているダチョウのような鳥を見つめた。



「あれが、マイラ?」

「ああ。坊主あまり見たことが無いのか?

 そうか、絵本やらではマイラは美しい鳥だとされているからな。

 でも、本当のマイラは茶色だ。そしてその中でも黒っぽいマイラは

 軍隊にも使われていてこれに乗ったり荷物を運んだりする。」

「マイラも貴重なの?」



「ああ、この国の王がマイラを保護して飼育していたから軍には使われているが

 ルーレン全体で言えばこの鳥は貴重だろうな。」

理緒は檻に近付くとマイラは一列に横に並んで理緒にお辞儀をした。

「珍しいこともあるな。マイラ達は自分の運命を知っているように

 ここのところ騒がしかったのだが。」

男は驚いたように目を見開いて言う横で理緒は、優雅にマイラにお辞儀を返して

男の手元を見て言った。



「ずいぶん、器用だね。おじさんは武器を作る人?」

「あははっ。俺は神官だよ。王都からここに来たんだ。

 でも、生きるためにここではこうして武器を作っているんだ。

 夕食後は礼拝は行うんだ。坊主も参加しろよ。」


男はそう言うと理緒の髪をグシャグシャ撫でた。

「すごいね。武器って何でも作るんだ。」

理緒が言うと男は笑いながら言った。

「ああ。飛び道具から火薬を使う武器までひととおり作れるようになった。

 でも、坊主には早いと思うぞ。」

「坊主ってやめてよ。リオンって呼んで。おじさんは?」

「おじさんはやめろよ。おれはギルス。よろしくな。」



男はそう言いながら理緒の頭にポンと手を置いた。

理緒はそこで少しだけギルスと話をして部屋に戻った。

部屋に戻ると、デュアスが「良かった。」と言って理緒の手を握りしめた。

「どうしたの?」理緒が不思議そうに言うとデュアスは

「もう少し、自分の立場を考えてくれ。

 リオンはこの世界の唯一だ。

 ふらふらと一人で散歩に出かけないでくれ。

 それでなくてもここは、敵地なのだから。」

と言った。

「わかった。ありがとう。デュアス。」

理緒は、何だか心配されてくすぐったい様な気分になり微笑んだ。

「リオン。微笑んでもごまかされないぞ。」

デュアスの真剣な口調に理緒はコクコクと頷いた。





 BACK  NEXT 

 Copyright(c) 2007-2010 Jua Kagami all rights reserved.