ルーレンの夜明け

       第16話 山賊のアジト

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砂漠に入り、しばらくそのまま黙々と歩いていた

2人だったが、向こうに岩山が見えてきたところで

そのまま足を止めた。




「あれが?」

理緒が聞くとデュアスは頷いて言った。

「ああ。あれがこの辺の山賊のアジトだ。」

「なんだか、あのアジトの上の空が少し黒ずんで見える。」



理緒が言うとデュアスは何でも無さそうに言った。

「そうか?王都の方がもっと濃い黒色の雲が浮いているが。」

「そうなんだ?じゃあ、これくらい普通なのかな?」

理緒はそう言いながらアジトの方に近寄っていた。



「おいおい。正面から入るのか?」

デュアスがそう言うと理緒は微笑みながら言った。

「変にこそこそ入るより良いんじゃない?

 さっき決めたように俺達は、

 港の町ルアス出身の田舎者で王都の親戚を頼ってきたけれど

 迷ってしまったということにしよう。よろしくね。デュー兄さん」

「わかった。」



アジトの近くに行くと頭を布で隠した男が剣をぎらつかせながら言った。

「お前らは何者だ?」

デュアスは、理緒をかばうように男達の前に出て言った。

「私達は、ルアスから王都に向けて旅をしておるものであります。

 途中獣に襲われ、命からがら逃げてきて道に迷ったところに

 岩山が見えたので弟を休めたいと思ってこちらに来たのであります。」

デュアスは弱々しく強い訛りで言うと、男達は2人の手元を見た。

2人とも砂漠を凄い勢いで歩いてきたので砂ぼこりにまみれ

真っ黒な顔をしており、衣服も庶民が着るような簡素な作りをしている。



「どうやら、本当らしいな。とにかく頭のところに連れて行け。」

1人の男がそう言いながら、道を開けた。

デュアスは理緒の手を握りやはり弱々しい声で、

「リオン、よがったなあ。もう少しで休めれるぞ。」と言った。

理緒も調子を合せて、

「兄さん、よがったあ。」と言う。



男について通路を抜けると、広間のようなところで数人の男と女が

嬉しそうに談笑していた。



「なんか、にぎやかだ〜〜〜ね。おじさん。」

理緒があどけない感じで言うと男は嬉しそうに言った。

「ああ、数日前、頭たちがマイラを生け捕りにしてきたから

 久しぶりに肉にありつけたんだ。」

「マイラって、食べれるのが?」デュアスが弱々しいながらも

驚いた様子で聞くと男は笑いながら言った。

「俺も昔は食べれるものだと思っていなかったさ。

 でも、ここの者は皆飢えていたんだ。

 だから、久しぶりのマイラは御馳走だった。

 それが聖なるマイラで、例え呪われても。」



「呪われる?」理緒は首を小さく傾げて小声で言うと

デュアスが理緒だけに聞こえる小さな声で言った。

「マイラは、世界樹に仕える鳥と言われている。

 だからこの国ではマイラを食べると呪われると言われているんだ。」

「せめて、この土地に数年前のように芋でも植えれると良いのだが・・・。」

2人を案内してくれた男は疲れたように言った。



男は、通路の奥まった部屋にノックをして入ると

その部屋には数人の男がテーブルを囲んでいた。

その中の大柄で目つきが鋭い男が理緒とデュアスを見て立ち上がった。

その風貌は髭もじゃで熊さんみたいだと密かに理緒は思った。

「その者は?」

「何でも、ルアスから王都に向けて旅をしている途中で迷ったそうです。」



理緒達を案内した男がそう説明をすると

「大変だったな。何もないところだが今日はゆっくりと休みな。

 明日は南の方に王都の軍隊がいるはずだから、事情を話して

 一緒に行けばよいぞ。近くまで仲間に案内させよう。」

鋭い目つきの男はそう言うと、理緒の頭をぐしゃぐしゃと撫でながら言った。

「坊主、心細かったろうに偉かったな。今の御馳走はマイラの肉しか無いが

 しっかり力をつけろよ。」

理緒は、その男を見上げながら言った。

「僕らは宿賃もっでねぇーーよ〜〜〜。なあ兄さん。」

「そ〜〜だ〜〜なあ〜〜〜すっぱと荷物無くなったで〜〜〜の〜〜〜。」

デュアスもそう言うと、髭もじゃの頭は笑いながら言った。

「貧乏人から宿賃なんてもらわないさ。とにかくゆっくり休め。おいっ。

 部屋に案内してやれ。がははっ。」

男はそう言いながら大きな手で理緒の頭を撫でて笑った。




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