ルーレンの夜明け

       第15話 砂漠

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「と・・言うことで、デュアス。案内して。

 どうせ、山賊の顔も場所もチェック済みだよね。」

理緒がにっこりと微笑むとデュアスは大きな溜息をついた。


「場所はわかるが、山賊は結構な人数だぞ。

 それを討伐するのか?せめてあいつらを連れていった方が良いんじゃないか?」



「無理でしょ。昨日今日に訓練したからってしょせん付け焼刃だよ。

 それよりも、デュアスと俺でコンパクトに行動したほうが良いでしょ。

 ということより、情報を集めて討伐というのではなく、

 何か良い手立てがあるかもしれないと思うんだ。」

「だから、軍服を脱いで来るように言ったのか。」



「そうだね。それに、この国の上層部の人も討伐とは言っても殺そうとは思っていないのだろう?」

デュアスはその言葉に息を飲み込みながら聞いた。

「何でそう思うんだ。」

「いくら軍制が無いとは言っても、暗殺や諜報部隊はいるだろう?

 それを使わずに軍隊を送っている。しかもあの部隊だ。

 あの部隊には人を殺したことがある者はいないだろう?

 なら、何で軍隊を派遣したかと考えると、山賊を討伐しようとする

 何らかの勢力があって、とりあえず軍を送って解決しようという

 動きを見せようとしたといったところか。」

「よく、見ているな。」

デュアスは、驚いたように言った。



確かに現国王は無駄な争いを嫌い、壁の外と言えこの大陸に渡って来たものが

山賊となったことに心を痛めている。

そうは言っても、自然の恵みが乏しい今の状態では、自国国民の生活を

安定させることでいっぱいいっぱいの状態なのである。



理緒の言うとおり、王都には自国民以外の民族は排除すべきだと唱える者が

多くなり、この派兵はその声を抑える目的があったのだ。

「とにかく、こちらが軍に関係ないとなると山賊もそんなに強硬な手段にはでないと思う。

 だからこれからよろしく。兄さん。」

理緒がそう言いながらにっこりと笑う。

「に・・・にいさん?」



「ほら、デュアスから貸してもらった薬で俺の容姿も同じ茶髪に茶目になったから

 血が繋がっているとしても大丈夫だろう?」

「リオン。貸してもらったって・・・?」デュアスはここで大きなため息をついた。



正しくは、妙な笑顔で体術勝負を賭けでしようと言われて、投げ飛ばされ

薬を強奪されたのだ。

「あんな技があるとは知らなかった。」デュアスはぼそりと言った。

「だって、剣術なら絶対負けるってわかっていたからね。

 それに、デュアス。油断していたよね。」理緒は微笑んで言った。


確かに、まさか自分が投げ飛ばされるなんて考えてもいなかった。

「それのせいで、後1週間くらいしか薬が無いんだぞ。

 リオンなら、魔術を使って目と髪の色を変えることができるだろう?」

理緒は目をパチパチ瞬かせて言った。



「デュアス?魔術ってなんだ?」

「ひょっとして魔術って知らないのか?」

「うん。」

「ルーレンの人間の中には魔力を持つ人間がいる。そして魔力が大きな者は

 学校に通い魔術師になる。」



「ふーーん。デュアスは?」

「俺は剣一筋だ。」

デュアスがそう言った時、前方が急に開けた。




「砂漠・・・。」

理緒が前を見て言った。

「ああ、この大陸もここ数年でこのような砂漠が増えたんだ。

 水の問題は王都でもかなり深刻な問題だ。」

「ここは、昔は砂漠ではなかったのか?」

「ああ。この国は森林に囲まれた美しい国だったそうだ。」

「こんなところで山賊は暮らしているのか。」

「ああ。今まで我々がいた森はかろうじて残っていたのだが・・・。

 本当はあんなに食料が無かったはずなんだ。」



考えてみると、山賊討伐で追われたとき、あの森は食べれる物がほとんどなく

枯れた木がめだつ森だった。

「ひょっとして俺が願ったから?」理緒はそうデュアスに問いかけると、

「おそらく・・・」デュアスも答えた。


・・・まあ、確かに食料が欲しいなあとは思っていたのだが・・・

「デュアス。とにかく先を急ごう。」

理緒はそう言って足を進めた。




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