ルーレンの夜明け

       第14話 男の正体

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理緒は気配を消して広場に近づいた。

広場では、銀色の髪の男が刀を持って鍛錬をしていた。

理緒は、そのまま男の後ろに行くと、急に殺気を放った。

「誰だ?」

男はそう言いながら振り向きざまに理緒に刀を向ける。



理緒は懐に入れていた小刀でその刃を受けると

刃と刃に火花が散った。

・・・コイツ、重いな・・・



「お前は・・・。」

男は理緒を見て驚いたように刀を置いた。

どうやら、味方だと思われたようだ。

「ケヴィンさん、強いじゃん。」

理緒がそう言うと、その男は目を細めて自分の刀を構えて言った。



「坊主・・・何者だ?」

そこには、昼間のおどおどした雰囲気は無かった。

それよりも、理緒は男の目の色がアメジストのような紫だと言う事に

驚いて、興奮したように言った。



「ケヴィンさん、どうやって、目の色変えているの?

 教えて。さっきは、鍛錬しているのを見てついつい攻撃しちゃったんだ。」

ついついであんなに殺気を出すのかと男は思ったがニコニコ話しかける

理緒を見て男は小さな溜息をついて剣を下ろしながら言った。



「突っ込みどころはたくさんあるが、何で目の色を変えたいのだ?」

「ああ布取るね。」

理緒は、そう言いながら頭に巻きつけていた布を取ると、

月明かりの下に真っ黒な髪がさらされた。



ケヴィンは、持ってきた小さなカンテラに光を灯すと

理緒の黒い目を見て目を見開いた。

「嘘だろ・・・。」そう呟くと、中世の騎士がするみたいに

膝を突いて礼をした。



「あの・・・ケヴィンさん、そんな態度は取らなくて良いというか・・・。」

理緒は困ったようにそう言う。

「世界樹の化身様は、中性的な大変美しい方だと言われているが

 なるほど、華奢で美しい。」

「それ真顔で言うことじゃないし。しかも華奢なんて褒め言葉にならない。

 俺はたくましいの。

 それにそんなにかしこまらなくていいから。」



理緒のたくましい宣言にこらえ切れなくなったようにケヴィンが笑った。

「もう、笑わないでよ。」



理緒が言うとケヴィンは「悪いな。」と言って真顔になって言った。

「俺の名は、デュアス・ディ・ヴァラン。

 ケヴィンは偽名だ。」

「偽名?ケヴィンは特殊部隊なの?」

「いや。この国には特殊部隊などないからな。

 俺は、国王の命令によって戦況を報告する任務についている。

 そうか・・あの訓練内容は、リオンが考えたのか?」

デュアスはそう言うと辻褄があったように頷いた。



「うん・・だって、作戦も何もなくて山賊を討伐するなんてありえないよ。」

「はははっ。確かに。あの隊長では、あのような訓練メニューは組めないと

 思っていた。それで、化身様はなぜ、こんな真夜中にここに?」

「デュアスのことを知りたいのと、体がなまっているんだ。

 良かったら、剣を教えてくれないかな?」

理緒はにっこりと微笑みながらそう言った。











「・・・で・・・何で俺かな?」

数日後、隊長に食料の確保の手伝いを言い渡されたデュアスは

森の中に入って行く普段着の理緒を見下ろして言った。

自分も軍服を脱いでいる。

「いいじゃん。それに素でいれてよいだろ?まあ変装した姿であっても・・・。」

理緒はそう言いながらにっこりと微笑んでデュアスを見あげた。



初めて会った夜から毎夜一緒に鍛錬することにより

2人はすっかり仲が良くなったのだ。

「ああ、確かにその方が楽だが・・・。食料を確保するって何をするのだ?」

「大丈夫だよ。さっき川に網を入れておいたから、勝手に魚獲れるはずだから。」

「それにしては大きな荷物を背負っているようだが。」

デュアスは、理緒の背負っているリュックを見て言った。

「ああ。これ?」

理緒はそう言ってデュアスを見あげると妙に笑顔で言い放った。

「ちょっと、デュアスと山賊討伐しに行こうと思って・・。」




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