ルーレンの夜明け

       第12話 お粗末?

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・・・この髪と目はどこぞの印籠かよ?・・・

理緒は、平伏すマーシェと膝をついて騎士がやるようなお辞儀をする

隊長を見て小さな溜息をついた。



「とにかく、俺はそんな偉い人じゃないから

 頭をあげてください。」

理緒はそう言うとマーシェは興奮を抑えきれない様子で言った。



「いいえ。貴方はどなたよりも尊いお方です。こうして私のようなものが

 お話をさせていただいているだけ恐れ多いこと。

 そうだ。隊長。早く王宮にリオン様をお連れしないと。」

「そうだな。世界樹の化身様とわかった以上、我々が守らなければ・・。」




「いや。尊いなんてことはないから。

 それに隊長は任務を遂行しなきゃならないでしょうし。」

理緒はそう突っ込みをいれる。



「いや・・・・そうは言っても思ったより山賊は手強いし

 マイラも奪われたからな。」

「マイラ?」

「マイラを知らないのですね。マイラは大きな鳥で

 それに乗って移動したり戦闘したりするのです。」



「じゃあ、どっかからマイラ調達すれば?」

「マイラの飼育は王都の郊外で行われている。

 この辺には野生のマイラはいるだろうが調教なんて

 できるものではない。」



「そうなんだ。でっ。そもそも何で山賊なんているんだ?」



隊長の説明によると、

元々このリタニア王国は、大陸の中でも一番小さくて

 人々は温厚で豊かな国だった。

 しかし、世界樹が枯れ、この国も太陽が無くなり薄日が差すだけになった。

 そこで、王は 皆が支えあって暮らしていけるような仕組みを作った。



 ところが、他の大陸に比べてこの王国は恵まれているらしい。

 他の大陸からこちらに渡って来るものが多数おり、その者達が

 王国の民を脅し暴力を振るったり殺したりした。



 そこで、王は主な都市や王都を石壁で覆い守るために軍隊を作り、

 大陸や城壁の周りに結界を張ったそうだ。



「結界?」聞きなれない言葉に理緒は思わず呟いた。

「ああ、商船以外の船はこの大陸に上陸できないという結界だ。

 それで、壁の中の者と外の者は触れ合うことは無かったが

 なんとか数年はこの王国の者は平穏に生活をしていたのだ。

 しかし、ここ数年になっていよいよ夜が長くなり、作物ができなく

 なってくると、商船や郊外の街から王都に物を売る商人を襲う

 山賊が増えてきた。そこで今回我々がその討伐に向ったんだ。」




「それで、やられた・・・と。」

「ああ。と言うか、寝ているところマイラを奪われた。」

「つまり・・山賊を討伐するつもりできたはずなのに

 襲われたということ?」

「ああ。」隊長とマーシェは都合が悪そうに目をそらす。



「それでも、あんたがた山賊の顔見たのだろう?」

理緒が言うと隊長は決まり悪そうに言った。

「いや・・疲れて全員眠ってたから・・・。」



「見張りの兵士も?」

「見張り?」きょとんとした隊長を見て理緒は小さく溜息をついて言った。

「任務を遂行するためにここに来たんだろ。

 最後まで、任務を遂行しやがれ。

 とにかく、明日からてこ入れするぞ。」



「あの〜〜リオン様・・・てこ入れとは?」

マーシェが恐る恐る聞いた。



「山賊討伐の為に、明日から特訓だ。

 俺が軍隊のイロハを教えてやる。」

「「はあ?」」

隊長とマーシェの声がそろった。



「大体、マイラだか何だかわからないがいないくらいでなんだ?

 俺が皆を鍛えなおす。」

理緒はそう言うと力強く拳を握って言った。



「もう、こうなったら何が何でも士気をあげてやる。

 俺は俺より弱い奴に守られたくないからな。

 ということで、隊長さん、手合わせ願おうか。」

理緒はそう言ってにっこりと微笑んだ。



隊長は思わずゴクリと唾を飲み込んだ。


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