ルーレンの夜明け

       第10話 ジャングルの中で

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明け方、理緒は、向こうに陸地があるのを確認した。

理緒は誰も人がいないのを確認すると用心深くオールを出して

陸地に小舟を着けた。



陸地にあがると、そこは広い砂丘のようなところだった。

理緒は、黒い髪と黒い目を隠すように

砂漠の民のように布で頭を覆いリュックを背負うと

辺りの気配に気を配りながらそのまま歩き続けた。



途中でゼストが用意してくれた乾パンのようなクッキーと

水筒に入れた茶を飲むと再び理緒は歩き始めた。

普通の人なら疲れるところだが理緒はあまり疲れも見せずに

もくもくと歩いていた。



砂丘を抜けると木がうっそうと茂っている森があった。

「森か・・・。食えるものがあるといいな。」

理緒はそう言いながら森の中に入った。



しばらく歩くと理緒は、懐に手を入れて短剣を抜くと

そのまま木の影に身を潜めた。

森の向こうから軍服を着た2人の男がこちらに来た。

「こんな森の中で食べるものと言ったって・・・。」

若い男がぶつぶつ言っている。



「そうは言っても隊長達は水を探しに行っているんだ。

 木の実でも探さなきゃいけないだろう。」

もう1人の男がそう言う。

2人とも身長が2メートル近くある長身だ。



理緒はそっと木の影から出る。

若い男は理緒の姿を見て「ひっ。」と言って尻餅をつき、

もう1人の男は若い男を庇うように懐から短刀を取り出して

「山賊か?」と聞いた。



しかし、戦い慣れた感じではなくあきらかに腰がひけている。

「いや。俺は山賊ではない。」



男達2人は大柄で理緒よりも大きい。

「まだ、少年じゃないか。ああ、驚いた。」

若い男がそう言って立ちあがった。

「どうしたんだ?こんな森の奥で・・・

 この向こうは砂丘しかないだろう?」

男がなるべく優しい口調で言った。



「ちょっと待て。少年って・・・?」

理緒が思わずそう聞いた。

「どう見ても少年の背丈じゃないか。

 その位なら12〜13歳と行ったところか?

 坊主、親御さんはどうした?」



理緒は一瞬でそれを利用しようと思った。

「父さん達は・・山賊に・・・。俺は逃げた。」

理緒はそう言いながら俯いて見せた。

「そうだったのか?

 俺達と一緒に来ないか?」

男は、どうやら理緒に同情したようだ。



「ところで、あんた達は何をしていたの?」

「いや。恥ずかしい話。俺らの部隊は山賊の討伐に

 来たのだが、逆にやられちゃって。

 こうして、食べ物でも探しに来たんだ。」

若い男はそう答えた。ちょっと情けない話ではあるが

理緒はそんな2人に親しみを覚えた。



「俺も一緒に探すよ。果物くらいなら探せると思う。」

理緒はそう言うと2人はほっとしたように息をついた。

「いや。俺、森のことはよくわからないから助かる。」

若い男はそう言うと嬉しそうに微笑んだ。

その近くで果物や木の実や山菜を取り、理緒は

2人の男について言った。若い方の男がリジェル、もう1人が

ユーリアと言う名前みたいだ。



少し歩くと小さな広場があり

そこにはリジェルとユーリアと同じ軍服を着た者がたくさんいた。

皆が驚いたように理緒を見る。

ここでも、「坊主小さいのに頑張ったな。」という言葉をもらった。

理緒自身元々背がそんなに低いわけでない。

元の世界で計ったときも178センチだったのにと思いながら周りを見ると

あきらかに理緒より大きい。



その時、「ユーリアどうした?」と言いながら男が向こうから来た。

その男は壮年で茶色の髪に鋭い目つきをしていた。

ユーリアが理緒の説明をするとその男は目を細めて理緒を見た。

理緒はその視線の強さに思わず身震いをした。




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