眠る君へ捧げる調べ 番外編  ’07 クリスマス特別編

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銀の龍の贈り物








「ルイの歌・・やっぱりすごく綺麗。」

慧は、そういいながらルイに微笑みかけた。

「そう?ケイに言われるのが一番嬉しいよ。」

ルイは嬉しそうに微笑みながら言った。

「ねえ、今日は誰もいないのかな?いつもなら皆いるのに・・・。

 ルイ知らない?」

「ううん。ニコライ先生も朝から見ていないや。」

「ルイ・・?何か知らない?」

「ううん。ぼ・・・く何も知らない。」

ルイの目をみると完全に目が泳いでいる。

「ル・・・」慧が問い詰めようとしたとき、部屋の扉が開いた。




「ルイ、お疲れ様でした。さあ、ケイ様迎えに参りました。

 こちらへどうぞ。」

ニコライは、慧を連れて長い石畳の廊下をぬけ

部屋の扉を開けた。



そこにはニコライの父イアンがゆったりと座っていた。

「イアン、お仕事は?」慧が不思議そうに聞いた。

「いや、今日は休みなのですよ。だから、私もゆっくりしようと思いまして・・。

 ほら、ケイ様。いらっしゃい。」

イアンは微笑みながら手を広げるとそばに来た慧を軽々と抱き上げ膝の上に乗せる。

「何か、この体勢恥ずかしいな・・。」

慧がそう呟くとイアンは優しく言った。

「恥ずかしくないですよ。それに慧様は痩せすぎですね。

 もう少し太らなければいけませんよ。」

そう言いながら、子供にするように優しく背中を小さくたたくと

慧はうとうとしはじめ、やがて眠りはじめた。








「慧・・・慧・・・。」

優しい声がする。

「リューゼ。」

慧はそう言って目を開ける。

目の前にはリューゼの優しい微笑みが溢れていた。

「少し調子戻ったようだな。でもまだ痩せているな。」

リューゼは心配そうに慧の頬を撫でる。

「うん・・でもかなり良くなったんだよ。」

慧はそう言いながらリューゼの首に腕をまわし

自分からキスをした。

「慧・・・積極的だな・・。」

リューゼはそう言いながら濃厚なキスを慧に返した。

「それで、慧・・最近はどうだい?」

慧はリューゼの膝の上でいつものように最近の話をしはじめた。





「あれ?」慧が不思議そうに首をかしげた。

「どうした?」

「うん。いつも目覚めるときに引っ張られる感じがするんだけど

 今確かにしたんだよ。でも・・おかしいな。すぐにそれがおさまったんだ。」

リューゼは不思議そうな顔をして、目を閉じて何かを見て

「ああ、そうだったのか。」と1人頷いて言った。

「慧・・・どうやらいつもより一緒にいれる時間が多いようだ。

 そうだ。向こうの世界を思い出して、一緒に料理を作って食べようか?」



リューゼは、そう言いながら指をパチンと鳴らすと、

龍星と一緒に住んでいたマンションのキッチンとダイニングが現れた。

慧は嬉しそうに冷蔵庫をあける。

「うわぁ。食材も向こうと一緒だ。

 ジャガイモにニンジン・・・お肉もパック入りだぁ。」

「慧の体だけは小さいままだがね。

 さて、何をお手伝いしましょうか?」

リューゼも楽しそうに慧に言った。

「うーーんとね。お米もあるから和食を作ろう。

 じゃあ、リューゼ。ジャガイモの皮を剥いて。」

慧はピーラーをリューゼに渡しながら言った。

2人は嬉しそうに顔を見合わせると料理をはじめた。

その間に何度か慧は引っ張られる感覚がしたが大丈夫だった。




ダイニングのテーブルの上には作りたての料理が湯気をたてている。

慧は久しぶりの和食に顔をほころばせた。

「やっぱり和食だよね。」

そう言いながらお味噌汁に口をつける。

「あ〜〜。幸せ。」

リューゼも器用に箸を使い肉じゃがを食べた。

「腕、落ちていないね。慧。」

慧はすごく嬉しそうに微笑んだ。

料理を食べ終えるとリューゼは慧を再び膝の上に乗せて

キスをした。

「そっか・・・もう目覚める時間なんだ・・・。」

急に強く引っ張られる感覚がした慧はそう呟き、リューゼに

キスを返した。

「ああ。今日は楽しかったよ。」

リューゼはキスをしながら言った。

「うん・・ありがとう・・・リューゼ。」

慧は透明になりながら言う。

「慧・・・兄さん達と・・・君の銀の龍・・・によ・・・ろ・・・し・・・・く・・・」

リューゼの声が遠くなる。







慧はがばっと起きあがった。

「目覚めたかい?ケイ?」

見あげた顔はイアンではない。

「リューーーク!!」

慧は不思議そうに周りを見まわして

「フェル?ロベルト?」と声をあげた。




そこには、リューク、フェル、ロベルト、イアンという

おなじみの龍の当主たちが勢ぞろいしていた。

慧の驚いた顔を見て当主達が面白そうに笑った。

「ケイ、君はあの世界にいつもより長くいれただろう?

 それは我々が膝枕リレーしたからだよ。」

「ロベルト。膝枕リレー?」慧はきょとんとしたように言った。

「ケイが起きそうになると別の膝にケイを移したんだよ。

 まあ私達も久しぶりに兄弟で集まって話ができたし楽しかったな。」

リュークもそう言う。

「あっ・・。」慧がそう言ってたちあがった。

「ケイ?どうした?」フェルが聞いた。

「だから・・リューゼがあんな風に言ったんだ。」

「あんな風って何と言ったのですか?」イアンが首をかしげて言った。

「兄さん達によろしく・・。って・・リューゼって末っ子?」

当主達がまた笑った。




「突っ込みどころがそこなのが、笑えるな。

 ケイ久しぶりに会ったからな。土産を持って来たんだ。」

ロベルトがそう言いながらリボンのついた箱を差し出す。

「あっ。私もこれをケイに。」リュークも箱を差し出した。

「ほら・・・。」フェルも袋を差し出す。

慧は嬉しそうに箱を受け取った。



ロベルトの箱には、当主とリューゼの絵が入っていた。

「昔、まだ王になる前のリューゼだよ。」とロベルトが言う。

絵の中のリューゼは若々しくて優しく微笑んでいた。





リュークのプレゼントは「龍王の記憶」という絵本で

そこには、代々の王と妃が載っていた。

「うわぁ。リュートとタカだぁ。」

慧が微笑みながらページをめくる。

最後のページには堂々とした王冠をかぶったリューゼの姿が

描かれていた。

慧は、そのリューゼの堂々とした姿を嬉しそうに手でなぞりながら

「ありがとう。リューク。」と嬉しそうに微笑むと、リュークは黙って慧の頭を撫でて言った。

「ケイ、もう少し待てば会えますよ。」





次にフェルの袋を開けると、もこもこの真っ白の帽子とマフラーと手袋が入っていた。

慧は早速帽子をかぶり手袋とマフラーも身に着けた。

「すげぇ。ラビスみたいで可愛いな。」

ロベルトがそう言いながら手を叩いた。

ラビスというのは、ウサギのような生き物で真っ白な小さな体にエメラルドの目を持っている。

「フェル・・ありがとう。」慧がフェルを見あげると

「風邪・・ひかない・・・ように・・。」とフェルはそっけなく言って眼をそらした。




「はははっ。フェルは口下手だからね。よく似合っているよ。」リュークが助け舟を出した。

「私からもプレゼントですよ。」イアンがそう言って呪文を唱えると

色々な色の花びらが天井から降ってきた。

イアンの手には花束が握られていて慧に差し出した。

慧は嬉しそうに花束を受け取り香りをかぎながら

「う〜〜〜ん。良いかおり〜〜。」とにっこりと微笑んだ。





「いーなーー。魔法で花出せる奴は・・・。」うらやましそうにロベルトが言う。

「そりゃあ・・桜龍の特権ですからね。」イアンがすまして言った。

「なんか、雰囲気違うよね。」慧は当主達の様子を見てリュークに聞いた。

リュークは笑いながら言った。

「そりゃそうでしょう。皆偉そうにしていますが元々は兄弟なのですから。

 素が出ているのですよ。久しぶりに兄弟水入らずですからね。

 あの不肖の息子もたまには良いことを考えますね。」

「そうそう。あの馬鹿息子もたまにゃあ使いようがある。」

ロベルトもそう言う。





「へっ?ファルやジークやジャンは?あっ?ニコライもいないや。」

慧が部屋を見回して言った。

「ジークは仕事だ。」フェルが言う。

「ファルもですよ。」リュークも言う。

「もちろん、ジャンも・・。」ロベルトがウィンクして言う。

「ニコライにも仕事頼みました。兄弟水入らずです。」イアンもにっこり笑って言った。





・・・・この人達・・・仕事・・息子に押し付けた・・・・?・・・




慧は思った。今頃あの4人はどうしているのだろう。


ファルは、「仕方ないですねぇ。まあいいでしょう。」と言いながら

黒く微笑んでいるのかなあ。


ジークは、黙々と仕事をこなしているのだろうか。


ジャンは、「あの馬鹿おやじ〜〜」と言いながらも仕事やってるんだろうな。


ニコライは、とにかく早く仕事を終わらそうと必死で仕事しているのかな。





・・・ありがとう・・・慧は心でお礼を言う。

そして、願った。

「皆が幸せでありますように。

 自分に力があるのなら幸せな気持ちに少しでもなりますように。」


その日ナバラーンに金の光りの粒が舞った。



Merry christmas and best wishes for a happy new year!

Best wishes for a happy holiday season and a happy new year!





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