眠る君へ捧げる調べ 番外編  ’07 クリスマス特別編

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その頃・・銀の龍は?








「ファルム様、次は大学の特別講師のお仕事です。」

蒼龍の親族会議を終えたファルを待ち構えていたのは父親リュークの秘書だ。

「特別講師ですか・・・わかりました。移動中の馬車で資料を見せて下さい。」

ファルは微笑みながらそう言いながら秘書に会議の資料のファイルを手渡した。

・・・まったく・・折角ケイの嬉しそうな顔見れると思ったらこれですか?・・・

そう思っていることなど周りにはみじんにも悟らせない。

顔はいつもと同じ笑顔だ。

・・・・本当に・・・なんでこんなにスケジュール詰め込んでいるのですか?

・・だいたい、毎日適度なスケジュール組まないから仕事が溜まるのですよ・・・

・・あれで、ナバラーン一の賢者と言われているのですから・・嘆かわしい・・・

・・何が、「スケジュールぎっしりだから、代役よろしく。」ですか!!・・・

・・戻ってきたら・・どうしてあげましょう・・・

と心では不満爆発中である。

何度も言うが表面上は笑顔で馬車に乗りこんだ。






「ちっ。」

ジークは、黙々と聖獣の世話をしている。

意外なことに父は可愛い動物好きで何頭もの聖獣の飼育をしている。

「ケイの為にミリュナンテに。」と頼んだ時の父の第一声が

「あの子達はどうするんだ。」という言葉で、ジークがその世話を引き受けざるを得なくなったのだ。

・・・ジーーク・・・寒いよ・・・・

・・・暑いよ・・ジーク・・・

しかも、利口で忠実なフィリオと違いまだ聖獣に成りたての動物は我侭を言う。

「ふん。」

ジークは闇の魔法を使って一匹獣を氷漬けにしてもう一匹を火の檻に入れ

低い声で他の聖獣に言った。

「おぬしら、こうなりたくなかったらおとなしくしろ。」

とたんに聖獣達は静かになる。

闇の魔法をとくと二匹の聖獣もシュンと頭を垂れた。

ジークはそばにあった木のベンチに座りその怯えた二匹を膝の上にあげて

優しく?撫でて、空を見て思う。

・・・ケイ・・良い夢をみているか・・・。






「あの、クソおやじ〜〜。」

ジャンはそう言いながら書類の山を羽ペンでつついた。

「だいたい、何だってこんなに決済書類ためてるんだ。

 いくら忙しいたって、限度があるだろう。

 毎日やれって。」

そう言いながらもペンを動かす。

「自分だってケイに会いたくてパタパタしていたくせに・・・。

 こんなにためやがって。しかも・・・逃げ出さないようにしやがって。」

「ジャン様。少し口を慎んで下さい。ああ、嘆かわしい。

 面と向ってはお父様と呼んでいらっしゃるジャン様がそんな

 言葉を使われるとは・・・。」

父の側近のマリオが言う。

「なあ、マリオも思わない?こんなに仕事滞って・・。」

「ええ。」

マリオはここでにっこりと微笑む。

ジャンは思わず身をひいた。幼いときからの経験でこのにっこりにろくなことがないことを

ジャンはよーーく知っている。

「当主様は奔放で制御不可能ですからね。

 せめて、ご子息のジャン様はきちんとなさるのでしょう。

 グダグダ言わないでペンを動かしてください。」

ジャンはふくれっ面をしながらペンを動かしながら思う。

・・・ケイ喜んでくれたかな?・・・






ニコライは大きな書庫でいそいそと本の整理をしている。

基本的に几帳面な性格の彼はきちんと整理し終わった隣の本棚の

本が曲がっていても気になる。

「なんできちんとある所に返さないのでしょうか。」

隣の本棚が気になるとまたその隣の曲がった本が気になる。

それなら作業をやめればいいのだがニコライの性格的にそれはできない。

結局、その調子で隣・・隣の書棚に目線が移るので

かなりな重労働になっている。

しばらく作業を続けていると外が暗くなっているのに気がついた。






ふと上を見ると金の光の粒が急に見えた。

・・・ありがとう・・・皆が幸せでありますように。

 自分に力があるのなら幸せな気持ちに少しでもなりますように。・・・

慧の声が聞こえた。






ファルは馬車の窓から外を見て

「喜んでくれたようですね。」と呟いた。



ジークは、空を見上げながら

「ケイ。良かった・・。」と呟いた。



ジャンは、ピューッと口笛を吹くと

「ケイ、やるじゃん。」と呟いた。



そして、ニコライは直接慧に会いに行こうと

急いで廊下へでた。




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