眠る君へ捧げる調べ

       第9章 君ノ眠ル地ナバラーン〜紅龍編〜-9-

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「ファルム、先はまだまだ長いな。」

多くの書物に囲まれてリュークは溜息をついた。

「父上、口を動かす暇があるのなら頭と手を動かしてください。」

ファルは、本を読みながら淡々と言った。

2人は、当主の墓から、この書庫に送られ

ずっと書物を読んでいるのだ。

そこには、ナバラーンの歩んできた歴史が全てこと細かに書いてある。

それを全て読み、理解することが2人に課せられたことだ。

主に昼、その書物を読み、夜はそのことについて討論をする。

なので、気を抜く暇がない。

「とにかく、早くこなしてケイの元に戻るだけです。」

「本当、ケイ主義だな。」

「無駄話はよろしいです。父上もちゃんとやってください。」

リュークは、肩をすくめて書物に目を戻した。






闇の中で大きな銀の鎌がきらめいた。

「ジーク、大丈夫か?」

「父上、ありがとうございます。」

そう言いながらもジークは鎌でそばにきた黒い影を切る。

2人は、ナバラーン中の悪霊を祓いに来ているのだ。

それが闇龍の2人に課せられた課題。

「終わりました故、次にいきましょうか。」

「うむ。」

必要以上に語らない2人だが息は合っているようだ。

2人の後を2人の闇龍が追う。






「親父、酒くせー。酒場行ってたな?」

ジャンがロベルトの顔を見て言った。

「あ〜?のんで悪いか。

 それよりも良い情報が手に入ったぜ。」

「なんだ?その情報って?」

「この先の港町で2人連れの男を見たらしい。

 その1人は眼帯をしていたとか・・・。」

「じゃあ、荷物纏めるから親父は酒さませよ。」

ジャンはそう言うと荷物をまとめはじめた。

黄龍は、異世界に連れてこられ逃げている

初代の黄龍と銀龍を探すことが課せられている。

「さっさと見つけてケイのところに行くぞ。」

ジャンの声が響いた。






「そろそろ休憩にしましょうか?」

桜龍は、4人で行動していた。

イアンとニコライは、嬉しそうに木の下に座ると水筒に口をつけて水を飲んだ。

ここは、なんとも無い森だ。

「大変なものでしょう?」

初代の桜龍がそう聞くとイアンとニコライは頷いた。

4人は、森を開墾し花を育てる。

これが桜龍に課せられたもの。

「でも、命のきらめきを感じますね。」

ニコライが言うと皆が頷いた。

桜龍は和みながら作業をしているようだ。






「後、何曲だよ〜〜。」

ルイは、歌い終えてから言った。

「後、278曲ですね。しかも完璧に2人で合わせなければ。」

初代紫龍がにこやかに言う。

「ルイ・・・がんばろう。」

ルネは、そう言いながら水筒を差し出す。

飲んだ水はとても冷たかった。

「ありがとう。父上。」

紫龍の親子は妙な連帯感を持ちはじめていた。






「父上。今日の夕食です。」アハドはそう言いながら海からあがる。

「アハド、風を自由にって・・・。」イツァークはそう言いながら

雲ひとつない空を見あげた。

「まあ、父上。長期戦を覚悟して炭でもおこしませんか?」

アハドが魚を取り出しながら言った。

「おおーー。うまそうだな。」

「無人島ですものね。」

何気に楽しそうな翠龍親子であった。

翠龍の課題は、風と雲を自由に操ること。






「こんな過程でこの法律ができたのはけしからん。」

リンエイが怒ったようにそう言う。

「しかし、この世相ではしかたなかったのでは・・・。」

サイシュンがそう言うとリンエイが唸りながら言った。

「なんの為に法が必要かなんて考えたことが無かった。

 その観点で言えば、見直さなければならないものも

 多いな。」

「ええ。そうですね。」

書類の山に溺れながら、白龍の2人は法律について勉強していた。

夜には、占術や星見を教えてもらっている。

覚えることは山のようにある。








それでも、

書類の山の中で父親をせかしているファルも

闇の中を駆け巡っているジークも

真昼間に馬で街を疾走しているジャンも

花が育つのを楽しみに空を仰ぐニコライも

ひたすら歌を覚え歌い続けているルイも

海の中魚を捕まえ、風を操る練習をしているアハドも

夜空を見あげ星を見ているサイシュンも

皆考えることはひとつ。



「「「「「「「ケイ(様)、会いたい。」」」」」」」




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