眠る君へ捧げる調べ

       第9章 君ノ眠ル地ナバラーン〜紅龍編〜-7-

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「君が当代龍王なのだな。

 私は、リュートアルト・ラン・ナバラーン。

 初代龍王だ。リュートと呼んでくれ。」

「私は、タカマサ・ラン・ナバラーン。

 タカで良い。」



リューゼは、驚いた顔で2人を見てから

慧を側の長椅子に寝かせ

ナバラーンで最敬礼とされるお辞儀をした。



リュートは、リューゼの頭に手を載せ

目を瞑ると貴雅も同様に目を閉じた。

2人は、リューゼの記憶を見ていた。



貴雅は立ちあがり、リューゼを抱きしめて言った。

「辛かったね。」

リューゼは、黙って頷いた。

リュートも優しくリューゼの頭を撫でた。

「よく頑張ったな。」

そのリュートの言葉にリューゼの頬に涙が零れた。

「私は・・・許されるのでしょうか?」



貴雅は微笑んで言った。

「許すも何も・・・貴方には何も罪がない。」

「でも、その言葉が欲しいなら私がやる。

 リューゼ・・・お前は許されている。」

リュートが続けて言った。




その時、小さな手がリューゼの裾を掴んだ。

「リューゼ・・・どうしたの?」

心配そうな声を出しているのは慧だった。

いつの間にか起きたのか、長椅子にチョコンと座っている。



「いや・・・初代龍王に会って嬉しくて・・・。」

リューゼがそう言うと慧はニコニコして言った。

「リューゼ、うーーんとに甘えるといいよ。

 なんたって、リューゼのひいひいひいじいちゃんなんだから。」

「ケイ、それはやめろ。」リュートはそう言いながらと慧を抱きあげて言った。

「久しぶり、ほんとケイは相変わらずオチビだな。」

「しかたないんだもん。」慧はぷーっと頬を膨らませて言った。

貴雅とリューゼがその顔を見てぷっと吹き出した。





「で・・・何で、また会えたの?」

不思議そうに慧がリュートを見あげた。

「それはね。君達を私達の後継者にしようと思ったからだ。」

リュートがそう答えながら慧を元に椅子に座らせた。



「後継者って、どういうことなの?リューゼは龍王で後継者でしょ?」

慧が首を傾げながら言うとリュートは首を振って言った。

「確かに、リューゼは龍王だ。力もナバラーンの誰よりもある。

 しかし、私の後継者というのと少し違う。

 私の後継者は、私の力を継ぐ者。

 ナバラーンの未来を見守る者。」

「なんで?今までリュート達がやってきたんでしょう?」

「慧、今まで僕らが見守ってきた時は建国の時からずっとだよ。

 僕らは決めていたんだ。僕らの志を継ぐ存在に

 この国を任せると。」

「任せた後は、どうするの?」



貴雅が微笑みながら言った。

「2人で異世界でも旅してゆっくりしたいんだ。

 私達はナバラーンに縛られていたからね。」

「私にできるのでしょうか?」リューゼがリュートに聞いた。

貴雅が笑いながら言った。

「あーーっ。基本的に拒否権なしね。今、金・銀の龍それぞれ

 再教育しているから。」

そう言いながら、大きな鏡を出して覗くように言った。



鏡は分かれてそれぞれの龍が映し出されていた。

「これは?」

「リューゼと慧に力を渡すと自動的に当主や銀の龍も

 力が強くなるんだ。

 その強い力で、いままでのように過ごすことは

 とても危険なことだ。

 だから、初代当主と銀の龍で一番適していると思われる者に

 当主や銀の龍としての心構えや知識・技術を

 再教育してもらっているんだ。」

「そうなのですか?それで、私達も?」

リュートは首を振って言った。

「いや。リューゼと慧に再教育なんていらない。

 後継者の条件は、ただ一つ。

 力を間違った方向に使わないという精神力なんだ。」

「そして、2人の絆の強さだけだね。」

貴雅が付け加えてそう言った。



リューゼは、慧を膝に抱き上げて言った。

「今この時だからこそ私の秘密を聞いてくれるかい?」

全ての歪んだ原因が今明かされる。




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