眠る君へ捧げる調べ

       第9章 君ノ眠ル地ナバラーン〜紅龍編〜-3-

本文へジャンプ





「私にお手伝いさせてくれませんか?

 私がアルにナバラーンで生まれて良かったと思わせます。」

アルは、驚いたように目を見開いて言った。

「何をする気だ?」

「それは、これから考えます。

 とにかく、このままではいけないと思うのは確かです。」

「お前には何もメリットがない。」

「じゃあ、メリットを作りましょう。」


慧は、にっこりと微笑んで言った。

「この件が解決したら、アルが銀の龍になって下さい。

 そして、アル側の者全てを銀の龍の眷属にして下さい。」

「それは・・・。」



「戦いに命をかけるつもりでしょう?」

慧は微笑んでいたが目は笑ってなかった。

見透かされたと思った。

「ああ。冷静に考えても紅龍の当主の軍隊に俺は勝てない。

 だから、この命をかけて戦うつもりだった。

 今、金の龍人をさらったことで軍が出ると聞いた。

 当主の軍隊は我々を1人残らずつぶすだろう。」

「それを阻止します。」

慧は何でもなさそうに言った。

「そもそも、私がさらわれなかったことにすると良いのです。」

「何でそこまでするんだ。」アルは不思議そうに言った。



「龍王のあやまちを正すのは私の仕事です。」

アルは驚いたように慧を見た。

龍王が間違っているなんて、この世界では誰も言わない。

とにかく絶対の存在なのだ。



「龍王は本当に平和を願っています。

 ナバラーンを愛しています。

 でも、それを指し示すのも龍王の仕事。

 それが正しい方向に進まないのなら、私が正します。」

そのまなざしはとても真剣でまっすぐでそして強かった。


数分後、慧のテントに龍の約束特有の光が溢れた。

アルの溢れるばかりの魔力に当てられた慧は

そのまま倒れた。


やはり龍の約束は人には負担が大きかった。

慧の肩には全ての龍の痣がそろった。



しばらくして起きあがった慧は

アルと共に外に出た。

慧は目を閉じて銀の龍を呼んだ。



その次の瞬間、慧の周りには銀の龍がいて

慧は皆に抱きしめられていた。

「ケイ・・心配したのですよ。」(ファル)

「ケイ、大丈夫か?」(アハド)

「ケイ、ちゃんと食べてるか?」(ジャン)

「ケイ・・・ケイ・・・(抱きついてウルウル・・・)」(ルイ)

「ケイ、怪我とかしなかった?」(サイシュン)

「ケイ様、ご無事でよかった。」(ニコライ)

そして、ジークは

「貴方がケイをさっらたのか?」と言いながらアルをにらんだ。



「ジーク、アルをにらまないで。

 アルはとても良くしてくれたんだ。

 それより、みんなの力を貸して欲しいんだ。」

慧が大きな声でそう言うと皆は渋々頷いた。


慧のテントに移動し慧の話を聞くと

ジークが立ちあがって言った。

「結界を張る。」

「あっ。私も手伝うよ。」

慧がそう言うとジークはにこりと微笑んで

慧の頭を撫で、2人は連れだって行った。

2人が張る結界は、ここの場所を完璧に隠す結界だ。



「ご迷惑をかけて申し訳ない。」

アルがそう言いながら頭を下げた。

「アル、あなたは、まだ銀の龍でなくても

 私たちの仲間です。

 銀の龍の結びつきは絆の強さだと

 言われております。

 だから、遠慮することはないと思いますよ。」


ニコライが優しく言うとファルも口を開いた。

「どうせ、あの子には迷惑なんてかけられ慣れていますので

 気にすることは無いですよ。

 むしろ、瀕死の重傷じゃないぶん、今回はましですから。」

「かなり、苦労なさっているのですね。」

アルが言うとそこにいた銀の龍全員が

疲れたように頷きながら大きな溜息をついた。



  BACK  NEXT 

 Copyright(c) 2007-2009 Jua Kagami all rights reserved.