眠る君へ捧げる調べ

       第8章 君ノ眠ル地ナバラーン〜白龍編〜-8-

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白龍の城では、ファルとニコライとルイとジャンが頭を寄せ合って相談していた。

銀の龍は銀髪でここに来たので白龍の当主は

4人を客人として他の者に紹介した。


話が終わるとジークとアハドは龍の姿になって出て行ったので

銀の龍はもう既に城から出て行ったものと思われていた。


「俺らが慧を助けられないって何だよ。」

「ジャン、そう言う意味じゃないと思う。」

「ルイの言うとおりです。それに・・・。」

「ええ。ニコライ。私も思っておりましたが首謀者はリンエイの近くにいると思いますよ。」

「ファ・・・ファル?どういうこと?」

「昨日の昼、慧を捕らえて簡単な形でも裁判を開き護送するなんて

 そんなに小規模でできるものではないです。

 せっかくこの城に滞在しているのです。調査しないと・・・。」

「そうですね。ニコライ。

 今朝、リンエイに側近を紹介されましたよね。何か感じましたか?」

「ああ。リュウエン・ユウシン・ライロンでしたっけ?

 私は何も・・・・」

「あのね・・・」ルイが急に言い出した。

「どうしましたか?ルイ?」ファルが先を促す。

「僕、リュウエンさん苦手だな。」

「ルイが珍しいな。どうしてだ?」ジャンが不思議そうに言った。

「リュウエンさんの目が笑ってなかった。値踏みしそうで怖かった。」



ファルがルイを抱きしめた。

「大丈夫ですよ。ルイ。」

紫龍は、龍では一番弱いので、さらわれたり売られることがまれにある。

だからこそ、紫龍は力の強いパトロンを求めることが多いのだ。

ルイの直感にジャンは悪い予感を感じた。

「俺・・そのあたり中心に調べるわ。1人になるなよ。ルイ。」

ジャンはそう言って部屋を出て行った。

「ルイ、貴方も私達の大切な仲間です。大丈夫ですよ。」

ニコライも優しくルイに言いながら頭を撫でた。





慧はふとあることを思いついた。

それで、アオシンに聞いた。

「さっき、龍王様の理の下に刑は処されたと言ったよね。」

「ええ。そうですが・・・。」

「じゃあ、その理を外れるとどうなるのかな?」

「はあ?そんなことは考えたことはありません。」



「だめだ。そんな・・・。」サイシュンは慧の意図を感じてそう呟いた。

慧は、首を振って言った。

「でもそれしか方法がない。サイシュン思った以上に長生きしてもらうことになるね。」



アオシンは震える声で言った。

「あなたは・・・いったい・・・何者ですか?」

慧はその言葉に微笑を返しサイシュンに尋ねた。

「サイシュンのフルネームは?」

「私は罪人になったので、サイシュンそれだけです。」

サイシュンは目を閉じて言った。



慧は立ちあがって目を閉じ、魔力を少し開放すると

金の光が塔の内部を照らした。

「オォ・・・。」

そこにいた者は慧にひれ伏した。

そうせずにはいられなかったからだ。

金の光が慧を囲むと慧は静かに言った。



「サイシュン、私はケイ・サエキ。

 金の龍人にして当代龍王の花嫁。

 サイシュンに命ずる。

 これより、龍王の理を離れ私の銀の龍として

 その生涯を私に捧げ、尽くしてほしい。」

サイシュンは戸惑ったように下を向いた。

ナバラーンにいるものにとってこの命令は

最大の栄誉と同時に絶対背くことのできないものである。

つまりサイシュンは自分の意思に関わらず

その命令に従うしかない。



サイシュンは、慧の足元にひざまずいて言った。

「私は・・・罪人でもう白龍でもないのにそうおっしゃるのですか?」

慧は微笑んで言った。

「私は、当代龍王とはそのような話をしたことはないです。

 私にはナバラーンのことを教えてくれた人がおります。

 それは、初代龍王。

 元々彼は、意図して龍を作ったわけではなかった。

 病気を治し皆を助けたい龍は蒼龍になり、

 自分を盾にしてまで皆を守ろうとした龍は紅龍になった。

 死を悲しみその魂を浄化しようと願った龍は闇龍、

 花を愛し皆の幸せを願い続けた龍は桜龍、

 海をこよなく愛し風と仲良くなった龍は翠龍となった。

 皆を喜ばせるのが好きで歌や絵が上手だった龍が紫龍。

 商売が好きでナバラーンを繁栄させたいと願った龍が黄龍。

 そして、どんな時も公平で平和を望んだ龍が白龍となったのです。

 サイシュン、あなたはどんな時でも公平であろうと思いますか?

 平和を望みますか?」


サイシュンが黙って頷くと慧は続けた。

「ならば、あなたはここで再び白龍になるのです。

 そして、一緒にナバラーンの未来を作りましょう。」

サイシュンの頬をたくさんの涙がつたった。

頷くサイシュンと慧を金色の光が包んだ。



すると白龍の資格を剥奪された時に取りあげられていた

はずの白い石のついたブレスレットが手に嵌った。

そして、空に白い石が急に現れ慧とサイシュンの体の中に溶けるように消えた。



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