眠る君へ捧げる調べ

       第8章 君ノ眠ル地ナバラーン〜白龍編〜-3-

本文へジャンプ




国境の町から乗り合い馬車を使いリャオテイの中心の

ミャンハンの町に来るまで約2日かかった。

ミャンハンの町にはナバラーンの司法機関が集まっている。

ナバラーンでは金の龍王が制定した龍王法と言われる法律が最高の法律で

ミャンハンの司法機関で制定した中央法が次の効力を発揮する。

この中央法というのは白龍が中心となり作った

議会のような機関が制定する。

そして、その中央法に細かな注釈をつけた法律にのっとり

裁判が行われる。

ナバラーンで罪を犯すと簡単なものはそれぞれの当主が管理する

部隊等で処理される。

しかし、当主達の判断に委ねることのできない罪人は

ここリャオテイで裁かれ、リャオテイ国内の施設で

罪を償ったり、その他の刑が施行される。

要するにリャオテイの国は立法機関と司法機関と刑務所が

合体したような国なのだ。




ミャンハンの町に入ると事務所みたいな建物が軒を連ねていた。

「書類作成?」慧は首を傾げて言った。

「ほら、ミャンハンの役所にだす書類を代行で出す職業みたいだよ。」

ルイはそう言った。

2人は宿をとると部屋に入った。



ミャンハンの町もセントミリュナンテほど強固ではないものの

結界がかかっているし、役人が多い。

なので、慧は女装をといた。



ルイは、町で茶色の染め粉を買ってきて

翌朝、慧の髪を茶色に染め、

紫龍の魔法で目の色も茶色に変えたので

見た感じは人間のようになった。

ナバラーンでは黒髪、黒目は珍しいのだ。

だから、紅龍に襲われると困るので念には念を入れた。

慧も小刀や装飾具を翠龍の魔法で体に埋めている。

ルイは舞台用のどうらんで肩の痣を消してくれた。




それから2人は役所に行き、今まで作った数々の書類を

提出することにした。



役所に行くと、玄関にいる衛兵に2人は止められた。

「人と龍は、同じ入り口じゃない。」

「龍人はどうなのですか?」

「守護龍と一緒でなければ人の入り口だ。」

衛兵はそっけなく言った。



慧はそこで少し考えてからルイに言った。

「とにかく、中で一緒になれるかどうかわからないから

 ルイは、学校関係の書類を出してくれる?」

「うん。わかった。じゃあ、手続きが終わったらここで待ち合わせだね。」

そう言ってルイは慧と別れた。



慧は、人の入り口と言う方から中に入った。

人がミャンハンを訪れることは少ないので中は汚く閑散としていた。

「すみません。」



慧は窓口に向かって言うと白銀の髪に銀色の目をした女がめんどくさそうにでてきた。

「なに?」

「あの・・申請書を書きたいのですが・・・。」

「ふん人間のぶんざいで生意気な・・・。」

女は汚いものをみるように慧を見た。

「それでも、手続きはして貰えるのでしょう?」

慧がそう言うと女はほんとうに呆れたように紙をよこした。

「これに・・必要事項を記入して・・・。」

慧はその紙を受け取って埃だらけのカウンターに行くと

自分の鞄からペンを出して事項を書こうとした。



自分の名前を書いて属性を書く欄で慧は迷ってまた窓口に行った。

「あの・・・龍人の場合守護龍を書く欄に書く名前書ききれないんですけど。」

「好きにすると良いよ。」

女はそっけなく言った。



慧は、考えて闇龍の龍人と書きジークの名を書いた。

他の守護龍は龍の当主だから何かの時にすぐ側に来てくれる名前を書いたのだ

唯一、ジークだけは当主に会う前に龍の約束を交わしたので

慧の守護龍になっている。

慧はその他の事項を全て埋めて他の書類と共に窓口に持って行った。



女はブツブツ・・呪文を唱えると言った。

「ふん・・この申込書には嘘がある。

 お前は罪人だ。」女はそう言いながら呼び鈴を押すと

衛兵が来ていきなり慧の鳩尾に拳をいれた。

「えっ・・・。どうして・・・?」

慧はそう言いながら暗闇に身を委ねた。




  BACK  NEXT 

 Copyright(c) 2007-2009 Jua Kagami all rights reserved.