眠る君へ捧げる調べ

       第8章 君ノ眠ル地ナバラーン〜白龍編〜-1-

本文へジャンプ




「行くぞ・・・」

ジークとケイは闇龍の魔法を使い

夜の闇に紛れる。

慧が狙われているとわかった以上、リャオテイまでの行程は

空の移動ではなく陸路となった。

しかも、こうして夜に闇龍の力を使って闇に紛れて歩く。



同時にファルとジャンと、アハドとニコライは、別々の陸路をたどっている。

そしてジャンの背中とアハドの背中にはフードをかぶった人形が

背負われていた。

ジークの話ではアハドとニコライの方に紅龍の襲撃があったらしい。

銀の龍は離れていても会話することができるので、

毎朝ジークは他の銀の龍と連絡を取っている。



ジークと慧とつかず離れずの距離でフィリオがクーニャの群れを引き連れ

追いかけてくる。

「なんだか、不謹慎だけど昔思い出すね。」

歩きながら慧はジークに話しかける。

「ああ。ケイはもっと小さなやんちゃな子供だったがな。」

ジークはそう言いながら微笑んだ。



2人は夜明けまで歩くとファルが手配していた民家に行き

そこで休む。

森や山に入るとジークは黒い豹に変わり慧を背に乗せ

駆けるので、思ったよりも早くリャオテイの近くまで来た。



アシュタラ側の国境の町に着いた2人はファルの友人の家に

入っていった。

その時、「ケイ!」と言いながら慧に抱きつく人影があった。



慧は驚いたように目を見開いた。

「ル・・・ルイ?・・背高くなったんだね。」

「うん。かなり伸びたからな。」

「ほんと・・・セントミリュナンテにいたころはあんまり変わらなかったのに・・・。」

「そう?」

確かにルイの背は伸びて170センチくらいになっている。

でも体型はほっそりとしていて華奢である。

比べて自分は・・・と思うとついつい溜息がでてしまう慧だった。



民家の中で3人で食事を取るとジークが立ちあがって言った。

「慧・・・ここからはルイと行くんだ。

 我は顔がわれている。その分ルイは大丈夫だ。

 紅龍はおそらく大人と子供の旅人に目をつけると思うから

 気をつけて行きなさい。

 何かあったらいつでも呼びなさい。」

「ジーク・・もう行くの?」

ジークは頷き「ケイを頼む。」とルイに言うと

外に出て行った。



他の銀の龍は慧にとって父や母、年の離れた兄のような存在だ。

しかし、ルイは慧と3歳しか年が離れていないので

親友のような存在なのだ。

ルイは慧に定期的に手紙やプレゼントを送ってきてくれた。

慧は特に水晶のような丸い形のライトがとても気に入り

今はファルに預かってもらっている。

「ルイ・・いつも手紙ありがとう。

 また、ルイの歌聞かせてくれる?」

ルイは微笑んで言った。

「声変わりをしたから、以前と同じようにはいかないけれど

 僕の歌は慧のための歌なんだ。

 だから、いつでも慧の為に歌わせて欲しい。」

そう言うとルイは慧のそばに来て跪いた。

「僕は、ルイ・リー・シーリュ。

 芸術を司る紫龍。

 これから、ナバラーンの理を離れ

 我が主を龍王の花嫁にと願う。

 我の歌は花嫁の為に歌われ、

 この身を一生捧げることをここに誓う。

 僕の誓いをこの指輪に捧げ

 それを受け取ることで銀の龍として認めたまえ。」

慧は、その指輪を受け取りながら

「許します。ルイにナバラーンの祝福を。

 伴に在ることを許します。」

そう言うと、金色の光が2人を包んだ。




「終わったか・・・。」

ジークはそう呟くと民家全てを覆っていた結界を解いた。

「さすがは、金の龍人・・・と言うべきか・・・。」

ジークはそう呟くと街道の方へ歩いて行った。




  BACK  NEXT 

 Copyright(c) 2007-2009 Jua Kagami all rights reserved.