眠る君へ捧げる調べ

       第7章 君ノ眠ル地ナバラーン〜翠龍編〜-9-

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「慧・・ありがとう。」

リューゼは、いつもの空間に来ると慧を抱きしめて言った。

「どうして?リューゼ?」


慧が不思議そうに言うとリューゼは慧を膝の上に抱きあげて言った。

「あの世界でも私を探してくれてありがとう。

 そうでなかったら、私はあそこに行けなかった。

 実際私は、呼ばれるまでかれこれ半年も待っていたからね。」



「リューゼ。あの世界はなんだったの?」

「あの世界は慧と慧の両親の願望が作り出した世界だと思う。

 古の本に金の龍人には様々の試練があると書かれている。

 今回も、その1つだと思う。

 ただ、少し問題なのは慧が海の中に数ヶ月もいて

 そして、今まだ眠っている状態だということだよ。」

「えっ・・。」

「まあ、目覚めてから周りに聞けば良いと思うが・・・。

 慧・・たぶん君はあちらの世界にいたときほど

 身長が伸びないと思う。

 それでも、私は全然気にしないから安心すると良い。

 どんな慧でも変わらず愛するよ。」

「え〜〜〜。背が伸びないの。」



「まあ、終わりよければ全て良し。だ。さあ、心置きなく

 銀の龍に怒られておいで。」

「えっ・・怒るって・・?」

リューゼは微笑んで慧の額にキスをするとヒラヒラ手を振った。





目を覚ますと翠の目と目があった。

「慧ちゃん・・・良かった。」

「イ・・・・ァー・・・ク」

声がうまくでなかった。


なんだか身体が重く感じる。

「良かった・・・」

イツァークがそう漏らすのを慧は不思議な気持ちでみあげた。

慧は自分で起きあがろうとしたが

思ったように身体を動かせない。

イツァークは慧を抱えあげると

近くの大きなベッドに寝かせた。



その時、バタンと大きな音がして

扉が開けられた。

「ケイ・・・この馬鹿者。」

ガバッと抱きしめられ、見えたのは蒼い髪・・。

「ファ・・・ル・・・。」

「ケイ・・・」

「ケイ。」

「ケイ様・・・。」

見るとジークとジャンとニコライも憔悴した面持ちで自分を見つめている。

「ど・・・し・・・た・・・の?」

思うように声がでない。

「ケイ・・貴方は少し疲れているはずですよ。

 とにかく、少し休みなさい。」

ファルは、そう言いながら蒼の魔法を使うと

急に眠くなった。

「み・・・な・・・そばに・・・・・・て・・・あ・・・り・・・が・・・。」

慧はそう言いながら眠りはじめた。




慧が眠り始めると、ジークが心配そうに言った。

「ファル、慧は大丈夫か?」

「ええ。意識もしっかりとしていたので大丈夫だと思います。

 でも体力の消耗は激しいでしょう。

 以前の慧の元気な姿を見れるのはまだまだ先になるでしょうね。」

「何だか、夢でもみていたような感じだったな。」

「そうですね。ジャン。きっと夢をみていたのかもしれませんね。」

「でも、良かった。目を覚まされて・・・。ルイにも知らせなければなりませんね。」

ニコライも嬉しそうに言った。





「何で・・・こんなに細いんだ?」

慧は目が覚めて自分の腕を見て言った。

少しは肉がついていた腕は気持ち悪いくらいガリガリだ。

「それは、ケイが1年も眠り続けていたからですよ。」

「ファル・・・。」

「眠る前・・何をしていたかわかりますか?」

「海の力を浄化しようとしてた・・・。」



「ケイ・・何のための銀の龍ですか?

 貴方は何でいつも自分で解決しようとするのですか?

 そんなに私は頼りないですか?」

ファルの瞳から涙が流れた。


どこまでも強靭な精神力の持ち主のファルが涙を流している。

「ファル・・・ごめんなさい・・・。」



「ケイ・・・私が仕えるのは生涯貴方なのです・・・。

 お願いですから・・・置いていかないでください。

 何かあるときは・・・共に・・・。」

どんなに心配をかけたのだろう。

どんなに不安に思ったのだろう。


「ごめんなさい・・・。」

慧には謝ることしかできなかった。



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