眠る君へ捧げる調べ

       第7章 君ノ眠ル地ナバラーン〜翠龍編〜-2-

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「ケイ・・あそぼ〜〜。」

「ケイ・・・いっしょ・・・。」

慧が翠龍の城に来て数日たった。

初めは急に苦しくなったりした慧も環境に慣れ、

イツァークの家族にもすごく可愛がられている。

今日も、子供達に一緒に遊ぼうと誘われた。

「外・・・いこう。」

翠龍の城の外は当然海の中である。

ここ数日で海の中での遊び方を教えてもらった慧は

嬉しそうに子供達と海の中に行った。

慧の周りを透明な膜が覆い濡れないようになっている。

「ケイ・・一緒にゲームやろうよ。」

水中でも言葉が交わせるのは結構楽しいものだ。

水球のようなゲームを皆でしているとき、

慧はふと手をとめた。



・・・だれ・・・か・・・・



じっと耳をすますと、リーンリーンという鈴の音と一緒に

声が聞こえた。



・・・だれか・・・き・・・・が・・・・



慧はそっとゲームから抜けるとその声の方に

泳いでいく。

たくさんのリーンリーンという鈴の音が響く。



・・・・助けて・・・・・



と響いた・・・・




慧はどうすれば良いかそこで考えた。



・・・確か・・・金の龍の光には浄化の力あったはず・・・・



その選択が大変なことになるとは

その時の慧は全然考えていなかった。





アハドは海に直接出る入り口で弟や妹が泣いているのをみて

「どうした?」と声をかけた。

「ケイちゃんがいないの。」妹が泣きながら言った。

皆でゲームをしていたうちに慧だけがいなくなったようだ。

「心配するな。俺が探す。」




アハドはそう言って海に潜っていった。

しばらく潜ると歌が聞こえてくる。

言葉が違うようで何の歌かはわからない。

すると、たくさんの魚が群れているのが見え

その中が淡い金色に光っていた。

魚はアハドが近寄っても動こうとはしない。

アハドは魚をかき分けて光の方へ

進んだ。

すると、透明な壁にぶつかる。



・・・結界・・・か・・・



アハドは壁に顔を寄せ中を見て驚いた。

海底の方に黒い靄が見え、それが音楽によって

大きくなっているような気がする。

そして、上の方に慧が浮かんでいた。



目は閉じ、胸に刀を抱いている。

唇は動きメロディを口ずさんでいる。

「ケイ!!」

アハドの声は届かないようだ。

急に慧の体が淡く光り金の粉が海底の靄に降っていくと

黒いものが小さくなり金の粒が海面へと昇っていく。

それはとても幻想的な光景だった。



アハドはすぐに城へ戻りイツァークを呼んだ。

イツァークは急いでそこに行き、慧を見て城へ戻ってきた。

「お父さん・・ケイちゃん、大丈夫?」

心配そうにアハドの妹が聞くとイツァークは戸惑いを隠せないように言った。

「本当のところ何とも言えない。」



「どういうことですか?」

アハドが聞くとイツァークは溜息をついて説明した。

慧は、闇龍の力を持っている。

それはつまり聞こえざる声も聞こえるということだ。

ナバラーンで闇龍の力が及ばない場所、それは海だ。

海で命を落とした人は多く海の中を彷徨うものも多い。

その声を聞いた慧がその魂を呼び、

金龍の力で浄化している。

あの結界は、闇龍の力で作っている結界で

壊すことはできない。




「じゃあ、ずっとケイはあのままと言う事ですか?」

アハドがそう聞くとイツァークが溜息をつきながら言った。

「そうなる。としか言いようがない。

 本当に無茶をする子だ。

 心配なのは、あのまま眠り続けるということなんだよ。」

「それは・・・。」

「長く力を使うと言う事はとても危険なことなんだよ。

 この広い海を浄化しているのだから、どのくらいかかるのか

 わからないし・・・。」

「できることはないのですか?」

「刺激という意味で力を光にして当てるしか方法がない。

 ・・・となると頼めるものは少ないな・・。」

そんなことができるのは、翠龍でも力が強い龍だけだ。



「俺がやりましょう。」

アハドは父親をまっすぐ見つめて言った。

「俺はこの海を浄化してくれるケイを支えたいと思います。」




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