眠る君へ捧げる調べ

       第6章 君ノ眠ル地ナバラーン〜紫龍編〜-12-

本文へジャンプ




「父上、お疲れ様でした。」

レオンは、隣に座ろうとしている父に声をかけた。

「うむ。しかし、私達のほかに総合部門に申込をする者がいるとは・・・。」

紫龍の当主、ルネはそういいながら、幕が下りている舞台を見つめた。

「そうですね。父上の演奏は相変わらず素晴らしいものでした。」

「レオン・・・この申込者はお前が受け付けたと聞いたがどんな者なのだ。」

レオンは内心困ったと思った。父にはルイのことは話していない。

「父上。申込書を書いたのはまだ少年でした。

 しかも参加人数が・・・前代未聞です。」

「何人かね・・・?」

「100人です。」

「100人も紫龍集めるとは・・・。」

「いえ。父上。申込みしたのは、龍人の少年でした。」

ルネは厳しい顔で舞台を見つめ呟いた。

「つまり、紫龍以外が舞台に立つという事なのか。」




舞台の上ではジークとフェルが結界を張り、最後の音合わせをしていた。

特に慧の奏でるピアノの音には皆驚いた顔をした。

皆が白いお面をつけた。

ジークとフェルは結界を解き、ジークはサフォークを取り椅子に座り、フェルも

歌を歌う人の列に立った。



幕が上がり、舞台にはピアノに向っている慧とルイが浮かびあがった。

観客は、黒いマントに白い面の姿にどよめいた。

ルイが合図をして慧がピアノを弾き出す。



この数ヶ月慧もすごくすごくピアノの練習をした。

自分で結界をかけて何時間もピアノを弾き続け、腱鞘炎になった腕を

リュークやファルに治してもらいながらも弾き続けた。



慧が弾いているのは、ナバラーンの地ができるという部分で

途中で弦楽器と笛の演奏が入り、ルイが指揮をはじめた。



ピアノの演奏だけになると、ルイは黒いマントと白い面を脱ぎ捨て

歌を歌い始めた。

客席にいたレオンはその歌声に驚いた。

「ルイはあんなに歌が上手だったのか?」ルネが呟いた。



ルイの歌の途中、慧もマントと白い面を脱ぎ捨て次に備えた。

慧が紫龍では無いのを見て会場はまたどよめいた。

ルイが歌い終わると再び慧のピアノがはじまり、舞台に光がさしはじめた。



次の楽章は龍王がそれぞれの龍を作る章で舞台は幻想的に光り始める。

ルイが上手に指揮をするので皆の演奏はピタリと合い荘厳な感じが雰囲気に合っていた。

曲がまた一区切りつき慧のピアノとルイの歌がはじまると後ろが暗闇になった。

ルイの歌が終わると後ろが明るくなり虹が現れ、

演奏している人が黒いマントと仮面を脱いで現れた。




再び客席がどよめいた。

楽器を演奏している者が全て紫龍以外だからだ。

しかし、演奏が乱れることはない。

この楽章はナバラーンの繁栄を願うという楽章で

曲が華やかになり打楽器も加わった。



そして、最後にまた慧のピアノだけが残る。

すると、楽器を持っていた人が楽器を置きそのまま後ろに並び合唱の人もマントを取りながら

前に寄った。



「ナバラーン・・・ナバラーン・・・。」全員が歌いはじめる。

ルイが歌い始める。

「ナバラーンで愛しいもの。それは歌。

 歌は僕の全て・・・誰にもそれは止められない。

 ナバラーンで愛しい人。それはケイ。

 僕の耳を治してくれた人。

 僕は君の為にずっと歌い続けたい。

 この愛する地ナバラーンの歌を・・・。」



次にリュークが進みでて歌う。

「ナバラーンで愛しいもの。それは知識。

 龍王から戴いた智徳・・・我々蒼龍の珠玉。

 ナバラーンで愛しい人。それは龍王・・・そして家族。

 私達を照らす存在。私達を支える存在。

 私も声をあげて歌おう。

 この愛する地ナバラーンの歌を・・・。」



続いて、フェル・ロベルト・イアン・イツァーク・紅龍の代表・白龍の代表・人の代表が

同じように歌い始めた。



他の人はその歌の後ろで

「愛する地ナバラーン。私達のナバラーン。」と歌っている。



人の代表が歌い終わると慧がピアノを弾きながら歌い始めた。

「ナバラーンで愛しいもの。それは全て。

 全てが愛しい君が創りしもの。

 全てが愛しい君が愛するもの。

 ナバラーンで愛しい人。それはナバラーンの人達。

 そのなかでも一番愛しき人は眠る君。

 眠る君へ届いてほしい。

 この愛する地ナバラーンの歌を・・・。」


後ろのコーラスが

「幸せの地。ナバラーンに祝福を。

 愛する地。ナバラーンに祝福を。

 ナバラーン。ナバラーン。」と歌う。



観客席にいた紫龍が急に立ちあがりそれにあわせて歌いだす。

他の観客も立ちあがって歌いだした。

皆がとても楽しそうな顔をしている。

「私達の負けだな。」

レオンはそう言いながら立ちあがった父を驚いたように見つめた。



窓から金色の龍のような光が入ってくると会場を金色の光で覆った。

皆はそれを見て嬉しそうに歌い続けた。

「幸せの地。ナバラーンに祝福を。

 愛する地。ナバラーンに祝福を。

 ナバラーン。ナバラーン。」

演奏が終わった後も会場では拍手が鳴り止まなかった。




(ナバラーンの歌・合唱部分の歌詞を見たい人はコチラ

  BACK  NEXT 

 Copyright(c) 2007-2009 Jua Kagami all rights reserved.