眠る君へ捧げる調べ

       第6章 君ノ眠ル地ナバラーン〜紫龍編〜-10-

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慧が目を覚ますと、イツァークが微笑んで言った。

「龍王は、元気だった?」慧はにっこり微笑んで頷きながら

イツァークの膝から降りた。

「それで、慧何でみんなを集めたのかな?」

リュークが聞くと慧はルイやソフィアの話、

コンクールの申込にシュミレフに行った時の話を皆にした。



「龍王様にもその話を?」イアンが言ったので慧は頷きながら言った。

「うん。恨まないでほしい。と言っていた。訳も聞いたよ。」

当主達は皆悲しそうな顔をした。

「だからこそ、このコンクールで認めさせたいと思うんだ。

 私は、今まで自分の考えだけで行動していた。

 でも、今は銀の龍がいるし、当主様達だっている。

 だから、皆でよい方向になるように考えたい。」

と慧は言った。



ロベルトが口を開いた。

「銀の龍だけでなく我々にも声をかけてもらったのは嬉しい。

 力になろう。特にシュミレフの経済はアイールが見ている。

 私の影響力は大きいからな。」

「えーーっ。そうなの?」慧が驚いたように言った。

「あれだけ芸術にのめりこんでいれば政策なんてたてられるわけがないからな。」

リュークが苦笑して言うと、他の当主達も頷いた。



「大体、パトロンを探してやっきになっている事態をどうにかしないと・・・。」

イツァークがそう言った。

「ソフィアのとこでも聞いたけれどパトロンってどういう意味なの?」

慧が聞くとリュークが答えた。

「紫龍は芸術に傾向するために生活能力を持つことを良しとしないんだ

 それで、貴族やお金持ちのパトロンを作って庇護される代わりに

 その芸術を開花させるのが良しとされる風潮がある。」

「でも、そのパトロンって・・まさか・・・。」

慧が顔を曇らせて言うとリュークが頷いて言った。

「ケイを大人として発言すると、当然身体の関係ということも有りうる話だ。」

「それで、当主家の場合は、財産の管理などは全部俺がして

 シュミレフの政策も俺が考えているから、紫龍以外はシュミレフは黄龍の属国だと

 思う者も多いんだ。」

ロベルトが言うと慧は考えながら言った。



「ナバラーンには、劇団とかコンサートとか無いの?」

「貴族がやるコンサートとか貴族に庇護されている劇団はある。

 後、龍王の為の楽団は存在する。」

「その費用は?」

「もちろん、龍王や貴族からでる。」

ロベルトが言う。

「う・・・ん。それが問題じゃないかなあ。」

「どういうことだ?」フェルが言う。

「私のいた世界では、コンサートと言うのがあって、それは見にいく人が

 少しずつお金を出すんだよ。」

「それは、具体的にどういうことなのでしょうか?」イアンが聞くと慧は

元いた世界のコンサートの仕組みを紙に書きながら説明をした。

「これは、面白い仕組みだな。」ロベルトが言う。頭の中では計算しているらしい。

「確かに・・・。」リュークも感心したように言う。




「待ってください。今はとにかくコンサートの事ですよね。」

ファルが言うと皆が思い出したように頷いた。

「とにかく、紫龍に対抗ということは大変だな。」ジークが言った。

「まあ、紫龍はある意味何でもありですからね。」ニコライもそう言う。

「そんなに凄いの?」慧が聞くと皆が口々に色々な話を教えてくれる。

それを聞いて慧はポツリと言った。

「まるで、イリュージョンだな・・それは・・・。」



「舞台装置は何とかできるかもしれない。」

いきなりフェルが口を開いた。

「ああ、確かに・・・。虹を作ったり暗闇にしたりするのはたやすい。」

ジークもそう言う。



「神官の中には服つくりが上手な者もいます。

 服を仕立てるのは私どもが・・・。」イアンが言うとニコライも頷いた。

「じゃあ、俺らは楽器の運搬やるぜ。なあ。ジャン。」ロベルトがにかっと笑って言った。

「ああ。運搬は任せろ。」ジャンが言う。



「じゃあ、我々は頑張って演奏を最高のものにしないと・・・。」リュークとファルはそう言いながら頷きあった。

「あのね・・もう1つお願いがあるんだけど・・・。」

慧がそう言って皆にポソポソ小声で伝えた。

「まじめに?」ジャンが言う。

「ということは、私にも参加しろと?」イツァークがそう言うと慧はコクリと頷いた。

「じゃあ、条件があります。慧も歌いましょうね。」

ファルがそう言うと慧が真っ赤になって言った。

「ファ・・・ファルさん?まじめに?

周りが口々に「それは、良い!」とか「楽しみだ。」と言ったので

結局慧もやることになった。



・・・・あのね・・・

ナバラーンで愛するものと・・・

愛する人に捧げる歌歌ってほしいんだけど・・・・



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