眠る君へ捧げる調べ

       第6章 君ノ眠ル地ナバラーン〜紫龍編〜-1-

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「サリュークなら上手に弾ける人知っておりますよ。」

夕食を食べながら、ファルが言った。

「へーーっ。誰?」

「父はサリューク弾くのですよ。蒼龍としては珍しいのですが・・・

 腕前もかなり良いと言っておりましたよ。」

「ファル・・お願い・・・。」

慧は手を前に組んで言った。



「父に頼むのですか?」

「それもそうなんだけど・・・ファル、ジーク、サリュークとサフォーク習ってきて。」

「「はあ?」」

ファルとジークのフォークが止まった。



「だから、ジーク・・ほら、闇龍の結界で時間を遅くするのあったでしょう?」

「ああ・・・確かにあるな。1分を30分くらいにする結界だろう?」

「うん。その中できっちりファルと練習して。お願い。」

「何で私達なのですか?」ファルが溜息をつきながら言った。

「だって、ニコライは学校つくるのに、ジャンは自治区と学校のスポンサー探しに忙しいもの。」

ちゃんと慧なりに理由はあるようだ。




「ケイ、紫龍は芸術に元からセンスがあるのですよ。その中に私達のような者が出るのは・・・。」

ファルが言うと慧は首を振って言った。

「芸術というのは、確かに才能は必要だと思うけれど、上手なのが全てではないと思う。

 だからこそ、私はあえて紫龍に頼みたくないんだ。

 ルイは別だよ。ルイは、私の思う本質がわかっているから頼んだんだ。

「慧は、紫龍に何が足りないと思うんだ?」

ジークが聞くと慧は微笑みながら言った。

「それは、楽しむという気持ち。音楽が好きだという気持ちだと思うよ。

 芸術の良し悪しは自分で決めるのではなく観客や周りの評価が決める

 技術が足りなくても他でカバーできることはあると思う。

 ファル・・私はね、紫龍にそれを気づいてもらって、ルイのような

 悲しい思いをする子がいなくなるようにしたいんだよ。」




「仕方ない・・父に教えを請いますか・・・。覚悟したほうがよいですね。」

ファルが溜息をつきながら言った。

「我もできる限り努力しよう。」ジークも言うと慧はニコニコ微笑んで言った。




「それにね。ファルとジークが楽器できるようになったら私といつでも合奏できるでしょう。」

その時、ニコライとジャンが言った。

「俺もやる!」

「私もやります。」

「でも二人とも忙しいんじゃ・・・。」

「いえ、ここでも練習できるのですよ。神官の中には音楽好きな者も多いですし・・・。」

「アシュタラは遠いけどここなら今の俺なら結界通れるし、かよえるじゃん。」

ニコライとジャンもやる気まんまんだ。



「それなら、この曲に別の楽器もいれるとどうでしょうか?」

「えっ。」慧がファルをみつめた。

「ナバラーンにはサリューク、サフォークの他に横笛や縦笛も数種類ございます。

 それに打楽器も・・・。せっかくやるのでしたら私達だけでなく

 その神官の方達も仲間になるというのはいかがでしょうか?」

「それは、良い考えだね。自治区にも音楽得意なものがいるから

 声をかけようかな?」ジャンも張り切って言った。



「新しい学校の部分は神官でなくても入れます。

 最後のしあげは、ここの講堂を使うと良いでしょう。」

ニコライも微笑みながら言った。

「ところで、集めて最高で何人位か決めておいたほうがいいな。」

ジークが言うとファルが言った。

「そうですね。100人くらいまでが限度ですよね。

 まあ、人を集めるのは私達に任せてもらうとして・・・

 ケイがやらなきゃいけないのは、

 あの曲に新しいパートを作ること。

 そして、シュミレフに行ってコンクールの申し込みをしてくることですね。」

にこやかにファルが言い放った。



慧にはファルの心の声がビンビン聞こえた。

・・・私達もいろいろと頑張るのですから・・ケイ

・・・ケイも頑張らないなんて・・言わないですよね・・・。




慧はコクコクと頷くことしかできなかった。




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