「龍王様?」ニコライは入ってきた男を見てそう呟いた。
その男は金髪に金色の目をしていて金龍の姿をしていたからだ。
「そう呼ばれていたときもあったがな。リュートと呼んでくれ。
タカ?どうした?」
「リュウ、この子熱すごく高いんだ。」
「この子は?」リュートは床に膝をつき慧の額に手をあてた。
「サーリュは修行に一つだけものを持ってきてよいことになっていますので・・。」
「それで、そのものがこの子と・・?」
「はい。」
ニコライをちらっと見ながら、リュートは目を閉じ慧の額に手を翳しながら言った。
「これなら。熱も出るのも当たり前だ。」
すると、慧の体が金色に光りリュートの手に金色の光が集まりはじめた。
その光はとても眩しく太陽のように周りを照らす。
「すごいね。」黒髪の男が目を細めながら呟いた。
リュートの手の中で丸くなった金色の光はそのまま手に吸収されていった。
その時、慧が小さな声で「リューゼ。」と呟きリュートの手を握った。
リュートは、慧の頭を撫でて優しく言った。
「今はゆっくりとおやすみ。」
慧は安心したように小さな寝息をたてはじめた。
小さな人の声がしたような気がして慧は目を覚ました。
相変わらず包帯が目を覆っているので目が見えない。
『もしかして、俺?布団でねている?』思わず日本語がでる。
確か、ミリュナンテの病室のベッドにいたはずだったが、
自分が寝ているのは懐かしい布団だ。
体を探ってみると浴衣を着ている。
『夢?』目覚めたばかりの頭はまだ動いていない。
その時、『ああ、起きたかい?』と言う男の人の声がした。
自分の体を触ってみるとまだ、小さい10歳の体だ。
誰かが慧の体を起こして湯呑みを口元に持ってくる。
口を開け、中の液体を1口飲んだ慧は驚いたように言った。
『これって・・ほうじ茶?な・・・なんで?』
『一眠りすると、ニコライも来るだろうから寝な。』
そう言われて慧は布団に横たわった。
『畳の匂いがする・・・。嬉しいな・・。』
慧はそう呟きながら目を閉じた。
しばらくして、慧はまた人の気配を感じて目を覚ました。
「ケイ様、大丈夫ですか?」
「ニコライ?」
「ええ。他の2人はどなた?なんで、リューゼと似ている気を持っているの?
ここは、どこ?日本なの?」
「少し落ち着きなさい。まずは、目の怪我をみせてもらいたい。」
リュートが静かにそう言いながら、顔の包帯を解き始めた。
途中から、魔力で開いた傷から流れた血がべっとりついている。
包帯が取れると痛々しい傷跡に黒髪の男とニコライが顔を顰めた。
「この怪我は、自分でつけた訳でないね。」
慧が頷くとリュートは瞼の上に手を翳した。
すると、手から金色の光がこぼれ慧の怪我が良くなった。
慧は、久しぶりに目を開いた。目の前にリューゼにそっくりな人がいて
微笑んでいた。
「リューゼのお父さん?」
慧は首を傾げながら言うとリュートは静かに首を振った。
慧は、周りを見回してみた。
そこは時代劇にでてくるような部屋で、思ったとおり慧は布団に寝かされていて
浴衣を着ていた。
首を回すと心配そうな顔をした薄紅色の長い髪の毛の男の人が慧を見つめていた。
「もしかして・・ニコライ?」慧が言うと男は小さく頷いた。
「ケイ様、どこか痛いところはないですか?」
心配そうに言うニコライに慧は微笑んでみせて首を横に振った。
『慧殿。茶を飲みなさい。』
その時黒髪の男が湯呑みを持ってきた。
『えっ。日本語?』慧はその男を凝視した。
男はいたずらっぽく笑って日本語で言った。
『ようこそ。慧殿。過去の世界へ。』
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